見出し画像

息子と早朝ウォーキング


「今日は、どうする?」


間。


この「間」に、私は察する。


こりゃ、、、行かねぇな。


「今日はやめとくー」


ほらね。
息子のことなら、もはや「間」でわかっちゃう。


月曜日って、大人でも億劫になるからね、わかるよ。それに鼻水出てるしね。


ヨシッ
本日居場所には行かないday


私の脳内はカチッとその方向で予定を組み始める。
時刻は7:00。
弟の幼稚園は代休だ。
夫のお弁当はもう作った。
居場所に行かないとなると急ぐ必要もない。


早朝ウォーキング行っちゃうか


運動不足気味なので、隙あらばウォーキングに行くようにしている。
夫の出勤時刻は8:00だから、それまでに帰宅すればいい。
そうと決まればさっそく柔軟だ!


この季節、ウォーキング前に柔軟をして脚を動かしておかないと、血行が良くなるのか脚が猛烈に痒くなる。


私は柔軟を始めた。


するとさっそく息子から「何で柔軟しているの?」と、お探りが入る。


「お母さん、ウォーキング行ってくるわ!」
「・・・ウォーキングってどうなの?」
「気持ちいいよー!朝のウォーキングは特にね!音楽聴きながらさぁ、歩くわけよ!最っ高なんだよねーーー」
「何聴いてるの?」
「最近は、Mrs. GREEN APPLEかな!」


と会話しつつ、私はせっせと柔軟を進める。


間。


この「間」に、私は察する。


こりゃ、、、ついてくるな。


「僕も行く!」


ほらね。
わかっちゃうのよ、もう。
「間」でわかっちゃうアータのことは。
正直言うとさ、ウォーキングとかさ、サッサカサッサカ歩きたいんだけどね。結構ひとりウォーキングってリフレッシュになるんだけどね。



はい!よろこんで!

時刻は7:15。
アカン!急がねば。
私のウォーキングコースは約30〜40分。
彼は私のスピードについて来られるだろうか。



いつものように右耳だけにイヤホンをつける。
今日は息子の左耳にもイヤホンをつけてあげた。
ニヤつく息子。
嬉しそうだ。
玄関の鏡の所で、ピョンと跳ねた寝癖を気にしていたが、私はすかさずダウンのフードを息子の頭にかぶせ、ほら!行くよ!と、玄関の扉を開けた。


BGMは



手を繋いでくる息子。
外で歩く時はまだ必ず繋いでくる。
息子の手は温かい。




「ほらー!空見てごらーん!!」


私は立ち止まり空の写真を撮る。


カシャ




「なんか、今日の空は可愛いなぁ」
「撮ったの見せて見せてー」


写真を見ながらきゃっきゃする私たち。
・・て!
そんなゆっくりしてる場合じゃない!
8:00までに帰らないと!


再び歩き出す私たち。
耳から聴こえるMrs.の曲が爽やかだ。


「お母さんさぁ、ほんとはこうやって歩きたいんだよねー」


私は腕を前後に大きく振り、所謂・・・
『THE ウォーキング』って感じで、背筋よく大股で歩いて見せた。
いつもひとりだと恥ずかしくてできないが、今日は可愛い相棒がいる。

とその時、ゴミ出しの人が家から出てきた。
私は咄嗟に何事もなかったように普通の歩き方に戻した。


母の羞恥心、息子に目撃される


息子との早朝ウォーキング。
初めてだ。
こんな日が来るなんて。
視界が滲む。


息子は入学して2ヶ月で学校に行かなくなった。
得体の知れない恐怖心から外へ出ることを怖がり、私から離れられなくなった。
無気力状態で夕方にはソファでぐったり。
食欲不振になり痩せていった。

そんな息子が、今、私と手を繋ぎ早朝に歩いている。


嬉しい。
ただただ、嬉しい。

ここまで1年半以上かかった。
心が元気になるまで。



「あの家、お洒落だよね」
「黄色と水色で可愛いね」
「もう少ししたら幼稚園があるよ」
「え、こんな所にあるの?」
「背中ちょっと汗かいてきたわ」
「あ!あの公園覚えてるかも!お母さん逆上がりしたよねあの鉄棒で」
「そうそう!よく覚えてるね」


会話が弾む。
楽しい。


中学校前を通りかかる。
朝練に励む生徒たちがたくさんいた。


「みんな頑張ってるねー!お母さんもバドミントン部だったから朝練やってたなぁ。楽しかったなぁ」


学校生活の楽しかった思い出をしれっと話してみたり。
チラッと息子を見るが、全く興味なさそうだ。
まぁ、いいか。


大きな銀杏の木の前を通る。


「立派だね〜」


私は見上げてそう言ったが、息子は木よりも今朝見た「毒蜘蛛が外国人のカバンからいきなり出てきた」というYouTubeを急に思い出したらしく、その話を聞かせてくれた。


私の大好きな坂にさしかかる。
ここから眺める空が綺麗なのだ。


私はまた写真を撮る。


カシャ




美しい朝焼け。
撮った写真を息子に見せる。


「もしさぁ、コンテストがあって一番になったらどうする?」


と息子が聞いてきた。
なんか粋な返しを考えたが、


「そりゃ〜・・・・嬉しいよね」


何も浮かばなかった。


だいぶ家に近づいてきた。
「やっと戻ってきた〜」と、ちょっとお疲れ気味の息子。
時計を見ると時刻は7:50。
そろそろ息子の登校班の集合時間だ。
このままだとみんなの前を通ることになりそう。

息子はどう思うだろう。


私は集合場所から外れたルートに変更することにした。
しかし、集合場所が変わったのを忘れていて、集合場所から見えるところを通ることになってしまった。
幼馴染のHちゃんが息子に気がつき、びっくりした顔で手をブンブン振ってくれる。
横にいたもう1人の幼馴染に声をかけてくれて、2人でブンブン手を振ってくれた。


チラッと息子を見ると、ちょっと照れくさそうに手を振り返していた。



「耳にこういうやつつけてたね。あれ、あったかそう」
「ああ、耳あてね。あれ、あったかいんだよねー。可愛かったね」
「うん」


よかった。気にしてないみたいだ。


駄菓子菓子、耳あてって・・・。
何この昭和感。
調べてみる。

イヤーマフ

だって。
時を戻して「ああ、イヤーマフね」って言い直したい。


時刻は8:00。
良かった、間に合った。
息子はとてもいい表情をしている。


なんとなく、、聞いてみる。


「居場所、、、行かなくていいんだよね?」


間。


この「間」に、私は察する。


こりゃ、、、行くな。


「やっぱり、行くぅ」


ドスコイほらきた。
アタシ、すごくなーい?


そうと決まれば、脳内を本日居場所に行きますdayにシフトチェンジだ。


カチッ

えっとえっとぉ、、
まずはなんだ!
お弁当づくりだ!

急げ!mika!
私は、家中を走り回り準備を始める。


きっと、今日という日もいつか宝物になる。

息子と手を繋ぎながら早朝ウォーキングしたこと
息子の手の温もり
一緒に綺麗な空を見上げたこと
いろんな話をしたこと
歩いたら気力が湧いてきて、1歩を踏み出せたこと


どんな些細な日でも忘れたくない。
忘れたくないから

今日も私はnoteに綴る。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集