過去の人(変わっていなかった彼)
先週、昔の男に会った。
偶然、学生時代の恋愛が蘇った。
彼との思い出は、未熟だけど、みずみずしく美しく、私の中に残っていた。
立ち話の後、
「この後時間ある?飲みに行かない?」
自然な流れで彼が誘った。
手近なバーに移動してからも、話は弾んだ。
懐かしさで、お互いに気持ちが昂っているのがわかった。
私が好きだった彼のはにかむみたいな笑い顔やその時出来る頬のしわが変わっていなくて嬉しかった。
近況報告や思い出話をしながら、グラスを傾ける彼の手がふと目に入った。
そういえばこの手に触れられ時、いつもすごく優しかった。
私の中に何かが燻ったのがわかった。
お互いに決まった相手はいない。
それだけわかれば、他に理由は要らなかった。
どちらからともなくホテルに向かい、シャワーも浴びずに抱き合った。
お酒の力もあったと思う。
けどそれよりも、大人になってしまった今、共に青春と呼べる時を過ごしたあの頃の自分達を愛おしみたかったのだ。
彼の手が私の身体を撫でる。
首筋から肩、腕、そして胸…全身余すところなく指や掌、時には唇で私を愛しんでくれた。
その手は昔と変わらず、…優しかった。
a.m4:38
私はベットで寝息をたてている彼を残して、一人ホテルを出た。
思い出したのだ。彼と別れた理由を。
性格も良く、趣味も合う。いつも優しかった。
それはベットでも同じで。彼に触れられるのが好きだった。
でも、彼は一旦挿入が始まると物も言わず、ガツガツと腰を振る猿だった。
私を伺うこともなく、ただただ荒い息を吐き射精を目指すガン突きのピストン、猿…。
そして事が済むとすぐに眠るのだ。
賢者タイム。
許してやれと言われるかもしれないが…。
彼の寝顔を横目に見ながら、もちろんイッていない私は悶々とするのだ。
当時の私は彼との行為にずれや不満を感じつつも口には出せず、別れを選んだのだ。
「他に好きな人が出来た」と嘘をついて。
彼は昔と変わらず、優しく、猿だった。
明け方の街を歩きながら、足元に燻った焼けボックリを 蹴飛ばした。