「伝える」から「伝わる」へ。一生役立つ人生の教科書|『バナナの魅力を100文字で伝えてください』
昨今、『人は話し方が9割』(永松茂久,すばる舎)をはじめ、コミュニケーションについて取り上げるビジネス書は多く輩出されている。
それだけ私たち日本人は、「話すこと」「伝えること」に悩みを抱えているという証拠だろう。
そんな数多くのビジネス書が並ぶ書店で私は、ひときわ目を引き、そして一度見たら忘れられないタイトルのビジネス書を発見した。
これが今回紹介する、柿内尚文さん著作『バナナの魅力を100字で伝えてください』(かんき出版)である。
バナナの魅力?
伝えてくださいって言われたって……。
100字ってどのくらいの文量?
そもそもなんでバナナなの?
そんな状態でいわば「衝動買い」してしまったのだが、読み進めていくと......
「今まで『伝えている』と思っていたけど、それって『伝わって』なかったかも。
なんで分かってもらえないんだろう、と思っていたけど、実は自分の態度が問題だったかもしれない。
名言には、名言になる理由がちゃんとあるんだ」と思った。
そんな、誰しも「自分ごと」として思い当たるものがきっと見つかる内容となっている。
本書はビジネス、プライベートを問わず人間関係の根幹を担う「伝わる技術」を、7つの構造と36の法則に分けてやさしい言葉で教えてくれる。
そして、さすが「伝わる技術」について書かれた本であるがゆえ、本書の文章自体にも「伝わる」エッセンスがギュッと詰め込まれており、読むだけでも「伝わる」言い回しが習得できる。
人間関係に悩みを持っている人はもちろん、伝わる文章のからくりを知りたい人、難しい言葉は一切使われていないため普段ビジネス書はあまり読まない人にもおすすめしたい一冊である。
「伝える技術」「伝わる技術」
本書には「伝わる技術」と記されているが、それは決して「伝える技術」ではないというところがポイントである。
筆者は「伝える」と「伝わる」の違いについてこのように定義している。
「伝える」とは自分本位
「伝わる」とは相手本位
つまり「伝わる」とは、相手が理解することである。
例えば社内でこのようなシーンを見かけたことや、あるいは実際経験したことはあるだろうか。
上司「この件について先方に伝えておいてくれたか?」
部下「はい、伝えました! ですが、分からないと言われました。」
上司「それじゃあ伝わってないじゃないか!」
部下「でも言いました!」
「言う」=「伝わる」と捉えがちであるが、自分が思い描くことを相手が理解して、はじめて「伝わった」といえるのである。
そして著者はこの「伝わる」は7階建ての構造になっているといい、ここではそれを7つの構造と名付ける。
この中でも、著者が特に「赤線箇所です」と記している「3階 相手ベース」について掘り下げていく。
そもそも人は、人のことが分からない
「人は人のことが分からない」と「伝わる技術」を教える本書に言われてしまっては元も子もないが、この前提に立ちかえるこそ、相手に「伝わる」ための近道だ。
あいつはなにを言っても分からない。
何度も言っているのに全然覚えてくれない。
分かってくれない方がおかしい。
こちらがなにかを伝えるとき、「分からない相手が悪い」と思ってしまうことはないだろうか。そして、そんな相手に対して時にイライラしたり、態度に出てしまったりすることはないだろうか。
しかし相手は、「自分が理解できる範囲内」でしか理解ができない。
しかも、たとえ同じ内容だとしても、怒った態度で伝えられては萎縮してしまい、余計理解するのが難しくなるだろう。
人は、人のことが分からない。
だからこそ、「相手ベース」で「どのように伝えれば分かってもらえるか」という思いやりの気持ちを持って相手と向き合うことが大切なのである。
こんなところでも!ベストセラーに隠された「伝わる技術」
誰もが知っている名言やベストセラー作品のタイトルにも、「伝わる技術」が数多く隠されている。
たとえば、『ビリギャル』こと、『学生ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』。ベストセラーになり、映画もヒットした。
ここで使われているのが、「フリオチの法則」である。
『ビリギャル』のタイトルがたとえば、『高校2年生が慶應大学に現役合格した話』だとどうだろうか。「すごいな」「もともと頭良かったんでしょ?」などと思うくらいで、そこまでの興味は惹かれないと思う。
ここで『学生ビリのギャルが1年間で偏差値を40上げて』というフリを使うことで、「え、どういう勉強をしたの?」という関心を読者は持ちやすくなっているのだ。
フリとオチの振れ幅が大きいほど興味を惹きやすい、と著者はいう。
ちなみに本書の『バナナの魅力を100字で伝えてください』というタイトルにも「伝わる技術」が詰まっている。
ぜひ、どのような技術が使われているかは本書で確かめてほしい。きっと、私がタイトルに惹かれて「衝動買い」してしまった理由が分かるはずだ。
あなたの人生の教科書に
ビジネス、プライベート問わず、「伝わる技術」は普遍的に使える。
あなたの人生の教科書として今後役に立つことは間違いないだろう。
ぜひ、一度読んで終わらず読み返し、アウトプットし、そして周りの人にも紹介してほしい。これは著者の願いであり、私の願いでもある。