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【土鍋】目止めって何??
三保原屋本店は静岡の家庭用品専門店。創業は1687年といわれています。
三保原屋本店では、伊賀の土鍋メーカー「長谷園」の土鍋を常設しているので、土鍋についてまとめておこうと思います。
そもそも土鍋とは
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土鍋は陶器でも「直火」で使う道具として、特殊な存在です。
また、もともと日本でとれる陶土(陶器に使われる土)で、土鍋として使われるほどの耐火性をもつのは伊賀の土と言われています。
そのため、以前は日本で土鍋と言えば「伊賀焼」とされてきました。
(※現在は、他産地においても生活の用途にあうように、土のバランスを考えてた商品が製造されています。)
伊賀の土
400万年前は琵琶湖の湖底だった伊賀。
そこからとれる陶土には、有機物(たとえば草木などの化石など)が含まれており、土鍋が釜で焼かれる際に、それらの有機物が燃えたあとが小さな穴(気孔)となって残ります。
目止めとは
土鍋の使い始めに、できればお願いしたいのが、目止め。
せっかくなので、分かりやすい長谷園のHPより引用させていただきます。
”目止めとは、使い始めの土鍋や水漏れする土鍋にお粥を炊き込む作業です。お粥を炊くことで米のでんぷん質が土鍋の細かい気孔を埋め、水漏れを防ぎます。特に伊賀土鍋は粗土を使用しているので、米の研ぎ汁ではなく、必ずお粥で目止めをします。”
「水漏れする土鍋」と聞くと驚かれるかもしれませんが、昔ながらの土鍋は水が漏れることがありました。
(現在でも作家さんのつくられている昔ながらの土鍋は、水漏れすることもあります。)
現在は、材料の配合や技術の進化で、「水漏れする土鍋」の事例は殆ど聞きませんが、土鍋の性質を考えると目止めをすることをオススメします。
目止めは残りご飯で
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「目止めとはお粥を炊き込む作業」ですが、
●残りご飯をつかって
●土鍋でお粥をつくる
ようにしていただければと思います。
「お粥を炊く」というと、お米からお粥をつくるイメージも受けますが、ちょっとした理由があるので、「残りご飯でお粥をつくる」ことがオススメ。
お米からお粥を炊くと、お米のでんぷん質が土鍋の細かい気孔を埋める前に、水分が気孔に入り込んでしまうため、十分な効果が得にくくなってしまうと言われています。
目止めの手順
こちらも長谷園さんのHPを参照させていただきながら、写真でも紹介をします。
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①土鍋をよく水洗いして水分を拭き取り、水を含みやすい底面を上にして自然乾燥させます。
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②乾燥させた土鍋に8分目ほどの水(またはお湯)と、飯碗1杯程度のご飯(お米ではなく残りご飯)を入れます。
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③ざっと混ぜてご飯をほぐし、吹きこぼれのないよう弱火でゆっくりと炊き込んでください。
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④お粥が炊き上がったら火を止め、土鍋が十分に冷めてから(1時間以上)お粥を取り除き、土鍋を水洗いしてください。
※目止め後のお粥は食べられます。
土鍋の細かい気孔とは
土鍋で失敗してしまったという事例で、
「土鍋をカビさせてしまった」
という話があります。
カビてしまったということは、
●土鍋の中に水分が残っている状態で
●その状態で奥にしまい込んでしまったケース
が考えられます。
つまり・・・
『土鍋は内部に湿気を蓄える力がある』
ということが言えます。
この力が、デメリットだけでなく、メリットになることもあります。
土鍋が吸い込む水分
土鍋の素材は土です。
殆どの土鍋には釉薬(陶器をおおっているガラス質のコーティング)がかかっていますが、それでも水分を吸い取ることがあります。
これがメリットになることがあります。
それが土鍋でご飯を炊いた後に感じる調湿性です。
調湿性
土鍋でご飯を炊いて、20分ほど蒸らして・・。
例えばそのままの状態で、2~3時間後に土鍋をあけてみると、ご飯が程よくしっとりとしていることが分かります。
これは土鍋が余分な水分を吸湿してくれるから。
土鍋には炊飯器のような保温装置はありませんが、土鍋の土が持っている自然の保温効果で1時間ほどは温かさを保ちます。(400万年前の古琵琶湖層の多気孔な土の特性)
また、炊飯器の電熱を利用した保温機能による
・ご飯が黄色くなる
・ご飯が固くなる
とした問題が起きません。
そして、ご飯の水分を土鍋の土が自然に調整しながらゆっくり冷めていった「冷ご飯が凄く美味しい」と評判です。
土鍋の注意事項
完璧な道具はなかなか存在しません。家電も取り扱いを誤れば壊れてしまいます。
そこで、最後に土鍋の注意事項を丁寧に書いてみます。
①土鍋はしっかりと乾かす
特にしまい込む際は、土鍋をしっかりと乾かしてください。
通常のお部屋の中で乾かす場合は、乾燥まで3日ほどかかることもあります。
完全に乾かすために、電子レンジで、土鍋を少しだけ温めることも効果的です。(IH対応の土鍋は電子レンジ不可。)
②なべ底の水滴には注意
よく注意事項に「土鍋は濡れた状態で火にかけないでください。ひび割れの恐れがあります」と書かれることがあります。
(おうちで土鍋使うときも、中身を一度水でゆすぐこともありますが、そちらは問題ありません。)
具体的に気を付けていただきたい状態を言うと・・
「土鍋のなべ底(鍋の外部)に水滴がある状態では、火にかけないでください。」とお伝えしてもいいのかもしれません。
なべ底(鍋の外部)の水滴を拭きとってもらえれば、問題なくお使いいただくことはできます。
最後に
三保原屋でお客様に伺うと、炊飯器よりも土鍋で炊いたご飯が美味しいと感じる方は殆ど全ての方に該当すると思います。
しかも普段使っているお米でも十分に美味しさを感じることができています。
また、土鍋に限らず、いろいろな道具でご飯を炊き比べるのも面白いですよね。
土鍋を身近に感じて欲しいので・・・。
土鍋の扱いで悩まれた際は、是非三保原屋以外であってもお店スタッフさんまで聞いていただくと、いいかなと思います。
ちなみに、長谷園のショップが恵比寿にあります!
恵比寿のお店の中は文字通り『土鍋だらけ』で、楽しい空間となっています!