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#008入社式二日前に一部上場企業の入社辞退した知的障害重度自閉症児の話し②

入社式二日前に入社を辞退した知的障害重度の自閉症児の話し②

2021年5月

障害者アーティストとして、
弊社で働きませんかと、
一部上場企業から
アーティスト採用のオファーが来た。

本社ビルにて面接。
採用が決まった!

知的障害重度の自閉症のあのKが。
一部上場企業に一般就労だと?!
大きなチャンスを掴むことが出来た!
みいこは大喜びで有頂天になってしまった。

2022年3月30日

入社式二日前に入社を辞退という決断。

この期間に何があったのか、
記録していきます。

前回までのお話はコチラ
↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓

#006まさかの!重度知的障害自閉症児に、企業から障害者アーティスト採用のオファーが来た!【交渉のテーブル編】

#007重度知的障害自閉症児に企業から障害者アーティスト採用のオファー!からの衝撃展開【驚愕編】



本社ビルでの面談


①自閉症の特性ゆえ、制作に関してはこだわりが強いです。こういうものを作ってほしいというお題を出されてもそれに答えられない可能性が高いですがその辺をご理解いただけますかと確認すると、その辺は了解いただけました。

②環境に慣れるまでは、ボランティアか移動支援かなんらかの方法で支援員を一人つけても大丈夫か、と確認すると、簡単なことはアトリエ理者がサポート出来るとのことで、安心していた。

2022年4月から新卒入社予定
障害者採用ということで、
週30時間勤務の契約社員
という形で内定通知をいただく。


アトリエ完成

コロナ渦でアトリエの完成が遅れていたようだが、初冬にアトリエが完成したとの連絡。冬休みにアトリエ見学に行く予定だったがKが体調を崩してしまって延期。1月末に家族全員コロナ陽性になってしまいさらに延期。

2022年2月末日

ようやくアトリエ見学へ。本社の方とパラアーティスト数名でアトリエで対応して下さいました。

初めての場所。初めて会う人たちで緊張でいっぱいいっぱいのKは、ほとんどコミュニケーションが取ることができず。

自閉症の特性上、こうなることも予想されたが順応性もついてきていたので、その辺は慣れていけば大丈夫だろうことを企業の方たちに伝える。

今までのポートフォリオを見せて、絵画作品やアイロンビーズ作品を紹介、他のアーティストの作品も見せてもらう。

そして企業の方から

「こういったものを作ってほしい、などというリクエストに応えることはできますか」

という質問があった。

面談した当初、その点は事前に確認しておいたことを伝える。今回対応しているのは、違う部署の方だった。他部署間の職員同士で情報の共有ができていないと感じた。

リクエストに沿った作品を作るアーティストが欲しいなら「ココナラ」や「ランサーズ」などに、 いくらでもいい人材がいると思うが…Kの作品に魅力を感じての採用ということではなかったのか?

と、最初にモヤっとしたのがこの時。


アトリエ勤務は不可との連絡


数日後。

「想像以上にコミュニケーションなどが難しいようなので、アトリエ勤務は難しいと判断。すべて在宅勤務で可能でしょうか」という連絡が来る。

かいつまんで説明すると、

ーーーーーーーーーーーー
事業としてのパラアート運営。就労移行や福祉領域ではなく一般就労なので業務外の「生活」は、ご自身の力で対応して頂けることが必須。入社当初における画材準備のサポートなどは業務のため対応可能。
ーーーーーーーーーーーー

という趣旨でした。
求められることが高度だなぁ…

そもそも。
知的障害重度者の定義

衣服の着脱や入浴、食事など生活支援が必要。
簡単な会話は可能だが、書いてある言葉や数、金銭について理解するのが難しく一人で行動するのは困難な場合が多い。

厚生労働省

学生と社会人の違い



学生から社会人になることで、ステージが大きく変わるため、企業に勤務という生活スタイルに慣れるには多少の時間がかかるであろうことは、健常であっても障害があっても同じではないかと思っていた。

彼の成長と順応力を見ていたら、その辺は、少し声掛けを増やしてもらえたらすぐ乗り切れるだろうと、考えていた。

農園にて2000人以上の障害者雇用を実践していてノウハウもある企業なので、もちろん障害に対する配慮や理解はあるのが前提だと思っていた。

慣れるまでは声掛けの配慮もあるものだと思っていたが、アトリエ管理者も雑務や来客対応や外出することもあるため難しいとのこと。

画材準備等のサポートは、どの辺までサポートしていただけるか、ということの認識に両者の違いがあった。その辺が確認不足であった。どの辺まで配慮が可能なのか、文書などでしっかり確認必要しておく必要があった。

そもそも。

学生と社会人では前提がまず違う、ということの認識が甘かったのでした。

今さら後の祭りですが…

障害の種類や程度は人それぞれ違う

一般就労とはいえ、雇用形態は障害者雇用です。


他のパラアーティストたちとも少し話したが、気遣いまで出来るような方たちで、「どこに障害があるんだろう…」と思うくらい、一般の方たちと変わらない対応であった。

この方たちとKは支援の必要性の度合いが全く異なると感じたが、「障害者」という大きな枠でくくられているので、これは相当な家族のサポート、要はみいこのサポートや対応が随時必要だと感じた。

知的障害重度者ということを承知のうえでの雇用のはずなのに。

特性ゆえの配慮がないのに障害者雇用なの?

