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「これしかできない」の中にある自由

水が出ない。
エレベーターも動かない。

新年早々、マンションの貯水槽清掃とエレベーター点検。
寒風吹きすさぶ中作業してくださるみなさん、おつかれさまです。

感謝の気持ちはあれど、実際はなかなかに不便。冬休み中の子どもと一緒におでかけしようにも、ど真ん中の時間帯に長女の冬期講習。はて、どうしたものか。

家で上手に過ごせない時の最近の避難先は、もっぱらファミレスだ。安い。テーブルが広い。一人でも家族でも過ごしやすい。でも今回は子連れ6時間の長丁場。いくら分別をそれなりに身に着けた小学生と言えど、手帳や仕事といったアウトプット活動に集中することを許してくれるほど、大人ではないんだなあ。

――本を読もう。徹底的に。
むしろ、本しか読めない。
読むしかない。

今年は「役に立つ」「お金になる」から少し距離を置くことにしている。効率的に生きるのも、稼ぐのも、人生の目的ではないから。
そんな風に、すぐに、あるいは永遠に「役には立たない」かもしれないけれど、読んだ後の自分が好きになれそうな本をあれこれ片っ端からポチポチとしていったら、ちょうどおおよそ1万円になった。

「自分のための1万円選書」を携えて過ごすファミレス。
結果、それはものすごく特別な時間だった。

いや、こんなに読み切れない。
もちろんです。
でも、「本を読むしかない」という檻の中にあるのは、「ただひたすら本を読んでいていい」という自由。

蜂蜜のなかに身をおくような。
少しずつ移動する日向ひなたに合わせて、気持ちよい場所を探していくような。

「読み飛ばしたところに私のチャンスがあるかもしれない!」と一言一句に目くじらを立てる読書にはない、甘さと、自由と、心地よさに、ただひたすらたぷんと浸かることのできる檻だった。

自由に選び取れるという豊かさがある。
けれど、これしかできないという豊かさも、ある。

20240105

▼ Essay Magazine「手帳の隣でコーヒーを」
手帳とともに40代の「じぶん実験」を楽しむライター・矢島美穂が綴るエッセイです。日々の記録や記憶が詰まった手帳のひとかけらを、コーヒー片手にじっくり眺めてみます。

原稿用紙2枚程度の、ささやかな文章を不定期に更新中です。
お読みいただく時は、ぜひあなたの隣にも一杯のコーヒーを。カップの底が見えるころ、あなたの景色が少しだけ新しいものになりますように。


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