読書日記「レイチェル」
ヒッチコックの映画「鳥」と「レベッカ」で有名なダフネ・デュ・モーリアの作品。お金持ちのお坊ちゃんが、一見清楚で、優しく美しい悪女に騙され、破滅してしまう物語。
作者について
1907年ロンドン生まれ。祖父が高名な作家で画家、父が舞台俳優兼演出家、母が舞台女優という芸術家一家の三人姉妹の次女として生まれる。1931年作家デビュー、1938年の『レベッカ』が世界的なベストセラーとなった。コーンウォールの荒々しい自然を愛し、夫との間に三人の子供をもうけた。1989年没。
-東京創元社より引用-
内容
亡き父に代わり、わたしを育てた従兄アンブローズが、イタリアで結婚し、そして急逝した。わたしは彼の妻だったレイチェルを、顔も知らぬまま恨んだが、彼女に会うやいなや、心を奪われる。財産を相続したら、レイチェルを妻に迎えよう。が、遺された手紙が、その想いに影を落とす……アンブローズは彼女に殺されたのか? 壮麗な庭園を背景に、せめぎあう恋と疑惑。もうひとつの『レベッカ』として世評高い傑作,新訳でここに復活。
-Amazonより引用-
感想
ダフネ・デュ・モーリアの小説は読んでいると絵画を見ているような描写で、頭の中で陰うつなコーンウォールの風景が目に浮かぶようだ。
物語は主人公のフィリップが幼い頃、尊敬できる従兄アンブローズと罪人の話をするところから始まる。今後の出来事を象徴するようなスタートだ。
女性には興味がなく、結婚する気がなかったアンブローズはイタリアで魅力的な従妹レイチェルと出会い、結婚する。フィリップはアンブローズからの手紙によって、彼がいかにレイチェルに夢中になっているかを知る。
ところが、間もなく、アンブローズからはレイチェルに命を狙われている、と不安を訴える手紙や、体調が酷く悪い、という手紙を受け取るようになる。
驚いたフィリップは急ぎフィレンツェへと行き、アンブローズと会おうとするが、彼が亡くなってしまったことや、既にレイチェルが屋敷を出てしまったことを知る。
英国に戻ったフィリップは、レイチェルへの憎しみをつのらせていく。そんな中レイチェルが突如イギリスのフィリップの元へとやって来る。
最初はレイチェルに反感を持っていたフィリップであったが、彼女の美貌と巧みな言葉に、次第に心奪われるようになっていく。デュ・モーリアの卓越した心理描写はそうした、フィリップの心の変化に出ている。
ちくしょうめ!あれが女というものか。わたしはかつてないほど怒り、また、消耗していた。男たちとともに外で働く、刈り入れ時の長い一日。地代の支払いが遅れている小作人との言い合い。解決せねばならない近隣の住民との争い。どれを取っても、陽気な態度を一変させ、急に敵意を見せる女との五分間とは比べものにならない。そしてとどめはいつも涙なのだ。たぶん、見ている者に与えるその効果を充分心得ているのだろう。
これはどういうことだ?ふたりは何をあんなに笑っているのだろう?これも女の特技のひとつだ、と思った。さりげなく冗談を飛ばし、あとに刺すような痛みを残す。
こうして、フィリップはレイチェルにすっかり魅了され、彼を愛する幼なじみのルイーズの言葉にも耳を貸さなくなる。
しかし、物語はフィリップが想像していた方向とは違う方に進んでいき、愛と疑惑のせめぎあいの中、衝撃のエンディングを迎える。
クライマックスへの展開は見事としか言いようがない。まるで映画を見ているような気分になったが、この小説は実際に映画化されている。
もし、世の中の男性がレイチェルのような女性に出会ったら、彼女が悪女だと見抜けるだろうか?私は見抜けないと思う。殺人こそないかもしれないが、多分男性は間違いなく、彼女に全てをささげてボロボロにされるのではないか?と感じた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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