【市会議員への道】ひとり親の方から教わったこと
仕事上、窓口でひとり親の方と会話をすることが多いのですが、その中で今まで自分が見えていなかったことがあり、非常に反省した事例とそこから見えてきた政策課題について考えを書きたいと思います。
1 窓口でよくある質問
「私の収入が増えると、(児童扶養)手当額はどうなりますか?」
窓口で非常に多くいただく質問です。令和6年10月から児童手当については所得制限が撤廃されますが、ひとり親の方に支給される児童扶養手当については所得制限額が緩和はされるものの制限が撤廃されるわけではありません。また、児童扶養手当受給者の方は経済的にしんどい状況に置かれている方も多く、手当額の減額は生活に直結する重大な問題です。
どうして冒頭のような質問をよく受けるのかというと、それは児童扶養手当の仕組みにあります。児童扶養手当は2段階の所得制限額を設けていて、ある程度の所得までは全額がもらえますが、一定金額を超えると手当額が少しずつ減額される仕組みになっています(上限を超えると全額停止)。詳しい計算方法は次に示します。
2 児童扶養手当の計算方法
児童扶養手当の金額の計算方法は次のような感じです。扶養しているお子さんの数や年齢、同居人の所得によっても影響を受けるので、非常に簡略化したものであることは御了承ください。
手当額(月額)=45,490円 ー(各種控除後の所得 ー 一定金額)×0.025
上記に当てはめて考えると、各種控除後の所得が一定金額に達するまでは満額出て、一定金額を超えると2.5%ずつ減る計算です。私は窓口でお話するときに「所得が1万円増えると、手当額は月額250円、年額にして3000円減る計算になっています」とお伝えしています。
3 私が見落としていたこと
以上のような計算式を踏まえ、私は「所得が1万円増えても手当額は年間で3000円減るだけなので、所得を増やしていったほうが結果的にはプラスになる計算になりますよ」と常々言ってきました。が、この説明がいかに稚拙だったかを、窓口に来られた方の一言で思い知らされたのです。
「それはそうなんですけど、税金にも影響するので、、、」
確かにそうでした。税金や健康保険料が所得につられて上昇するため、毎月の生活に本当に影響がないのか、単純に所得額と手当額との比較だけでは安心できるものではありません。今までこんなことにも思いが至らず、浅はかな説明をしていた自分が非常に恥ずかしくなりました。
最近読んだ本で山野良一さんの「子どもに貧困を押し付ける国 日本」という本を読んだのですが、その本の中に所得の再分配の結果貧困率が悪化しているという衝撃的な話が登場します。
窓口でのやりとりを通して、この話を思い出しました。
4 見えてきた課題
この経験を通して、日本のひとり親施策における課題が見えてきた気がします。具体的には次の3つです。
そもそも児童扶養手当の算出方法に問題がある
影響が見える化されていない
再分配の結果、貧困が改善されていると実感できない
①そもそも児童扶養手当の算出方法に問題がある
冒頭の計算式を再掲します。
手当額(月額)=45,490円 ー(各種控除後の所得 ー 一定金額)×0.025
上記計算式で太字にしている、「各種控除」に問題があると考えています。具体的に言うと社会保険料控除です。私も今まで詳細に見たことが無かったのですが、今年6月の市民税決定通知所に記載されている社会保険料控除を見て、あまりに高額なことに愕然としました。総収入の2割くらいが社会保険料に消えていたので。
この高額な社会保険料控除ですが、手当額を計算するときにはわずか8万円にしか置き換えない計算になっていることを皆さんご存じでしょうか(児童手当も同じ)。
所得200万円のひとり親の場合、社会保険料は数十万円負担しているはず、なのですが、これを8万円にしか置き換えてもらえず、200から8を引くと192万円。実はこの金額だと児童扶養手当が全額停止、つまりは0円になってしまうという事になります。この所得制限額は扶養親族が0人のときの計算なので、お子さんが1人いると制限額が上がって手当が出るようになりますが、離婚直後で元配偶者が扶養をとっている場合は扶養親族が0人になるので、上記のケースに該当する可能性は十分考えられます。
社会保険料控除相当額が8万円というのは非常に問題だと感じます。
②影響が見える化されていない
また、冒頭のケースのように、所得が増えたことで各種手当や税金・社会保険料にどういった影響があるのか、かなり見えにくい状況があると思います。私も窓口で税金や社会保険料について尋ねられることもありますが、恥ずかしながら詳細な計算方法を知らず、かつ、誤った説明をしてもいけないのでお答えできないと回答することになります。せっかく役所に来たのに、これだと意味ないですよね。本当に反省しないといけません。
反省をいかすために、仮に所得200万円の方で1万円所得が増えた場合でシミュレーションしてみました。
所得税:1000円の増額(負担増)
住民税:1000円の増額(負担増)
社会保険料:約1800円の増額(負担増)(事業主負担も含む)
手当額:3000円の減額(負担増)
となり、合計で約6800円の負担増、ですかね。かなりざっくりした計算ですみません。とはいえ所得増加分とあわせるとプラスになっているということは言えそうです。それにしても1万円所得が増えても、月額にして300円程度しか増えないって、本当に厳しい現実ですね。
所得が翌年も変わらなければいいのですが、住民税と手当額は翌年に影響するため、翌年の所得が下がってしまうと完全にダブルどころかトリプルパンチです。
③再分配の結果、貧困が改善されていると実感できない
②の計算式によると、年間1万円の所得増はトータルで3000円程度の手残り増とも考えられますが、こどもが成長するにつれて食べる量も増えるでしょうし、同じサイズの服が来年も着られるとは限らず、何かと生活費にお金がかかることは容易に想像できます。
ただでさえ円安で輸入食料品の価格が高騰している中なので、これらの生活必需品にかかる費用増を踏まえても手残り増と言えるのか、かなり疑問が残ります。都道府県によっては小学6年生に学用品を無償で支給する施策を実施しているところもありますが、こういった施策を充実させることが本当に求められていると感じます。
5 まとめ
以上のとおり、窓口でのやりとりから気づかされたことをまとめてみました。所得の増加分は一定の負担増をお願いしないといけないとは思いますが、所得200万円の人に相当の負担を強いている現状はかなり深刻です。
せめて児童扶養手当の所得制限額が今の倍(約400万円)くらいになればいいのに、と思います。仮にそれが難しいとしても、せめて社会保険料控除を8万円から実額にしてほしい。ぜひとも将来の公約にしたいです。
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