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【エッセイ】エコバッグにアゲハ蝶🦋
私の母は、静かなひとだった。
余計なことは言わず、誰かを責めることもせず、
いつもただ静かにほほえんでいる。そんなひと。
そんな母が子宮頸がんで亡くなってから、丸6年が過ぎようとしている。
まだ6年?いや、もう6年か。早いな。
この6年の間に色んなことがあった。
母が生きていれば起こらなかったであろう出来ごと。
母がいなくなったからこそ起こった出来ごと。
どの出来ごとも、私の人生には必要なこと
あの時、産まない覚悟を持てなかった私へ。
予想外の妊娠だった。
あの日、初めて訪れた産婦人科の帰り道。
私の複雑な胸中を知ってか知らずか、満開の桜が咲き誇っていた。
まるで、「おめでとう!」と祝福されているかのようだった。
*
「あと1年頑張れば看護師になれる」
そう思いながら私は、学生生活最後の春休みを過ごしていた。
2年間を共に過ごしてきた同級生は、そのほとんどが一回り年下。
「春休み一緒に遊ぼうぜ〜」なんて声をかけられること