白ごはんが進む! 「蟹王府」で上海の家庭料理に開眼
あれれ、上海のおうちに招かれたんだっけ!?
と、思うような、素敵なランチタイムを体験してきた。
日本橋にある「成隆行 蟹王府」は上海蟹で有名な名店だけれど、この3月からは「上海家庭料理」のメニューを始めたという。
広報の方にお声掛けいただき、ランチにお邪魔してきた。
日本、特に東京には数多の中華料理・中国料理店があるものの、実は上海料理をちゃんと食べられるお店はそれほど多くないのだとか。
言われてみれば、上海料理ってどんな料理かと聞かれてもパッと思い浮かばないかもしれない。
長江の河口に位置する上海の料理がどんなものかと尋ねると
川魚をよく使う
醤油と砂糖を使った甘じょっぱい味付けが多い
のが特徴だと言う。
魚に甘じょっぱい味。もしかしたら、日本のごはんに通じるものがあるんじゃない?
などと想像しながら席に着いた。
さて、どんなストーリーが待っているのやら。
まずは、胃開湯。
細く切った豆腐と海藻のスープが、文字通りゆっくり胃を目覚めさせて開いてくれる。
川海老の揚げ炒めは、おつまみにもおかずにもなり、ずっと食べ続けられるような親しみのある味。海老は殻がやわらかく、その食感がまたちょうど良い。
ごはんにも合う味付けで、日本の家庭料理でいえば、きんぴらのような感じ?
ビールに、合う合う。
筍の油炒め。 「甘じょっぱい」の代表格ともいえる料理は、緑のえんどう豆が鮮やかで白いお皿に映えること。筍の食感が心地よく、えんどう豆の青い香りが春らしい。
舌平目とナズナの獅子頭は、イシモチのスープに、舌平目とナズナを丸めたお団子を浮かべた味わい深いスープ。家庭では豚肉のミンチボールを使うことが多いとか。
上海では、スープ料理をとても大事にするのだそうだ。世界のどこでも、スープは人を癒してくれるようだ。
北海道産のやり烏賊とセリの強火炒めは、細かく包丁を入れたイカの噛みごたえが絶妙で、あっさりとした味のなかにピリリと心地よい辛みがアクセント。
そしてコレ、トンローポウ、豚の角煮!
まずはキャラメルのように色づいた肉と煮汁の美しい煌めきにほうっとため息。
そしてひと口いただくと、箸で切れはするもののやわらかすぎず、何と言っても脂身のおいしいことときたら!
正直、豚の脂はあまり得意ではないが、これはすんなり食べられた。
脂っぽくなくぷりっこりっとした食感があって、うん、おいしい。
このアッサリ感の秘密は、最初にねぎやしょうがと合わせて蒸しているからなのだそうだ。
まずははそのまま、そして煮汁といっしょにごはんにのせて。
ああもう、進む進む、いろいろ進んじゃう。
衝撃だったのは、上海ではどんな店でも家庭でも必ずと言っていいほどメニューにオンリストされるという、ピリ辛味噌五目炒め、八宝辣醬。
8種類の具材を甜麺醤と豆板醤で炒め煮にしたもので、何を入れるかはその日の冷蔵庫しだい。
こちらのお店では、豚、鶏、鴨の砂肝、鮑、海老、にんじん、たけのこ、グリンピースに、トッピングはピーナッツという贅沢なラインナップで、大きさをそろえて角切りにした8つの「宝」が、それぞれに本領を発揮しつつ周りとうまく調和して、ごはんが(紹興酒も)グイグイと進んでゆく。
麺に合わせてもおいしいというから、次回はそうさせていただこう。
料理の最後は、海鼠の点心。海鼠、ニラ、エリンギ、しらたきをを甘辛く炒めたものを、自家製の薄い皮で包んで蒸してある。
そのまま一口食べたら、黒酢としょうがをつけて味変を。
満腹でも食べられるから、あら不思議!
満腹でうっとりしているところに、夢見心地のデザートが到着。
鬼蓮と桃の樹液、金木犀のデザートに、自家製のしょうが茶を添えて。
ほんのり甘いしょうが茶が、満腹の胃にやさしく染みわたる。
桃の樹液は希少食材で、ぷるんとした食感が特徴。肌にもいい影響があるとかないとか…。
金木犀の香りのデザートは、食事の締めくくりの上品で華やかなフィナーレとなった。
(実は・・・デザートの間に追加でカニ炒飯もいただいたのだけれど、写真を撮り忘れてしまった。上海蟹のチャーハンは、濃厚で美味でございました)
優しく胃を覚ますスープに始まり、華やかな香りのデザートで締めくくった上海家庭料理。
陰陽のバランスが整い体に染み渡る一品一品は、中国料理の長い歴史が育んできた、いわば思いやりの料理だ。
一品だけでも、好きなものだけを組み合わせても、お任せのコースにしてもいい。どんな仕立てであっても、中国料理の醍醐味はみんなでワイワイと食事を楽しむこと。
ようやく、大皿から堂々と取り分けられるようになってきたのだから、円卓を囲んでのにぎやかな食事を楽しみたい。
ブラボー、上海家庭料理!