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【小泉今日子 書評集】本語り#05

<書評=読んだ人に「読みたい!」と思わせる>

だとしたら、間違いなくこの本は素晴らしいと思います。
私の積読タワーがますます積み上げられました。




はじめに

読書感想文noteを書いている私は、「書評」「小泉今日子」という言葉が輝いて見えて、手に取りました。
小泉今日子さん、なんとなくのイメージでしかないけれど、きっと文章も素晴らしいのでは!?という印象でした。
有名人のエッセイというだけでも、つい読んでしまいたくなりますし。

とは言え、小泉今日子さんは、あまり仕事については書かれておらず、一女性の目線で描かれていました。
それと同時に、どの書評もとても素晴らしく、「うわー、読んでみたい!読みたい本リストに追加だー!ポチッ!」が何度も繰り返されてしまい、積読がますます増えてしまいました。

こんなにたくさんの本が読みたくなってしまう書評って、あまりないような気がします。

どれも小泉今日子さんの独自の目線や感性があり、しかもそれが簡潔に書かれていて、その本の魅力がスッと胸に入ってきました。


余談

三浦しをんさんのエッセイを読んで、「積ん読」についても書いていますので、よろしければこちらもぜひ読んでみてください〜。



読みたくなった本

読みたくなった本は、なんと【13冊!!】

これは、書評集としては、私的にではありますが、とても多いです。
多すぎてこまる……目が周りそう………嬉しい………。


心に残ったフレーズ

心に残った箇所も、本当にたくさんありました。
引用祭りになりそうな気がしていますが、ご覚悟ください!
良き言葉をたくさんインプットしていただけたら、私も嬉しいです。
小泉今日子さんは書き出しがとても素晴らしくて、「お!読み進めたい!」とつい思わされるような、そんな文章が多かったです。

三十代。恋愛の悩みを近しい人に軽々しく相談出来るほど若くないが、その問題自体から解放されるほど年を取ってもいない。これは現在三十九歳の私の実感であり、この先は未知の世界だ。何歳になっても悩んでしまうのかもしれないし、死ぬまで解放なんてされないのかもしれない。

人生ベストテン

ゲロでうがい、そんな衝撃的なシーンからこの小説は始まる。二日酔いの日に読むのは辛そうな冒頭の数ページだが、幸いその日は二日酔いじゃなかったし、なによりもその先に広がる過激なくせに脱力系の松尾スズキワールドは、十分に私を楽しませてくれた。

クワイエットルームにようこそ

夜、ベッドにゆくと、既にひじきが長々と身体を伸ばしてベッドを占領している。著者はいかにひじきの邪魔をしないように寝るか策を練る。その姿を想像すると思わず笑ってしまう。猫好きにはたまらない微笑ましいエピソードと、著者自身が描いた気の抜けたようなゆるいタッチの猫のイラストがまた猫好きのツボにはまってしまった。

黒猫ひじき

あなたの一番大切なものは何ですか?と訊かれたら、私は迷わず「記憶」と答える。私の心の中に詰まっている様々な記憶は過去からの優しい風のように、今の私を慰め、励まし、奮い立たせてくれる。良い事も、悪い事も全部が愛しい大切な思い出。私の記憶は私が私であることの証明みたいなものだ。
著者、華恵さんは十五歳の女の子。ニューヨークで生まれ、六歳の時に日本に移り、三年前に作文集『小学生日記』で鮮烈なデビューを飾った。幼い頃から本が大好きだった華恵さんの大切な思い出は、必ず本当結びついているという。彼女が出合った本と、それにまつわる思い出がエッセーとしてこの一冊に詰まっている。

本を読むわたし

街のあちこちで見かける飲み物の自動販売機。いつも当たり前のようにあるから、当たり前のように利用するけれど、その飲み物を補充する人がいることを私は今まで考えたことがなかった。トラックで街を回り、一台一台飲み物を補充し、溜まった小銭を回収する。そういう仕事があるのだ。
その仕事を今日で辞める先輩の水城さん(女性)と、明日になったら離婚届を提出しなければならない主人公の敦が組みになって暑い夏の日の街を回る。作業の合間に交わされる会話は敦の離婚についてだ。
遠慮なく、ずけずけと核心を衝いてくる水城さんの言葉は、慰めでも、責めるでもなくとても心地が良い。沈黙の間の回想には駄目になって行く夫婦の時間がリアルに描かれている。離婚の原因なんて一言では決して言い表せない、そういう面倒臭さがいやというほど伝わってくる。離婚なんて二度としたくないなぁと、経験者の私は苦笑いをするしかない。

