あなたのものがたり1
これは、あなたのものがたり。
セカイヲ、シアワセデミタス、あなたのものがたり。
さあ、このページをめくってください。
あなたが、納得できますように…
わたしのものがたり ジョーカー
これは、わたしのものがたりだ…
目の前の“ノルン(フランスの、運命の女神)”を見ながら、私は思っている。
(不思議だ…)
(なぜ?)
(なんで、タナカさんは、みんなを巻き込んだんや…)
あんなに優しかった、タナカさんは、いま、わたしをこの世から消そうとしている。
今に始まった事ではない。ぼくが、笑った時からやろうな…
「タナカさん、ごめんな。ちゃんと向き合わなくて、ほんまごめんな。」
「そして…こんな、ぼくを…アイしてくれて…ありがとう!」
次に起こることを想像するのは、難しい。ぼくは、彼女を、わかっていない。ただ愛し、ただ愛しただけだったから。
“ノルン”は、Retour(先祖返り)した。私は、日本語で、それを先祖返りと呼ぶ。
彼女は、それを、フランス語で呼ぶ。
彼女は、フランスに憧れていた。大学生の時、留学したくらいだから、相当だろう。
自由、平等、博愛。トリコロールに象徴される、その精神は、彼女と親和性が良かったのかもしれない。
一糸纏わぬ女性がそこにいる。久しぶりにみる、タナカさんは、綺麗だ。
初めて会った時は、不美人だと思った。目が細かったからだ。
170センチの長身、細く長い、整った体型。聡明さを象徴しているような、富士額。瓜実型の顔、くっきりと濃い眉。
完璧な日本美女。
今は、そう思う。
…彼女は、激しく怒っているように見える…もはや、精神のバランスすら保てているか、怪しく感じられる…
肩は震え、目つきは異様に鋭い。アドレナリンの強い刺激臭を感じる…今にも、飛びかかってきそうだ。
「ゆーっくり。いきたら、ええんやで〜」
ジース(Dix:フランス語で、10の意味)は、少し、ゆっくりになった。
しばらくの沈黙ののち、私は、ことばを、なげかける
「ゆーっくり。いきたら、ええんやで〜」
また、ゆっくりになる…
「ゆーっくり…いきたら…ええんやで〜〜…」
肩の震えは、収まったようだ。目つきも、柔和になっている。
話が通じそうだ。
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