親分の後は引き継げるのか?/宮部みゆき『きたきた捕物帖』『子宝船』
宮部みゆきさんが「生涯書き続けていきたい」というシリーズ、それが『きたきた捕物帖』シリーズです。
第二弾の文庫化を今か今かと待ちわびていたのですが、一昨日『子宝船』の文庫が発売されました。
発売日にあわせて第一弾を読み返し、発売日当日には第二弾を入手!
先ほど読み終わりましたが、もう次の作品が待ちきれません。
さらに本シリーズは、他の作品に出てきた人が登場するといった、他の作品も読んでいる人にはたまらない一面も!
今回は、第一弾『きたきた捕物帖』と第二弾『子宝船』の感想を、あわせてご紹介したいと思います。
1. きたきた捕物帖
突然死んでしまった岡っ引き・千吉親分の、一番下っ端の子分である主人公の北一(北さん)。
岡っ引きを継ぐこともできず、これから自分の力で食べていかざるをえなくなりますが、親分のおかみさんや、振り売りで出会った青海新兵衛、富勘さんなど、色々な人に助けられながら、少しずつ自分のやりたいことが見えてくるお話です。
色々な人に助けられ、悩みながら、一歩一歩成長していく姿は、読んでいる私まで心がウキウキします。
弱気な部分があるけれど、実直で優しく、困った人がいたら自然と手を貸せる北さん。
人を大事にする北さんだからこそ、色々な人が手助けしてくれます。
『冥土の花嫁』の中で、周りの人が文庫づくりを手伝ってくれるところなど、「これが縁」、「これこそが人望」と思ったり。
周りが手助けしてあげたいと思えるかどうかって、相手がどれだけ立派かということではなく、結局はその人の人柄なのかもしれません。
ちなみに、本作には『初ものがたり』で出てきた謎に包まれた屋台の親父さんが出てきます。
親父さんの謎がちょっと解明されますので、お楽しみに!
2. 子宝船
岡っ引きに興味を持ち始めた北さん。
ただ、岡っ引きになるということは、人間の醜さも知るということ。
第一弾と比べると、人間の醜い部分が見え隠れする事件が増えていますが、その分、岡っ引きらしくちょっとずつ成長していく北さんが楽しめます。
誰かのために行動する真っ直ぐな北さんが、少しずつ周りから信用されたり、期待される様子は、読んでいるこちらまで嬉しくなります。
さて、本作はなんといっても、『ぼんくら』シリーズに出てきた、政五郎親分とおでこが出てきます。
読んだときは、「あー!おでこが大人になってる!」と本当にびっくり。
まさか、大人になったおでこの話を読めるなんて思ってもいなかったので、感激もひとしおです。弓之助のその後も知ることができて嬉しい限りです。
そして相棒である喜多治の秘密も分かってきたり。
本作の最後に、宮部みゆきさんの特別対談が載っているのですが、なんと「他作品に出てきた登場人物の伏線を、本シリーズですべて回収します」という、何とも嬉しい言葉が!
続編がより一層楽しみで仕方ありません。
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