映画「明日へ」
明日へ(2014)原題は「カート」
監督:プ・ジヨン、脚本:キム・ギョンチャン
感想が長くなったのでTwitterでなくnoteへ。
韓国のスーパーのレジ打ち係によるストライキを映画化したものがあると聞いて、絶対見たいと思っていたもの。序盤から涙が止まらなくなってしまった。
迷いながらも、仲間と一緒に立ち上がることを選んだアジュンマたちが本当に誇らしくなる。
映画「明日へ」は、韓国の財閥イーランドグループが傘下のスーパー「ホームエバー」の非正規雇用職員を大量に解雇した実話に基づいている。
考えれば考えるほど、これが実話だというのがものすごいことだな…
(そして例によって、原題「カート」を採用してもらいたかった。謎の邦題「明日へ」だと、何が言いたいんだかさっぱり…)
入社5年でようやく大手スーパーで正社員への昇格が決まったレジ係のソニは、肉体労働で出稼ぎしている夫に代わり、二人の子どもを育てながら必死に働いている。
しかしある日、突然非正規雇用者全員に一方的な解雇通達が下される。
レジ係と清掃係の女性たちは、戸惑いながらも労働組合を作り、会社と闘うことを決める。
団結していくプロセスが描かれる
彼女たちはなんの迷いもなく会社に立ち向かうわけではない。
当然である。
ストライキなんかして、自分たちに不利なことが起こるかもしれない。会社が要求を飲むとも思えない。
自分の生活のことを考えて迷ったり悩んだりしながら、それでもアジュンマたちは、「団結は生、分裂は死」を合言葉に、力を合わせることを選ぶ。
スーパーを占拠している間に、彼女たちの絆が強まっていくのが見る人の胸に響く。
会社から「不法占拠だ」と脅されて建物の電気を落とされても、ろうそくを灯して励まし合う女性たち。
子どもを思い出して涙ぐむ母親の話に、一緒に涙を流す女性たち。
ああ、連帯ってこういうことだ。
これは労働者の闘いであり、女性たちの闘いである。
レジ打ち係の主婦たちを人として見ないで、「処理しろ」と簡単に言ってのける正社員の男性たち。
非正規対正社員の構図はそのままイコール、女性対男性の構図になる。
おじさんたちがアジュンマたちを見下す描写がなんともリアルでムカムカした。しかし、会社の一部として働かざるを得ない正社員の言い分は、
今の私たちが暮らす日本社会でも、おそらく多くの人が思っていること。
「クビになる奴には原因がある。仕事ができないとか、会社に迷惑をかけるとか。」
そう思って、自分は違うと言い聞かせる正社員の姿にも、私たちはどこか悲しい自分たちの社会を感じ取る。
でも彼女たちは生計を立てるために必死で働いているのであって、趣味で小銭を稼いでいるわけでは決してない。
「私たちは人として扱って欲しいだけなんです」
ただそれだけのことが、女性であり非正規労働者だというだけで聞き入れてもらえない。何度も思ったが、これが実話だということがすごいことだ…。
予告編はこちら
チョンウヒちゃん目当てで見たけど、他の脇役も知ってる顔がたくさん。
どんな映画でもお目にかかるイ・ジョンウンし、ヒョンビン作品や太陽の末裔でお馴染みのイ・スンジュンアジョシ、そして息子役にドギョンスくん。
ドギョンス様の主題歌も、高校生なりに闘う演技もとってもよかった…
思春期で笑顔を見せないけどオンマを心配する気持ち、繊細な心の動きがとてもよかった…
スーパーの占拠、機動隊による強制排除、労組幹部の逮捕などは全て実話に基づく。
韓国での彼女たちの呼び名は「アジュンマ組合員」。
ストライキは512日間に及び、体調を崩すものも出てきて組合員の人数は減っていった。
これは実は本当に悪質な話で、イーランドグループが2007年の非正規職保護法の施行直前に非正規雇用職員の大量解雇を決めたというものなのだな…財閥っていうか大規模犯罪グループじゃないか…
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2008-11-19/2008111906_01_0.html
上記リンクの赤旗の記事より、
「労組側は、争議活動を理由に懲戒解雇された二十八人のうち、キム・ギョンウク委員長ら十二人の復職放棄を受け入れました。
キム委員長は、十三日の会見で「五百日も持ちこたえられたのは連帯の力だ」と表明。「非正規職のたたかいは当事者だけでは勝利できない。問題の解決のためには、かならず現場の正規職が共同しなければならない」と語りました。
京郷新聞十四日付社説は、同争議について「韓国労働運動史の里程標になった」と評価。「おばさん労働者の切々とした訴えがなければ、非正規雇用を乱発する社会の恥部が、明らかにはならなかった」と指摘しました。」