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秀吉と家康の天下統一を【武威】による外交から紐解いていく『天下統一 秀吉から家康へ』| 読書日記

こんにちは、みちょブックスです。

コテンラジオ秀吉・家康編の復習に、ラジオ最後でお勧めされていた書籍3冊を順に読みました。本書は『天下人の軍事革新』、『徳川家康 (中世から近世へ)』に続いて3冊目『天下統一 秀吉から家康へ』の読書日記となります。

1冊目、2冊目の読書日記は以下を参照ください。

内容のご紹介

本書の特徴として天下人の【武威】が繰り返し強調されています。
天下一統を掲げた時は、政治支配は決して盤石ではなく、表面上のゆるやかな大名連合にすぎず、あくまで天下統一に向けたスタート地点。天下人はこれまで以上に【武威】をせっせと高めていく必要があったとのこと。

武力行使により悪逆者を討ち、戦国の社会に静謐をもたらすことが天下人の使命であり、その行為はまとめて武威と呼ばれる。豊臣政権にとって正当性の根幹は、なによりも武威にあった。

抵抗勢力には武力によって服属を強制し、社会の静謐を実現することで、天下人の武威を高めていく。秀吉はこの運動を繰り返すことで天下人に昇りつめた。

そうなると【武威】の高揚を止めることができなくなる。日本国内が天下人の【武威】に服している状況では、日本の外である明・朝鮮・琉球に【武威】を向けていく。対外貿易の権益に加えて、日本の王として承認されるために圧力をかけていったとのこと。

この方法に味を占めた天下人は、武威の高揚を止めることができなくなる。なにしろ「天下一統」を果たしたとはいえ、支配基盤は安定していない。見かけ上は服属をしているだけの大名たちとの間に、主従関係をさらに強化していかなくてはならない。そのためには、これまでの延長線上に武威の高揚を続けていく作業が、なによりも重要な政策課題となる。この方向性に沿って、諸大名に軍役として普請を課し、広大な大坂城に高層の天守閣を建て、京の政庁である聚楽第にはふんだんに金箔で装飾をしていった。また、刀狩りによりローカルの武力を規制していけば、集めた金属を使うとの名目で、京の町中に大仏を造る。いずれも、天下人の権威を高めるための政策であった。

ただし、土木工事ではなく、軍事行動によって武威を高揚させるのが、武家勢力の本来の姿である。しかし、見かけの上で日本国内が天下人の威に服している限りでは、武力のベクトルは外側に向けていかざるをえない。日本の外側を足がかりにして、天下人の武威を高めていこうとするのだ。

家康にとって、幕府の支配体制を確立させていくことは、すなわち、名目上の豊臣の政治体制を空洞化させていくことであった。そのためには、諸大名や朝廷などの国内諸勢力への統制だけでなく、外交による権益確保も大きな意味を持った。家康外交での課題は、二つある。一つには、秀吉の獲得した国際関係上の地位である「日本国王」と同等以上の承認を勝ち取ること。そして二つめには、対外交易によって経済的な利益を獲得していくことである。のちの江戸幕府の「鎖国」外交が持つ静的なイメージとは裏腹に、家康の外交は積極的でアグレッシブなものとなる。

このような論理で、本書は【武威】を背景にした明・朝鮮・琉球との外交について詳しく解説しています。これまで秀吉・家康の外交政策は、特に背景までは全然考えたこともなかったのですが、すっと腹に落ちる解説でした。

感想

【武威】による支配では、ひたすら【武威】を高めていく力学が働きやすく、いつかは破綻しちゃう論理に思えました。
((【武威】の世界で生きてきたので、そのゲームの中で勝ち続けていくしか選択肢はなかったんだろうけど)
一方で、現代にも政治や資本主義経済、宇宙進出でも見られる現象であり、停止・交代・脱成長の軟着陸を考えてかないといけないのでは?と、現代社会にも通じるものがありました。

さて、最後に本書の良かった点をまとめると、

  • 著者の主張がしっかりわかりやすく書かれており、歴史上級者でなくても楽しめる。

  • 【武威】による外交という切り口が個人的にも新鮮で学びがあった。

です。コテンラジオ秀吉・家康編とセットで学ぶのは大変おすすめです。

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