藤田伊代著「スピカのこと」「ひとりぼっちの夜の底」Akane/Iyo著「夜空のスピン、夕焼けのスピン」の感想(#文学フリマで買った本の感想 #4)
Iyoさん(藤田伊代さん)は、ひらづみ短編コンテストという短編小説のコンテストで同じお題で入選していたのをきっかけに知り、ツイッター(現X)で相互フォローをさせていただいていました。
コンテストの小説では、優しい文体と独特な視点やユーモアが印象的で、今回の作品もとても読んでいて楽しかったです。
【受賞作発表】ひらづみ短編コンテストvol,1 お題「ひらづみ」
【受賞作発表】ひらづみ短編コンテストvol,2 お題「ゾンビ」
「ひとりぼっちの夜の底」
「ひとりぼっちの夜の底」は、6編からなる短編小説集。
中学、高校、大学という学生生活をテーマにした小説と、社会人のはじめたての時代をテーマにした小説。
いずれもその時期特有の葛藤を登場人物は抱えている。
中でも表題になっている「ひとりぼっちの夜の底」は、仕事がうまくいかず限界を迎えてしまった会社員の話。サラリーマンとして共感の多い感覚と最後にちょっとした救いがあるところが素敵な掌編。
登場人物はそれぞれ異なるのだが、場面が徐々に年齢を重ねた人々の場面になることで、やや私小説的に読んだ。そして、それゆえに描かれる感情が生々しく浮かんだ。
「スピカのこと」
「スピカのこと」は、5編からなるエッセイ集。
本が好き、文章が好き、という心がまっすぐ届くような雰囲気を作品全体に感じた。
1つ目のエッセイの中のこの言葉が胸に残っている。
別のエッセイでは、藤田さんならではのどこか言葉に固執するような文章もおもしろく読んだ。
「夜空のスピン、夕焼けのスピン」
「夜空のスピン、夕焼けのスピン」は、本好きのAkaneさんとIyoさんが本にまつわる写真や文章をたっぷり載せている楽しいZINE。
このまえがきのとおり、全編カラーで写真も多く、読書遍歴やおすすめの本、本の中のごはんで最後の晩餐に食べたいものというエッジの効いた企画まで、本への愛に溢れた1冊。
同じ著者のジャンルの違う3冊。
根底にある本や言葉への偏愛ぶりをたっぷり楽しんだ。