無い物ねだりのメリークリスマス
「目が覚めたら女の子になってますように」
私のサンタさんは、どうやら今年も来なかった。
街の子どもたちは、サンタさんのプレゼントに喜んでいる頃かなあ。
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私には小学校2年生の小さなお友だちがいる。その子のもとに、今年もサンタさんはやってきた。
サンタさん代理のお母さんが言ってた。
その子には子ども用のドレッサーが届く。最近化粧を真似することが多くなって、化粧水とかいろんなグッズが増えてきたから、それらを集約できるようにと。
もう目が覚めて、プレゼントに喜んでいる頃かなあ。よかったね、メリークリスマス。どうか楽しい1日を。
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生まれ持った性別に満足して、その子の興味関心に基づいたプレゼントが届くって、何てうらやましいんだろう。
いや、これは日常生活においてもそうだけど。
その小さなお友だちは「キラピチ」っていう雑誌を愛読してるらしい。
普段着るワンピースやスカートも、自分のファッションセンスで選んでいるらしい。
髪の毛だって、きれいに伸ばして、お母さんに可愛くまとめてもらってる。
ああ、なんてうらやましい。
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私は子どもが大好きだけど、たまにこういう一幕を見ると、大人げなくとてつもない嫉妬心に駆られる。
プリキュアやセーラームーンが見たい。
化粧品で遊びたい。
髪を伸ばして、可愛くまとめて学校に行きたい。
スカートやワンピースが着たい。
「ねえ、みっきー男の子じゃなくて女の子だよ」
なんでそう、私は幼少期に言えなかったんだろう。なんでもっと自分にわがままになれなかったんだろう。なんでもっと女の子として生きたい自分に自信が持てなかったのだろう。
特にこの時期になると、決まってこんな想いが溢れてしまう。
それは26歳になっても、止まることがない。
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まったく、そのお母さんに、小さなお友だちのクリスマスプレゼントのことなんて聞き出さなければよかった。
私は好奇心で話題を切り出してしまって、「ええーいいなあー」と話に盛り上がって、そして帰ってきたら案の定うらやましくなって、悔しくて、1人で勝手に撃沈して。
胸は苦しくて、息は乱れて、涙もこぼして、布団に包まって1人で震えて。
いい加減諦めなって、過去を悔やんだってしょうがないって、そう思える日は果たして来るのだろうか。
そうやって今年も過ぎて行く、無い物ねだりのクリスマス。
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ねえサンタさん、来年のクリスマスこそは、私を女の子にしてね。きっとだよ。
【無い物ねだりのメリークリスマス】