漢字をARで動かしてみる
スマートグラスと文字を使ったコミュニケーションの可能性を探究したいと始めた新たな実験。社交性に富んだプロジェクトリードのアシストを多分に受け、濵一蝶さんと何か一緒にやってみることに。好奇心の渦の中で生まれる実験のレポートです。
これまでの考えなどはこちら。
新たな実験計画をもって、漢字をARで動かせることができるのか、まずは試してみた。
「らくがきAR」最強説
以前、書家・濵一蝶さんのアイデアで、「らくがきAR」というアプリを使い、筆で書いた文字を東京の空に飛ばしてみるという実験をした。
「らくがきAR」は、紙に書いて、カメラでスキャンするだけという、とっても簡単な仕組み。スキャンされた文字は、目の前の空間に現れ、ふわふわ浮いたり、ころころ転がったりする。リンゴやバナナを食べたりもして、かわいらしい動きににやにやしてしまう。
ただ、筆で書いた文字をキャプチャするのが難しく、その時やりたかった、東京タワーに漢字の「月」を浮かべることはうまくできなかった。
Adobe Aeroは訓練が必要
再び濵一蝶さんの助けで、Adobe Aero(Beta版)の存在を知る。早速シェアしてくれた彼女の作品も楽しくて、私も試してみた。
最初のAR作品「ブランコに乗る犬」。
10分でできると聞いて挑戦したが、1時間かかった。Aeroは、デスクトップ版ではカメラが動かず、iPhoneとの操作移行などで苦戦してしまった。そしてモーションをつけるのが難しい。
漢字は「犬」。造形のわかりやすい甲骨(金文にも似た形がある)に。
創作はデジタルカリグラフィーで、Illusratorでグランジブラシを使ってみた。思うように書けないのと、二度書きを重ねているので、これを書と言ってはいけない気がするが、今後の課題とする。
文字を3Dにしたい
ARに落としてみると、文字の2D表現が気になった。文字も3Dにした方がおもしろいのではないか。ここから、2Dを3Dに変換するソフト探しが急ピッチで始まる。
3Dソフトもいろいろあるが、難しそう(難しいのイヤ)。
デスクトップで簡単に試せるTinkercadを試してみたが、書道らしさが消滅。造形としてはよさそうだが……。
アナログの書道を踏まえたデジタルカリグラフィーの自分の中での許容範囲と、デジタルだからこその創作における柔軟性みたいなもののはざまで揺れる。ここは自分の中での決め事かもしれない。直感的には、筆(ペン)で文字を書くことから離れすぎてはいけない気がしている。デジタルでできることはありすぎるくらいあるから。
2Dの違和感を逆手にとって
再びAeroに戻る。既存アセットを活用して、背景をARで作りこみ、そこに2Dの書が入ることで、違和感はむしろアイキャッチ的に機能するかもしれない。
アップデート作「松林を走る犬」
これを見てもらった(3名内1名は小人)最初の感想が「かわいい」で、自分でもなんかかわいいなという印象を持った。折り紙の森がそうさせているのかもしれないが。
3Dと2Dを構造的に合わせるとかよくわからないし、なんとなくかわいい世界観みたいなものを追求する方が私には楽しいかもしれない。
引き続き、Aeroでの作りこみがどこまで自分でできるかと、自分が考えているデジタルカリグラフィーの範疇でどう表現に落とすかを考えていきたいと思います。