八月の路上に捨てる

健康の味と題されているが、六十歳の著者が不健康の味を味見しているような日々を綴ったエッセイだ。腱鞘炎、高尿酸血症、喘息、肺がんの疑い。次々と不健康な味に襲われる。ご本人にとっては深刻な時間だったのかもしれないけれど、読んでいる私の心はとっても楽しくなった。
健康の味は、損なわれた時にはじめて味わえる、と著者は言う。まだ私はそれを味わっていない。でもいつか、その味を知った時にこの本は力強い味方になってくれる。だって笑いは免疫力を高めるのだから。その時が来ることを、待ち遠しいとは思わないけれど。

健康の味

恋愛小説週なのだと思ってなにげなく手に取った。よく見たら変愛だったので少し笑ってしまった。でもその瞬間、この本のページを開くことが一気に楽しみになった。

変愛小説集

アカの他人同士がたった紙切れ一枚で夫婦になる。そしてまた紙切れ一枚で離婚する。とても簡単なことである。でも、それだけでは長い月日を共に生きられない。夫婦っていったいなんなのだろう?それがわかっていたら私も二枚の紙切れに判子を押すことはなかったのだろう。

枝付き干し葡萄とワイングラス

手紙だけで構成された短編集。でも、それだけで深い物語が伝わってきて驚いた。特に「赤い手」。出生届から死亡届まで、一人の人生に必要だった数々の書類だけで悲しい女性の生涯がちゃんと読み取れてしまうことに私は心から感動した。最近、久しぶりに読み返してみて、やはり名作だと再確認できた。

十二人の手紙

卯月妙子さんが生きていてくれて、この漫画を書いてくれて本当によかったと思う。小学生の頃に統合失調症を発病し、中学三年生で初めての自殺未遂、その後の人生は波瀾万丈なんて言葉では言いづくせない。女優や漫画家として活躍しながら入退院を繰り返し、数年前に歩道橋から飛び降りて顔面を粉砕骨折、片方の視力を失ってしまってからこの漫画を書いた。一言で言えば壮絶。だけどとっても切実で愛おしいラブストーリーだと私は思った。

人間仮免中

アイドルでもあり大女優でもある小泉今日子さんですが、文章を読むと、とても身近な存在のように思えてきます。
そのくらい、気取っておらず、自分の短所も出しますし、知らなかったことも素直に書かれています。
元々好きなのですが、さらに素敵なかただなぁと思わされました。
「人見知り」で「本を読んでいたら話しかけづらくなるから、読書をしていた」という一言とか、共感しています。
私も休み時間にわいわいするのが得意ではなくて、教室で本を読んだり、図書館に逃げ込んだりしていました。

積読が増えても良い!むしろかかってこい!積読のタワー、積み上げたる!!!
と言う方に特におすすめです。



余談

「書評」にかわる言葉が定着してほしい

ただ、私は「書評」と言う言葉があまり好きではありません。
「評」とつけられてしまうと、「評価」「批評」などが思い浮かび、素晴らしい点は書いているけれど、厳しい言葉も書かれているんじゃないか?と疑ってしまうからです。
共感性が高いことを自覚しているので、あまり辛辣な言葉は目にしたくないんです。
見た目もなんだか強くて固いじゃないですか。「批評」って。
もっと柔らかくて優しい言葉にできないのかなぁ。

それに私は、「批評」をしたいわけではなく、どちらかというと、「推したい」んだ!
推して推して推しまくって、布教したいんだー!!!!

もちろん「書評」は「レビュー」と違って、読んで良かった本が書かれているものがほとんどなので、言葉の印象と実際は違うんですけどね。
どうしても「書評」でくくられているので、その言葉で検索するしか術がありません。ちょっと悲しい。

考えてもパッとは思い浮かばないけれど、何か良い言葉が定着しないだろうか。。。


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