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男性にも実感できる生理に伴う症状の話

 女性の多くが、毎月の生理(月経)に伴ってさまざまな辛い症状を経験している。その具体的な症状は個人差が大きいものの、きっと普段と同じようには過ごせない人が多いのではないかと思う。そして、この症状や毎月の辛さについて、男性に説明することはできても、実感を伴って理解してもらうことは難しいだろうと数年前まで私は思っていた。だって、男性には経験できないもんね。どうしようもない。

 ところが、数年前にある症状を経験して以来、これなら男性にも実感を伴って理解してもらえるのではないか、と思うようになった。男女問わず特定の状況下で起こる症状が、これまで私の経験してきた生理前の症状に酷似していたから。

 そんなわけで、女性の生理前後に起こる症状と、男女問わず起こるある症状について、少し書いてみようと思う。

生理前後に起こる症状について

 まずは、生理の概要について。だいたい月1回、28日前後の周期で訪れる生理は、一度始まると1週間近く続く。その間、出血する。ただし、ドバドバ出血するのは最初の2、3日で、後半の数日間はそんなに大量出血するわけじゃない。これも個人差があるところではあるものの、おおよそこんなところ。

 次に、生理に伴って出血以外に起こる一般的な症状について。これも個人差が大きいものの、生理が始まる前から起こり始め、生理の開始とともに症状が軽くなったり、生理中から終わりにかけて、だんだん症状が軽くなったりする。症状がひどい人は、生理開始日の1週間前や10日前くらいから起こる場合もある。PMS(premenstrual syndrome/月経前症候群)と呼ばれている。

 具体的にどんな症状があるかというと、だいたい次のようなところ。

(1)腹痛
(2)腰痛
(3)頭痛
(4)眠気
(5)食欲増進
(6)吐き気
(7)便秘や下痢などの便通異常
(8)イライラや情緒不安定などの精神症状
(9)胸の張り・痛み

 これが全部起こるわけじゃなく、人によって起こったり起こらなかったり。起こったとしても、その度合いも人によってさまざま。起き上がれないほどの腹痛が起こる人もいれば、我慢できる程度の鈍痛で済む人もいる。また、これ以外に起こる症状もあるかもしれない。

 私の場合でいうと、(4)(3)>(5)>>>(7)(9)(1)くらいの強さの順で起こる。とにかく(4)眠気がひどい。どんなに睡眠時間をたっぷり取ってもおさまらず、耐えがたい眠気。すごく楽しみにしていた映画を見に行って面白く見ていたのに、いつのまにか寝落ちしてしまった、なんてとき、後から考えると生理前のことも多い。最近は(3)頭痛もひどくなった。先日は、1日中起き上がれないほどひどかった。(5)食欲増進は、昔から。生理直前は、やたらとおなかがすく。(7)便秘や下痢などの便通異常は、最近は気にならないレベルになったけれど、昔はひどかった。生理開始の1週間くらい前から便秘がちになり、生理が始まったとたん、今度は下痢になる。そんなサイクル。(9)胸の張り・痛みも似たようなサイクルで、生理開始の1週間から10日前くらいから徐々に張り始め、生理開始後におさまっていく。ブラジャーのカップが1サイズ変わるくらいの張り方。(1)腹痛は、便秘や下痢に伴うものとは別で、子宮まわりの痛み。でも、これはたぶんそんなにひどくない。

 これだけいろいろ書いたけれど、たぶん、私はこれでも症状が軽いほう。最近のひどい頭痛以外、薬を飲もうと思ったこともない。情緒面はいたって安定しているし、ひどい眠気で頭が回らないものの、「普段からぼんやりしているくせに」と突っ込まれたら言い返せない。

 こんなに症状が軽い私でも、月に2、3日はひどい眠気や頭痛に悩まされて鬱陶しいなあと思うわけだから、世の多くの女性たちが、ひと月のうちどれほど大変な思いをしているかと考えると、想像を絶する。だからこそ、男性の皆さんには、その大変さがどれほどのものかを、実感を伴って理解してもらえたら、と思う。

生理前の症状に酷似するある症状

 「男性の皆さんに、これなら理解してもらえるのではないか」と私が数年前に思った、生理前の症状に酷似したある症状というのは、高山病。数年前、富士山に登ったときに起こった。実際には高山病を発症したわけではなく、病院でそう診断されたわけではない。ただ、山小屋の方に、「高山病になりかけている」と言われた。

 8合目だったか、山頂を目指す手前の山小屋でのことだった。昼過ぎに山小屋に到着したあと、そのまま夜中まで宿泊して深夜に山頂へ向けて出発し、山頂でご来光を眺めるスケジュールの山行だった。予定通り山小屋に着いたとき、どうも眠くて、頭痛というほどではないけれど頭が重かった。でも、私にとっては毎月の生理前に起こるどうしようもない眠気や頭の重さに比べたら、まだ軽い部類。なので、たいしたことではないと思っていた。

 そんな状況で、私のことを見た山小屋の人から、高山病になりかけていると言われた。顔色が悪かったらしい。自分では、毎月の生理前のほうがもっとひどいけどな、と思いつつ、まあ大事を取って休んでおこうと横になり、そのまましばらく眠ってしまった。本当は、高山病なら眠ってしまうとまずいはずで、さっさと下山すべきところではあるものの、そのときの私は幸いにも、目覚めたときにはすっかり楽になっていた。

 ただ、このとき体感した症状は、生理前の症状と本当によく似ていた。そしてこれは、考えてみたら体内で似たようなことが起こっているからではないか、と思った。高山病は、空気の薄い高地で、酸素不足により発症する。血液中の酸素濃度が低下することで起こる症状。これに対して、生理前の体内の状況も、結局は酸素不足。生理前、厚くなった子宮内膜に血液が持っていかれることによって体内の血液が不足してしまい、酸欠状態になっているのだろう。

 ネット情報によると、高山病予防薬として使われるアセトゾラミド(商品名:ダイアモックス)は、月経前症候群の治療薬にも使われるらしい。そうなるとますます、生理前の眠気や頭痛と高山病のそれは、同じ機序で起こっているのではないかと思える。

男性も実感を伴って理解できると思うこと

 富士山で高山病になりかけていると言われたときの症状より、私が毎月の生理に伴って経験している症状のほうが、よっぽど重い。しかも、私が周りの女性を見渡したとき、私が経験している生理前の症状は、決して重いものではない。

 こう考えると、高地で頭痛や吐き気などの不快な症状を経験したことのある男性なら、女性が毎月それ以上の辛い身体症状を抱えていると思えば、それがどれほど大変なことか、わかってもらえるのではないかと思う。

 「いや、登山しないからわかんないし」なんて思われた男性の方。日本にいるなら一度くらい富士山に登ってみてもいいんじゃないかと思うし、実感を持って女性のことを理解するためにも、いっぺん富士山くらい登ってみてもいいんじゃないですか、と思う。コロナがおさまってからでいいから。

 富士山頂でも頭痛や眠気、吐き気といった不快な症状が出なければ…そのときはまあ仕方ない。少なくとも女性のことを身をもって理解しようとする姿勢を、私は尊敬すると思う。

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