甲状腺乳頭癌の話13 経過観察、時々鬱

リンパ節に見られた腫瘍は悪性ではなかったため、癌ではないという診断になりました。
想定していませんでしたが、ホッとしました。

晴れて再び、経過観察生活が始まったのでした。

4ヶ月毎に病院に行き、受付を済ませ、各検査で長時間待たされ、その間スタバで本を読み、時には勉強したり、食事をして、そして検査結果で大きな変化は起こらず、引き続き経過観察でと言われて終わる、という繰り返し。
これまでと違うのは、検査結果を聞く直前は、以前よりもドキドキするという点、でした。

リンパ節の腫瘍は細かいものがいくつか見られ、その全ての細胞を検査したわけではないので、調べていない部分は実は癌であったという可能性や、これから癌になる可能性もあるわけです。
そして、経過観察、となったものの、それはただ単に、切除するかどうかの決断が先延ばしになっただけ、ということに薄々勘づいてはいたものの、気づかない振りをし続けていました。

この気づかない振りはおそらく有効だったようで、
夜中に覚醒して起こる不眠サイクルも無くなっていき、薬を飲まなくても、朝までよく眠れるようになったのです。

私はもう「鬱」から回復したのですよね?

とはいえ、心の奥の方にある懸念事項を、身体は見逃さないのでしょうか、今度は昼間に突然、不安状態に突入することがあり、そんな時はとにかく
セロトニン(※)を求めて、太陽の下をひたすら歩き続けるのでした。

これはまだ「鬱」ですか?

「誰か、同じ体験をしている人と話したい。」
これまで全く生まれなかった感情が湧いてきました。
人には期待はしないと決めたもの、同じ癌患者どうしなら、多少は話が通じるかもしれません。
そう思い、癌患者の集いのようなものはないか、調べてみました。

癌患者の集いというと、時々外国映画やドラマで見かけるような、広い部屋に椅子が円状に配置され、一人一人が順番に自分のことを語り、語り終わると他の全員が拍手、それを誘導するジョディ・フォスターのような知的な先生だかセラピストがクリップボードを片手にMCを行い、参加者は全体的にどよーんとした雰囲気なのだが、エマ・ストーンのような若い綺麗な人もいて、いかにも訳ありなジェイク・ギレンホールのような男性はいつも遅れてやって来る、
といったものをどうしても想像してしまっていました。
ぜひ、参加してみたいものです。
でも、これは禁酒の会のシーンだったかもしれません。

そもそも「甲状腺」関係ではそういった集いは見当たりませんでした。

私の調査力不足なのだろうと思い、本気で調べ直そうかとも思いましたが、ふと、
癌患者を装って、人の弱いところに漬け込むような勧誘の人や詐欺師が待ち構えているかもしれないな、とも思い始め、
私や憔悴しきったトム・ハンクスのような老齢男性がまんまと騙されていくのを思い描くと、面倒くさくなり、だんだんどうでも良くなっていくのでした。

そしてまた、忘れた頃に次の展開が起こるのでした。→ 続く

お読みいただき、ありがとうございました。

(※)セロトニン:「幸せホルモン」とも呼ばれる神経伝達物質。太陽を浴びたり、ウォーキング等により脳内で分泌される。

追記:見出し画像は、「みんなのフォトギャラリー」から選択し、nyakopanさんからお借りしました。ありがとうございます!

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