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【キャンプ②】大空ブランコにゆらゆら揺られて



「雨降らないって言ったのに。何で嘘つくの」

キャンプ2日目。
朝から雨が降っていた。

長男は、朝イチで車の乗り物に乗る気満々だったが、叶わなくなってしまった。

自分のプランを崩されるのを極度に嫌う長男は、負のミラクルワールドにあっという間に行ってしまった。

子どもあるあるだろうけど、息子の負の感情はものすごいパワーがある。一度脳内で感情が大暴れし始めると、切り替えるのがものすごく大変で、まわりも彼の感情にのまれてしまう。

いつも冷静な夫がのまれそうになっていた。


切り替え上手な次男は早々に雨降りを受け入れ、室内のアスレチックで遊びたがっていた。

私は、夫に次男と遊びに行って欲しいとお願いし、ネガティブモード全開の長男と2人きりになった。


ネガティブモード全開のときにあれこれ言っても、彼の耳は閉じているので何も響かない。
今まで何度も経験してきた。

だから落ち着くまでお口チャックで待っていたら、


「何で何も言ってくれないの、イライラするんだけど」


と言われる。


何か提案しても、全て否定される。

私は、彼のネガティブにのまれないように自分の舌を噛んだ。


雨が降ってしまったことは仕方ない。
でも、息子に「仕方ない」は通用しない。

切り替えだ、切り替えるんだ。
のまれるな。
踏ん張れ、私!


私は、必死に息子の意識を逸らす何かを探した。その間、いろいろ文句を言ってくるが、何とかスルーした。


車のゲームができるカフェを見つけた。それは、息子が大好きなゲームだった。私は息子にそれを提案すると、あっという間に笑顔になった。

切り替え成功だ。


起きたことは仕方ない。
大切なのはその時どうするか、だ。
ずっと嫌だ嫌だと言っているのか、切り替えてどうすれば楽しくなるかを考えるか、

全ては自分次第だ。

たくさん経験して、その力をつけて欲しいと願う。

カフェで時間を潰している間に晴れ間が見えてきた。


よかった、、泣きそうになった。


それから、私たちは森の中を散策するコースに行くことにした。


これが、すごくよかった。


人の手が加わっているから、子どもが安心安全で歩ける。



ナナフシを発見したり、



いろんな形や色の葉っぱが落ちていたり、蜘蛛の巣があったり、可愛い巣箱が木に置いてあったり、「絶対これ宝石!」と言う石を拾ったり、



いろんなきのこがそこらじゅうに生えていたりして、きのこ好きな次男は「きのこ!!あ!ここにもきのこ!!!」と大興奮。



ついでに私も「きのこ」の言葉にテンションが上がる。

ゆっくり森の中を歩く。
いい季節だ。
大きく深呼吸をする。



キャンプ中、一度だけまた呼吸ができなくなる時があった。

次男がお調子に乗ってすっ転んで全身泥だらけになったり、コーンスープを全部ひっくり返して床中ベトベトになったり、次男のちょっとした子どもあるある的なハプニングには動じないでいられるのだが、


長男が絡むと、私の心の中は途端に渦が巻いてくる。


陽が沈んで辺りが暗くなり始め、今夜は星が見えるかなぁ、子どもたちに見せたいなぁと思いながら私は空を見上げていた。

森の中のひんやりとした空気がたまらなく気持ちがいい。
虫の声が心地良い。

その時、兄弟のいざこざが始まった。
他のテントからは、楽しそうな笑い声が聞こえてくる中、次男の大きな泣き声が森中に響き渡る。


うちだけだ。

次男の泣き声を聞いていると動悸がしてきた。
同時に、またどろどろした感情が私の中で渦巻いてくるのを感じる。


いつからだろう。
ただの兄弟喧嘩が、私の中でただの兄弟喧嘩ではなくなったのは。
こんなん、じゃれあいから喧嘩に発展してしまうのなんて、男兄弟ではよくあることなのに。でも、いつからか、動悸がして呼吸が苦しくなるようになってしまった。

そういう時に限って、キャンプに子供たちを連れてきた私の「思い」を重ねてしまう。


もう、聞いていられない。

私はひとりテントに戻り、次男の泣き声が聞こえないように手で耳を塞いだ。

もう嫌だ。
なんでこんなところに来てまで、こんな気持ちにならなくちゃいけないんだ。
せっかく、せっかく・・・。
なんで、いつも、いつも、こうなるんだ。
なんで、いつも・・・。


私は、耳を塞いでいる手に力を込めた。


気がつくと夫がそばに来て、私の背中をさすってくれた。

「なんかね、最近、泣き声があかんねん・・聞いてられない」

夫はうなずき、背中をさすってくれた。

しばらくすると、長男が私の所に来た。

「・・・ごめんね。○くんにも謝ったよ」


かなり反省している様子だった。
私は、「うん」と頷くだけでその時は精一杯だった。


昨夜のことを思い出しながら、木の間から見える青空に向かってふーっとまた大きく深呼吸をした。


森の奥までどんどん歩く。

気持ちがいい。


「楽しいね、気持ちがいいね、お母さん、楽しいわぁ」


私は繰り返し何度も言った。



「大空ブランコ」という素敵なネーミングの木で作られたブランコがあった。


大自然の中、空に向かって漕ぐようなブランコだ。
子どもたちの背中を順番に押し、最後は私もブランコに座った。


ブランコにゆらゆら揺られながら、自然を眺めた。

子どもたち、特に長男には、こういう自然の中でのびのび過ごすのがいいんだろうか。
たまに遊びに来るからそう思うのかな。

夫が一度だけ言ったことがある。
田舎暮らし。
仕事も学校も何もかもリセット。
どう考えても現実的ではないので、「そんなん無理だよ」と、すぐに言ってしまったが、夫の目は本気だった。


私も、長男の特性に気がついたときに、一度だけ考えたことがある。
都会から離れて大自然に囲まれた環境が、彼には合うのではないかって。
・・・私自身にも。


何を手放し、何を選ぶのか。
全部自分で決めてきた。

今ここに、こうしていることだってそうだ。

これから先も、きっと何かを手放し何かを選んでいくだろう。

決めた先でどうするかは自分次第だ。
選ぶことよりも大切なことのように思う。


今回のキャンプで思いっきり息子の成長を感じられた。
残念ながら星空は見えなかったし、息子も私もいつもの感情の渦にのまれてしまうことが起きたけれど、大自然の中で大きく深呼吸したら、上書きできた気がする。



自然の力は大きい。



なんて、大空ブランコにゆらゆら揺られながら考えたりした。


キャンプのおはなし、おしまい♪

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