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雑記 | はじめてのパリは
生まれて初めてのパリ旅行は、カネコアヤノの『タオルケットは穏やかな』を聴きながら、ぶ厚い曇り空の下を歩くこと以外には、なにも出来なかった。
4月のパリは寒くて天気が悪くて、カネコアヤノの泣くような、祈るような歌声がよく似合った。
このアルバムを聴きながら、どれだけの距離を歩いたのだろう。
色々なことが混沌としていた時期だった。なんでも記録したがるわたしなのに、その頃はなにも書けなかった。心がうまく動かなくなってしまっていたから。
出来事の渦中にいるときの心境も、そこから次第に抜けていく過程も書き残さなかったのは、大切にしたい記憶ではなかったから。立ち止まったり振り返ったりせず、前へ進みたかった。今ようやくあの時期を振り返ってみて、やっぱりそれで良かったのだと思える。感傷にひたらず、駆け抜けてよかったと。
それでも、パリで過ごした5日間だけは立ち止まっていたのだと思う。すべてがうまくいっていないことに気付き始めた時期だった。
パリの寒空の下、ただひとりで歩きたいと思った。じっとしていることは出来なかった。歩けば歩くほど、このアルバムを聴けば聴くほど、少しずつ自分が自分に戻っていくのを感じていた。カネコアヤノの音楽に、ずっと背中をさすってもらってるみたいだった。
何日目かの夜、船の上からセーヌ川の夕焼けをみた。それが本当に綺麗で「ああ、まだ心は動いてる」と嬉しくなったのをおぼえている。
あれから1年半が経って、ようやくわたしは、パリで過ごした時間を書きたいと思っている。見たもの、歩いた道、気付いたこと、美味しかったもの。言葉として記録したものは何もないけれど、身体に染み込ませるみたいに聴いていたこのアルバムを聴けば、きっと記憶は蘇るはず。
寄りかかることが怖い
愛ゆえに
悲しみを消すための 傷が絶えない
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