大路ミチル

1979年11月20日生まれ。 北海道出身、千葉県在住。 夫と死別し、現在実家で父とふたりで暮らしています。 エッセイを書いています。 家族とか、日頃思うこととかです。

大路ミチル

1979年11月20日生まれ。 北海道出身、千葉県在住。 夫と死別し、現在実家で父とふたりで暮らしています。 エッセイを書いています。 家族とか、日頃思うこととかです。

最近の記事

甘いコーヒーと涙

 2021年11月30日、私の夫は亡くなりました。  彼は50歳の時、多系統萎縮症という病気に罹りました。  小脳や脳幹が縮んでいくその病気は、彼の身体をどんどん動かなくしていきました。  歩くことが出来なくなりました。  手を使うことが出来なくなりました。  起き上がることも、座っていることも出来なくなりました。  排泄も困難になりました。  喋ることも、難しくなりました。  食べることも、出来なくなっていきました。  顔の筋肉も動かなくなり、表情も亡くなりました。

    • シベリア

      「あら、さっきお父さん来たわよ」  ちょくちょく買い物をしていた八百屋のおばさんに、そう言われたのは、私が三十代後半の頃のことである。  私はギョッとして 「な、なんでわかったんですか?」  と恐る恐る聞いた。  それは、私がおばさんに「これが私の父です」などと紹介したことはなかったからで、しかし、こういう人でしょ、と説明するおばさんの言う「お父さん」は、確かにうちの父であることは間違いないようだった。  そして、なんでわかったのか、というその問いに、おばさんは 「だって、ソ

      • 毛糸のクマ

        「2024年11月20日、私は45歳になりました」  エッセイを書いていこうと思いました。  それで私はまず、自己紹介をしようと思ったのです。  しかし、いざしようとしても、私は紹介できるほどの何かを、持っているわけではありません。 「私は45歳になりました。  私には、何もありません」  それ以外、何もなくて、困ってしまいました。  でも自己紹介ナシに、というわけにもいきません。  それで「その何もない」ということを、お話しすることにしました。  少しお付き合いいただけれ