「先生が怖いから始まった」母子登校のケース③:支援開始からの分析(子どもの性格傾向)
(小学校1年生、教室まで付き添う形の母子登校、Aくんのケース)
私の支援では、親御さんとの電話カウンセリングと親子間の会話を書き出したものを元に分析を始めるところからスタートします。
ご家庭で親御さんがどのような対応をされているのか、それに対してお子さんがどのような反応を見せるのか現状把握をします。
そして、その中からお子さんの性格傾向や親御さんの対応の傾向などを分析します。
電話カウンセリングだけだと、親御さんの主観が入り正確な分析がしにくくなることがあります。ですので、親子間の会話でよりリアルな家庭内でのやり取りを見ながら分析をすすめます。
Aくんの場合、支援の中で見えてきた性格傾向として以下のものがありました。
・親に対する依頼心が強い
何か困ったことや分からないことがあると、すぐに「ママ~!」とお母さんを頼りにすることが多くみられました。
・我慢力が低い
兄弟姉妹がいないこともあり、Aくんは家庭内で割と自分の都合を親御さんに聞いてもらえる状態が多かったようです。それもあって我慢しなければいけない状態というのが少なかったのでしょう。
・自分の思い通りにいかないと癇癪を起す
我慢力が低いの部分とも共通する点ですが、Aくんは自分の思い通りにならないと癇癪を起し親御さんをよく困らせていたようです。その結果、親が折れるという状態も多くなっていました。
・「はい」「いいえ」以外で答える質問に対して答え難い傾向がある
「これってどう思った?」など具体的に内容を聞くような質問に対して答えることが苦手でした。その為、親御さんからは「はい」「いいえ」で答えられるような質問に変換されることが多かったようです。
・新しい環境や人に対して苦手意識が強い
始めていく場所・初めて会う人に対して慣れるのに時間がかかるタイプでした。その為、新しいところに家族で出かける際はAくんの反発も強く出ていたようです。
・嫌なことから逃げる選択をしがち
習い事などで上手くいかない、練習ができていない時などは先生に叱られるのが嫌という理由から習い事に行くのを嫌がることが増えていました。それだけでなく、学校の宿題などやらなければいけないことを後回しにしてしまうことが多く、結果的にやれなかったということが多くみられました。
・自分の気持ちや考えを伝えるのが苦手
お友達との間で我慢することが多く、自分の気持ちや考えなどを自分の口で説明するということを極端に苦手に感じていました。
・ネガティブなことに目が向きがち
何か嫌なこと・不安なことに注目しやすい傾向がありました。何をするにしても例えその際に嬉しいこと・楽しいことがあっても嫌なこと・不安なこと等ネガティブなことが残りやすいようでした。
これまでの支援の中でも、こういった傾向のお子さんは不登校や母子登校を経験している子どもに多いのは事実です。そして、すべてとは言いませんが、その傾向が強いお子さんは記憶力がいいことも多いです。
ここに挙げたのはあくまでも一例ではありますが、これらの傾向がみられると学校という社会で生活していくのはしんどいだろうなと安易に想像されます。
Aくん自身、周りのお友達と比べて何かが劣っているという話ではなく、苦手なことが顕著に表れたと捉えられます。
実際、お友達と学校以外の場所でもよく遊んでいますし、友達関係のコミュニケーションに問題があるわけでもありませんでした。
持っているポテンシャルは悪くなく、むしろ長けているところもあるのですが、苦手な部分が顕著に表れている状態ではAくんが得意な部分も上手く活かせない状態になってしまっていたようです。
人間誰しも苦手なこと、不得意なことはあります。
それらを好き・得意にすることができればいいですが、恐らく並大抵のことではありませんので、そこを目指すのではなく、工夫次第で苦手なこと・不得意なことが「できる」という形にできればいいと考えています。
工夫次第と申しましたように、やり方次第でなんとでもなることはあります。そのやり方をAくん自身が導き出せるようになれば、親御さんがいない状態でも何かあったときに自分で対処できるようにもなっていくでしょう。
そういう状態になれば、Aくんも今のように学校に対して「怖い」「嫌い」という感情を抱きにくいと思われます。