甲状腺乳頭癌の話23 終わりは始まり
甲状腺切除手術が終わった後、血圧上昇のため、身動きの取れない一夜を過ごしました。
一夜といっても、全身麻酔の副作用と思われる頭痛と、ネガティブ思考のため、ほとんど眠れませんでしたが…。
でも、朝になり、血圧が下がったのです。
ようやく、です。
そして「もう、起き上がっていいですよ」という看護師さんの言葉は、身体的にも精神的にも、私に開放感をもたらしてくれたのでした。
ほとんどの患者さんは、切除手術後は3時間の安静のみで起き上がれるそうで、頭痛も早めに引いていくそうです。
先生曰く、まれに「かくれ高血圧」の人が、私のように上昇することもあるようで、頭痛については全身麻酔以外の事情によるかもしれない、とのことでした。
考えられるのは、肩こりや、少し風邪をひいていたか、等と推測しました。
つまり、手術後12時間も動けなくなったのは、だいぶ特殊なケースだったようです。
日頃の体質は、思わぬ形で影響するのだと、実感したのでした。
朝になって歩けるようになってからも、鈍い頭痛は残り、完全に元気になるまでに、さらに丸一日を要しました。
肝心の首の具合は、術後も痛みは全くありませんでした。
手術痕の端に、血液等を排出するための管であるドレーンがついていましたが、その違和感や煩わしさよりも、鈍い頭痛の方が大きかったせいか、手術を受けたという実感はありませんでした。
翌日、ドレーンを抜いてもらい、体はより自由に動かせるようになりましたが、喉が締め付けられているような感じが残りました。
それは手術そのものではなく、全身麻酔の際の酸素吸引の管が喉の内側にあたったためらしいです。
さらに翌日、耳鼻科にて声帯の検査をしました。
歌ったり、高い声を出したり、ビブラートをきかせたりも「どんどん、好きにやりなさい!」というお医者さんでしたが、横で看護師さんが「無理のない範囲でね」とフォローしていました。
声帯に問題はない、ということだけは伝わりました。
あんなに悩んだり、躊躇して、避けて通ろうとした甲状腺切除手術は、あっけなく、そして、穏やかでいて慌ただしかったような入院生活は、終わりを迎えました。
ここからは、切除による甲状腺ホルモンへの影響、癌の転移や再発の可能性、及び首に残った手術痕との向き合いが始まったのでした。
→ 続く
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