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#短編小説

拾われた猫

拾われた猫

男は人を殺し、山へと逃亡していた。しかし山籠りの食料を探している途中、足を踏み外し崖下に転がり落ち、気を失った。
そして、気づいたら猫になっていた。
近くに人間であった自分の遺体は見当たらない。
夢なのか、それとも魂が野良猫にでも乗り移ったのか。。。

まぁ、猫として気ままに生きていくのも良いだろう。
そう考ポジティブに考え歩き出した。

少しすると雨がポツポツと降り始め次第に大粒へと代わり、やが

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旅立ち

旅立ち

「〜駅〜まもなく列車が到着しま〜す。」
ホームの天井に取り付けられている蜘蛛の巣の張ったスピーカーからノイズ混じりにアナウンスが流れた。

 正直なところ、出張先でのよく分からない読み方の漢字を使った土地の駅名なんてどうでも良いし、駅員のアナウンスはなんて言ってるのかイマイチ聞き取れない。なんならイマドキの記憶に残るチャーミングな駅名でも付ければ良いものを。
ハイボールを片手にYは、何かを忘れる為

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キセツ。 第2話

キセツ。 第2話

ある日の昼頃、かっちりとしたスーツを身に纏った中年男性がナースセンターを訪れた。

男性は、安藤の病室を窓口で聞いたが、安藤は特別病棟患者の為、誰でも会えるわけでは無く、白石に確認の連絡が入った。
安藤には家族や、見舞いに来る知り合いがいない事を知っていた白石は少し不信感を抱いた。

「安藤さんの担当をしています。白石です。安藤さんとお知り合いの方ですか?」

「あ、知り合いじゃありません。あ、名

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キセツ。第1話

キセツ。第1話

第一章 

安藤は、迷っている。
しかし、道に迷っているわけではないし、新宿駅構内で迷ってるわけでもない。

ただ、途方もない寂しさを紛らわす為にこの季節をどう過ごすかを迷っているのである。

何時間か経ち、何を考えているのかさえ忘れた頃
ちょうど、風が吹き込みカーテンがゆらいだ。

カーテンの隙間から刺す暖かいオレンジに少々目を細め

「あぁ、もう夕方か。」と独り言をつぶやいた。

そこにちょう

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