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#116【放送後記】第24回ふりかけラジオ授業は科学なんですか?「反証可能性ってなに?」ポパーの哲学から。

そして9月28日に第24回ふりかけラジオを放送しました。今回の放送はこちらからお聴きいただけます。

今回はカール・ポパーという哲学者(1994年没)。   同志社大学院哲学専攻の河嶋さんととも話ます。反証可能性です。

今日は、「反証主義」ということを言った、カールポパーの哲学です。なぜこんなことを突然私(髙松)が言い出したのか、ということですが。

先日の日本教育心理学会(浜松)でタカマツが参加したのが、学習科学を授業でどう生かせるのか、というシンポジウムでした。ここ20年くらいにでてきた学問領域ですが、簡単に言うと、ひとはどう学ぶのかということです。それまでの研究は、どのように教えれば効果があるのか、でした。それを180度転換して、学ぶ側に焦点をあてたということで、ある意味でコペルニクス的転回です。

そこでは文化人類学やら語用論・社会学・談話研究などあらゆる分野の研究方法が採用されては検討されています。そこで考えるのは、一体、教育、とくに学校でフォーマルに実施している、授業の研究ははたして科学になりうるのか?という問題です。

 なぜなら、学習指導案を書いて、実践してもそのとおりにいきませんし、その指導案を他の教室で行って通用するかというとかならずしもそうではない。とするなら、その指導案の論理が、仮に科学的である、としてもその科学的な部分、それが通用しない状況的依存性があるのだから、結局、科学的ではないということになるないのか。これが一つです。

もう一つは、そうすると、さて、科学とはなにかということです


《資料1 としてあげましょう。》
   サー・カール・ライムント・ポパー(Sir Karl Raimund Popper, CH FRS FBA、1902年7月28日 - 1994年9月17日)は、オーストリア出身のイギリスの哲学者。    純粋な科学的言説の必要条件として反証可能性を提起し、    フロイトの精神分析やアドラーの個人心理学、マルクス主義の歴史理論、人種主義的な歴史解釈を疑似科学を伴った理論として批判

なるほど、神は反証できませんし宗教もですね、ではいったい、科学とはなにか、という議論が今日のテーマです。

《資料2》
反証主義の背景には、ヒューム的な見解、すなわち、或る理論を肯定する事例はその理論を立証することにはならない、という考え方がある。科学の進歩は、或る理論にたいする肯定的な事例が蓄積してこれを反証不可能たらしめてゆくところで起こるのではなく、否定的な事例が反証した或る理論を別の新しい理論がとって代えるところで起こる、というのがポパーの科学観の背景的な見解としてある

言い換えると、肯定的事実をいくら積み上げてもだめってことです。それは肯定を肯定するいだけで、自己正当化でしかない。いいかえると、古代ギリシャのソフィストのとった詭弁にも似ている。

それより、ではこれってどうなんだよ、といわれて、その反証に耐えるだけの壁があるのが科学となる。そして科学は進歩します。

そなると心理学、とくにユングやフロイトの精神分析なんて、反証できそうにないですね。この辺は河合隼雄さんもいってます。「こころも客観的に研究できるかどうか」。物理学は客観的に考えて普遍性を持つ。心理学も一部実験においてはそうかもしれない。しかし現実に生きている人間にとっては、それがすべて当てはまっても実は本人の悩みの解決にはならない。そこで臨床心理学が出てくる。科学的であることに重心を置いていた1970年代にいては、このあたり河合先生も当時は悩んでいたものと思います。

さて、ふりかえって、教育は科学なのか。じつは学習科学という分野が1990年から台頭してきた。これは反証しつつ科学にしてきている。今までの研究方法との最大の違いは、学習を教授ではなく学ぶ側においた点。さらにフォーマルが学びの場である学校の授業の参与観察に研究者が入り、その事実から研究をしてりる、とう2点。

問題は、学習科学の知見を授業というなかで活用するとき、その授業にはひとつひとつ、千差万別の状況があるということ。その差異を尊重しつつ、かつどこかに余白をのこしつつ、科学にしていかなくてはならない。しかしこれこそいままで研究者が回避してきた部分であるし、教師のもっとも重要な役割が隠されている部分だろう。



https://www.youtube.com/watch?v=ys6UTyobEXs&t=56s


(ここに本文)


「ふりかけラジオ」は隔週(毎月第2・4)土曜日の21時30分から、FM805たんばに乗せてお届けしています。
次回は、2024年10月12日の21時30分からの放送です。
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それでは、また次回の放送でお会いしましょう。おやすみなさい。