母影
母影 尾崎世界観
子どものころは形の似た漢字を間違うことがあったような気がする。
たとえば、よく笑い話にもあるけれど、「愛」と「変」とか。
大人からすれば、それはまるい形をした愛であっても、ほんとうはイビツに歪んでいて、子どもから見れば変な形をしたものに見えるのかも知れない。
その子どもからの視点は、鋭利な刃物のような残酷さだ。
尾崎世界観さんは初読みでした。
よくこんなに厳しい話が書けるな、というのが第一印象。
救いがない。
不幸のにおいしかしない。
しかし、だから嫌だとも思わなかった。
それでやっと悲しくなった私は、私たちってかわいそうだねって思った。
母影 / 尾崎世界観
幸不幸は気の持ちようというのは、ある意味正解。
でも、それだけでは片付かないこともある。