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粗品さんに恋をして。妄想ラブロマンス
——恋猫を探すと幸せになれる。
窓の隙間から漏れた日差しがページを照らし、その眩さに目を擦る。それは、いつものようにカフェで雑誌のページを巡っていた昼下がりの午後のこと。
雑誌の小見出し「本当に効果のあった結婚できるジンクス集」をみるなり、私はふと目を止める。恋猫を探すと幸せになれるって、どういうことなのか。
雑誌で笑みを浮かべる読者モデルは、「彼氏はギャンブル狂いで、なかなか結婚してくれません。けれと恋猫を見つけた途端、ギャンブルもやめて私にプロポーズしてくれたんです」と語っている。
プロポーズどころか、ギャンブルもやめてくれるなんて。そんな魔法みたいに強力なジンクスがあるなら、私も試してみたい。
私の彼も、ギャンブルをやめてくれるかしら。
まぁ、彼のことだから。ギャンブルで擦ってもスパチャと喋りでそれ以上に稼ぐんだろうけど。そもそも彼は有名人。彼は私のことを知らない。彼のYouTubeチャンネルを見て私が一方的に惚れ、そこに「好きです」とコメントを送り続けているだけの関係。たまに彼のスパチャへ投げ銭もして、スポンサー気取りも続けている。
私と彼は、あくまでスポンサー(課金)と推しの関係。つまり彼ではなく、本来なら推しと呼ぶべき。でも私はあえて彼と呼んでいる。推し活ではなく、これは恋活みたいなものだから。だけど恋になると割り切れないから苦しい。推しとして割り切れていたあの頃に戻りたい。
けれど推しのフィルターを外して、彼に本気の恋をしてしまった私。もうここまで来ると引き返せない。彼のギャンブルを止めさせたいけど、ついつい彼の笑顔が見たくて課金してしまう私は、とんでもないダメ男製造機だ。
本当は、もっと彼との距離を詰めたい。でも、彼はいつもファンとアンチに囲まれて忙しそう。私なんて所詮、彼からすれば競走馬の糞みたいなもの。もしくは賭け金のスポンサー。
もちろん、彼は私に何も欲していない。私がただ彼に振り向いて……いや、応援したくて課金してるだけ。そのお金で彼のハートが買える訳なんてないのに。貯金がすり減るほど、ついつい見返りを期待してしまう。
彼に課金してる場合かしら。私はもう35歳。婚活しなさいって、親友の玲子から何度説教されたことか。けれど、婚活で出会った男性にはどうしてもときめかなくて。ハングリーさというか、アグレッシブが足りないの。そこにいるだけで、私のハートをもっと掻き乱してほしい。そう、私の推しの彼みたいに。
でも彼には、どうやら彼女ではないかと噂されてる女性もいるみたい。2人は否定してるみたいだけど、いつもYouTubeで仲良く共演してはイチャイチャしているし。
熱愛説の否定会見も、仲良く2人で話せるとか羨ましい。彼女は肌が白くて、透き通る雪みたいに綺麗な人。艶やかな赤いルージュがよく似合う。すらりと細くて指も長くて、まるでマネキン人形みたい。
華奢な色白の天然美女、きっと好きなんだろうなぁ彼。燻製チーズみたいに黄ばんだ私に、勝てる要素はあるだろうか。
もしかすると、ここで私が恋猫を見つけたのであれば、一発逆転もあるかもしれない。それにしても、恋猫ってなんなのさ。別にGoogleでググってもいいけどさ。どうせなら、この疑問を彼にぶつけてみたい。彼なら、なんで答えるのか。
「うーん、恋猫かぁ。知らんわぁ。今流行ってるんすかねぇ。そんなことより、俺は明日のきさらぎ賞(G3)が気になるんですけどねぇ。
ただぁ〜。積雪の影響により中止になるかもしれんのですヨォ。ああ、俺このレースに賭けてたのにぃ。雪のバカヤロォですわ、ほんまにぃ」
少し照れ笑いを浮かべつつも、髪をくしゃくしゃにしながら懸命にコメント返しをする彼の姿が思い浮かぶ。
ふふふ。彼は本当に可愛い人。私はニヤリと笑みを浮かべながら、彼のYouTubeチャンネルを慣れた手つきでクリックする。
【完】
⭐︎エンディングテーマ曲
こちらの企画に参加しています。初参加です。しょっぱなから粗品さんへの愛をぶちまけています。ああ、粗品さん好きぃ〜!
なんと粗品さん、noteも書いてるんですけど。ここに「???」しか書いてなくて。その話の続きが気になります。
えっ、何が?なんだろう?(4年前に更新終わってる方に突っ込んでいくという無謀さ)
それでは粗品さん、シロクマ文芸部さん!よろしくお願いします。
#シロクマ文芸部
お題: #恋猫と
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