ますます不安がつのる…

通勤練習


3月上旬
アトリエまで一人で通勤出来るよう練習する。
通学で交通機関の利用には慣れていたので、数回の練習で、電車でアトリエまで一人で通勤できるようになった。

やはり年齢なりの成長もあり、精神的にも安定していて順応力もついてきていたので、少しの配慮があれば勤務は可能ではないかとまだ甘い考えを持っていたみいこであった。

アトリエ研修1日目

3月中旬


最寄駅からアトリエまで一人で通勤する。これはバッチリだった。
荷物をしまい、みいこが制作した「一日の過ごし方を箇条書きにしたチェックシート」に沿って準備、用意をする。アトリエ内では少し離れた場所から母みいこの見守りあり。

初めての場所で緊張しつつも自分専用のスペースを用意してくれていたので
キャンバスに一枚絵を描いた。何色も色を重ねて、深みのある素敵な作品が完成した。

帰り際にアトリエ管理者からいろいろ説明がある。

「ちょっと余計な一言があるなぁ」と私が思った瞬間

急にKの眼の色が変わり、管理者様を睨みつける、という行動をとる。イラっときた感情を必死に抑えようとして、目の前にあった自分の描いたキャンバスを強く押して、倒れてしまった。

コンプライアンス的にここには書けませんが…

初めて行く病院などでは、Kが知的障害重度ということで必要以上に赤ちゃん言葉で話しかける看護師さんなどがいることがあります。

悪気があるわけではないはわかるのです。良かれと思って言った一言が裏目に出てしまう、ということはよくあります。

そのようなニュアンスの発言があり、彼のプライドが傷ついたのではないかと思いました。

Kに関わる方たちには

一人のアーティストとして
また18歳の青年として、
年相応の対応を
淡々として下さい。

と伝えています。

何か問題が起こった時は、前後に何があったか?
背景を探ると、だいたいの原因がわかります。

感情が抑えられなかった原因は?

・アトリエ体験初日で、初めての場所が苦手という特性上、わからないことだらけで、めいいっぱい緊張していた。
・緊張の中でも集中して絵を描いて、本人なりに頑張って疲れていた。
・帰る間際で、言うタイミングがよくなかった。
・他のアーティストさんとは和気あいあいと談笑してい管理者が、Kに対しては少しぞんざいな対応が見られた。
・わかるように丁寧に伝えようということだと思うが、普通の新しい職員に対してはそういう声かけはするだろうか?知的障害重度者ということで、年相応ではない対応のように感じた。

そしてKも、そういう部分を敏感に感じ取り、その部分にも負荷がかかり、あまりいい表現ではありませんが「上から目線」のように感じたのではないかと思いました。

本人が言語化できないためあくまで私の推察ですが、長年の観察眼から推し量ると、おおむねは的を射ているのではないかと思いました。

実は私も若干そのように感じました。なので失礼な態度に繋がってしまった可能性が高いです。いい意味でも、悪い意味でもうそをつけないので、あれがKの正直な気持ちであったのだと思います。

しかし今まで、大人の方にあのような失礼な態度をとったことはありませんでしたから、本人もよくないことをしたという自覚はある様子。このようなことは2度と起こらないだろうと思いました。

Kはきちんと対応してくれる人にはきちんと礼を尽くします。が、そんざいな対応をする方にはそれなりの対応しかしません。人の本質を良く見ていて、Kには誤魔化しがききません。

初めて接する方だったし、相手も精一杯対応してくれたのだろうし、これからどう対応していくかについては、これからすり合わせていけばいいのかと考えていました。

が。

その後に、アトリエ管理者からかなり不躾な内容のメールが届く。

うーん。

あの部分だけ切り取って、Kが悪いとの判断かぁ…自分の言動にも原因があったかもしれないとは少しも考えないのかぁ…と、モヤモヤしつつ、それでもKがお世話になる人なので、原因や今後の対応策などを精一杯の誠意をもって返信した。

しかしその不躾な内容のメールは「アトリエ管理者の個人的な意見であり、これは会社の本意ではなかった」と、他部署の方から後日に謝罪あり。

Kに関わる多部署間の職員の意識に温度差がある。
自発的に発信することが出来ない恭佑には、
この環境は大きなストレスになると感じた。


アトリエ研修2日目

3月末日

今回は一人でアトリエまで出勤。
無事にアトリエ体験終了。

その後、今後の勤務についてどのように対応していくかZOOMにて会議

企業の方3名
障害者ジョブサポーター
Kの福祉コーディネーター
相談支援専門員
K母みいこ合わせて
参加者は7名


今後の対応は?

結果。

Kの立場や目線で考えている方は一人もいなかったように感じた。

就労移行支援事業所などで自立訓練もしつつアトリエ勤務はどうか、などという妥協案が出た。

複数の場所に所属するとなるとK本人に負担がかかり、不安定になる可能性がある。

もう、不安しかない。

運命の3月30日

就労移行支援事業所の見学を兼ねて、今後の方針を面談

続きます。
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一部上場企業の入社式二日前に入社辞退した話し③

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Kの芸術活動や自閉あるある等
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