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時を超えるぬくもり〜東京駅で出会うみちのくの仏たち
東京ステーションギャラリーでひらかれている展覧会「みちのく いとしい仏たち」を観てきました。
地方の村の、小さなお堂や祠にまつられた、素朴な神さまや仏さまたち。
有名な仏師たちが掘り上げた、大寺院のご本尊のような技巧はないし、国宝でも、国の重要文化財でもありません。
頭がすごく大きくて三頭身だったり、仏像界の暗黙のルール(仏さまの持ち物とか、ポーズとか)にも縛られない、現代美術みたいに自由な造形です。
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だけど、庶民の暮らしのすぐそばに寄り添ってきた仏さまたちは、親しみやすくて、観る者の笑みをさそう姿と表情をもっています。
それぞれの仏さまに添えられた解説文も、「民間仏」への愛と思い入れの深さが感じられて、読みごたえたっぷり。
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ほっこり温かい気持ちで展覧会を楽しんでいたのだけど、展示が終わりに近づき、赤ん坊を抱いた観音像の前に立ったとき、ふいに泣きたくなりました。
民間仏が作られた江戸時代以前は、今みたいに食糧が豊富で、医療が発達していた時代とは違います。
飢饉や疫病で、たくさんの人が命を落としました。
生まれた子どもが成人まで生き延びる確率も、今よりずっと低かったはず。
どうしようもない悲しみや絶望を前に、祈らずにはいられなかった私たちの祖先の思いが、仏さまたちを通して伝わってくる気がしたのです。
生きることはいとおしく、かなしい。
何百年経っても変わらない真実を、ひび割れ、虫食いの穴がたくさん空いた仏さまたちがやさしいほほ笑みで包み込んでいるようです。
観る者の心をあたためてくれる仏さまたちに東京駅で会えるのは、来年2月12日まで。
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