誰もが夢中になるコロボックルの物語『だれも知らない小さな国』児童書紹介④
私は影響を受けやすい人だと思う。
物語を本を読んだら、私もあたかもその世界の住人かのようにふるまうことがよくあった。
きょう紹介するコロボックル物語の第1巻『だれも知らない小さな国』もその一つ。〝コロボックル〟という響きがとても好きで、私の身の回りにもコロボックルが実は住んでいるのではないか……なんて空想を膨らませてワクワクしていた時代を懐かしく思い出します。
コロボックルについての詳細は、講談社の特設ページに体系的にまとめられています。何より、ページを開くだけでワクワクすると思います。
あらすじ
主人公の少年が、近所に素敵な小山を見つける。小さな泉があり、そこから小川が流れている。もちの木が2本、門柱のように生え、蕗が生い茂り、草花が喜びながら生えている。そこはなんとも言えない心地よい空間で、少年は小学3年生の頃からこの場所が大好きになる。まるで自分だけの秘密基地のように、足繫く通い、その神聖な場所が友達に荒らされたりしないよう、大切に守り続ける。
そんなある時、近所のおばあさんからこの小山は鬼門山と呼ばれ、よくないことが起こることを聞かされるも、「小法師さま(こぼしさま)」という小さな人が住んでいることも知り、小法師さまに会いたいと願い続けるようになる。しかし、なかなか出会えないまま月日が経ち、本当に小法師さまと会い、会話ができたのは成人し、働きだしてからだった・・・。
それから小法師さまが住むこの小さな世界を本格的に守るために様々な奮闘をしていくのです。
戦後日本児童文学初の本格的ファンタジー作品と呼ばれ、とても読み応えのある一冊です。
おすすめポイント
一般的な単行本の文字の大きさで、230ページ近くあるので、小学生が読むには少し骨が折れるかもしれません。でも、読み終わった後に胸を走り抜けるこの幸福感を、どう表現したらよいのでしょうか。
コロボックルたちの世界観、それを大切に大切に守ろうとする少年(青年)の物語に、静かな感動と喜び、幸福感が込み上げてくるのです。
きっと、佐藤さとる先生の素晴らしい文章の影響もあるのでしょう。物語が静かにゆっくりと進んでいく心地よさ、でもそこにある山あり谷ありの出来事の数々。
「ああ、面白かった」「ワクワクが止まらない」、そんな読後感を抱く本はたくさんありますが、読んでいるだけで幸せになる本は珍しい気がします。それほど私にとって特別な本なのかもしれません。
主人公がコロボックルのことをあれやこれやと研究しているのと同様、コロボックルたちも主人公のことを「せいたかさん」と呼び、味方になってくれる人かどうかを調べている。その静かなやり取りがほほえましく、本当に美しい。
コロボックルが出てきて、直接主人公と話し始めるようになるのが第3章からで、それまで心の中で少しじれったいような気持もするのだけれど、それがまた、この物語の魅力のような気がします。双方が出逢うまでのお話を、本当に丁寧に描いてくれているので、自然と物語の世界に没入してしまっている。
私が言うまでもないかもしれませんが、コロボックル物語にとって欠かせないのが村上勉さんによる素晴らしい絵です。
このイラストのおかげで、私はコロボックルという生き物がどのような背格好をし、どんな生活をしているのかを具体的にイメージできるようになりました。
村上勉さんのイラストのファンはたくさんおられ、画集も出ているので、お好きな方は是非合わせてご覧ください。
1巻目だけでも楽しめますが、2巻も読むと、1巻に出てきた「せいたかさん」と「おちび先生」が、また素敵な展開になっていたりと、続編も世界観にどっぷりと浸かりながら楽しめます。
情景描写も素晴らしいので、読み聞かせでもおすすめです。
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