多摩デザイン大学「編集デザイン」 菅付 雅信さん
昨年通った多摩美術大学が、期間限定「多摩デザイン大学 / Tama Design University」を開校しているので、受講しています。
この問いを頭に置きつつ、学んでいこうと思います。
「我々は新しい世界をどうデザインできるのか?」
我々は今、環境をはじめとした様々な課題や、テクノロジーによる急減な変化と向き合っています。その状況の中でどうデザインするかの前に、何をデザインしていくべきなのかを問い直していくことが重要ではと考えました。
▼講義詳細
多摩美術大学が、誰もが参加できる“デザインの大学”を期間限定開校。50の新たなデザイン領域を知る、講義プログラム公開
東京ミッドタウン・デザインハブ第94回企画展「Tama Design University」12月1日(水)〜12月26日(日) 会期中は講義プログラムを毎日開催。聴講無料。
▼講義一覧HP
■テーマ
編集デザイン「編集とは一体何だろう?」
編集という仕事を30年以上やり、いまは下記の代表をされているそうです。
編集の定義は、企画を立て、人を集め、モノをつくる とご紹介いただくところから始まります。
次に、各種編集史のご紹介。
コミュニケーション、メディア、クリエイション、デザイン、編集の歴史
とは、より多くの人に、より良く伝える歴史とのことです。
もっとも古い編集
メソポタミア文明、シュメールの粘土板、紀元前2,300年頃のもの。
日本の最初の編集
古事記(712年)、日本書紀(720年)は日本最古の編集物
印刷の登場
ドイツのグーテンベルクが1445年に活版印刷を発明(聖書を広めたかった)
→マスメディアの登場
爆発的に広がるが、100年間は普及したのは聖書かギリシャ神話だった
「新しいメディアの内容は、常にそれ以前のメディアである」
エリック・マクルーハン「メディアの法則」より
グーテンベルクの影響
ヨーロッパにおける文芸復興(ルネッサンス)、科学革命、宗教改革、近世社会の到来に大きく貢献した
編集には、言葉、イメージ、デザインという3つの要素が昔から備わっているとおっしゃっていました。例えば、メソポタミア文明の頃の壁画ですらもすべて包括されていると。
グーテンベルクが、印刷業だけでなく様々な改革に関わっていたことも初めて知りました。菅付さんが会社の名前にグーテンベルクを使っているのも、彼に対するリスペクトがあるからなのかな、と感じます。
さらに、新聞や広告、文庫本、TVなど様々な歴史のご紹介。
新聞の誕生
1605年ドイツでヨハネ・カルロスが創刊した
世界最初の新聞「レラツィオンRelation」
広告の誕生
世界最初の広告代理店が誕生
1840年、フィラデルフィア 当時の広告代理店は「スペース・ブローカー」
ラジオの誕生
発明王がラジオを作る 元エジソンの会社の技師レジナルド・フェッセンデンが1906年12月24日にマサチューセッツ州の自宅から、クリスマスの挨拶をラジオ放送
モーション・ピクチャーの誕生
エドワード・マイブリッジ(1830-1904)
キネトスコープ(1891年)は、トーマス・エジソンによって発明された映画を上映する装置
ペーパーバックと文庫本の誕生
日本では文庫本、海外ではペーパーバックという新しいタイプの書籍が誕生し、書籍を大衆化させる
日本で最初の文庫、岩波文庫は1927年に創刊
「今や知識と美とを特権階級の独占より奪い返すことは、つねに進取的なる民衆の切実なる要求である」岩波茂雄
安くて小さな本が個人主義と民主主義を生んだ。
マーシャル・マクルーハン
「本が持ち運びできるようになったことは、新しい個人主義賛美に多大の寄与を与えた」
こうやって見てみると、新聞は1600年代から存在していたけれども、広告やラジオ、さらに映画や文庫本の歴史ってかなり浅いんだなと感じました。
岩波新書が創刊されてから2027年で100年なので、文庫本って100年も歴史がなかったんですね。
それまで本は買えるものではなく借りるものだったというぐらい高級なものだった、という過去も、今では考えられないぐらいです。
大衆雑誌と上流階級雑誌の誕生
「タイム」1923年 「ライフ」1936年の創刊 ジャーナリズムが発展する
蓄音機の登場
1877年、トーマス・エジソン、フォノグラフ(蓄音機)を発明
1887年、エミール・ベルリナーが円盤式レコードとグラモフォンを発明。
テレビの誕生
米国スコットランドのアレクサンダー・ベインが1843年に発明した写真電送に始まる
ドイツが大衆プロバガンダ装置として利用し、国民を洗脳できた
危機感を感じ、ドイツに遅れてアメリカがTV放送をはじめる
マーシャル・マクルーハン「電子メディアは人間の中枢神経の拡張である」
雑誌ブーム
1953年創刊の「プレイボーイ」
アート・ポールによるカバーの数々。ドイツのバウハウスで勉強したことにより、表紙のクオリティが高かった。
ユース・カルチャー&ユース・メディアの台頭
1967年「ローリング・ストーン」がサンフランシスコで創刊。
日本の若者雑誌の誕生
1964年 平凡社(後のマガジンハウス)が若者向け週刊誌「平凡パンチ」創刊
パーソナル・コンピューターの誕生
大企業や国ではなく、個人がコンピューターを持てる時代へ。
DTP(Desk Top Publishing)が生まれる
アップルI(1976年) Macintosh Plus(1986年)
インターネットの誕生
核戦争を想定して生まれた 1977年分散型ネットワークシステム
最初はテキストのみで1993年に画像を見ることのできる閲覧ソフト「モザイク」が誕生 インターネットは爆発的に普及
ヤフー誕生:1994年 グーグル誕生:1998年 WIREDは予見していた。
SNSの爆発的普及
YouTuber、インスタグラマーの誕生、SNSがビジネスになる
■所感
こんなに様々なメディア、インターネット関連の歴史を一気に振り返ったことはなかったので、とても勉強になりました。
菅付さんは、伝統的な編集の仕事として、雑誌、書籍の編集と執筆をし、拡張的な編集の仕事として、広告、音楽マネジメント、イベント、都市計画に関わってこられているそうです。
また、国/ジャンルを超える人々と編集したいと思っているそうで、ご紹介いただいた仕事の多くが、コラボレーションしているものでした。
出版は、もともとがベンチャービジネスなので、その気持ちを忘れずに、常に新しいことをやりたいと思っていらっしゃるそうです。そのバイタリティがすごいな、と思います・・!
本もたくさん出版されているので、ご参考までに。
【菅付さん出版本】