[万葉]for your finely woven pillow (巻2.220)
大和歌を英訳で読むマガジン(5) の第1回は万葉集巻2の220番の歌です。
……名ぐはし 狭岑島の 荒磯面に 廬りて見れば 波の音の 茂き浜辺を 敷妙の 枕になして 荒床に 自伏す君が 家知らば 行きても告げむ 妻知らば 来も問はましを……
……名が美しい狭岑島の、荒い磯に仮の宿となる小屋を作って見ると、波の音がしきりに響く浜辺を敷妙の枕にして、荒い石を寝床に、寝ているあなたの、家が分かれば行って知らせてあげよう、妻が知っていたらたずねて来るだろうに…… (英語万葉集)
リービ英雄氏によれば〈柿本人麿の、日本の内外を問わず傑作の一つだと評価されている長歌〉です。聖徳太子がひらいた行路死人の歌の型がこの歌にまで達したこと、それがスリルをおぼえさせ、本物の感動に変わるとリービ氏はいいます。氏にそこまで言わしめる何がこの歌にあるのでしょうか。氏の英訳などを通してこの歌をながめてみます。
目次
読み下し文
英訳
解釈
リービ氏の視点
敷妙
日本学術振興会訳 (長歌)
*
【マガジンの案内】
名称:大和歌を英語で読む(5)
内容:大和歌を英訳で読んでゆく。最初は万葉集
分量:1マガジンあたり最低5本を収録(予定)
価格:1マガジンが1,000円。個別の記事の分売もします
方法:詩学(poetics)的関心から、日英の詩のことばを比較
既刊:大和歌を英語で読む(1) 大和歌を英語で読む(2) 大和歌を英語で読む(3) 大和歌を英語で読む(4)
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■ 参考文献 ([]内は本稿での略称)
[万葉集注釈等]
・山田孝雄『万葉集講義』、宝文館、1928-37[講義]
・窪田空穂『万葉集評釈』、東京堂、1943-52[窪田評釈]
・高木・五味・大野『日本古典文學大系 萬葉集』、岩波書店、1957[古典大系]
・青木・井手・伊藤・清水・橋本『新潮日本古典集成〈新装版〉萬葉集』、新潮社、1976[古典集成]
・伊藤博『萬葉集釋注』、集英社文庫、2005[釋注]
・伊藤博『新版 万葉集』、角川学芸出版、2009[新版万葉集]
・中西進『万葉集 全訳注原文付』、講談社、1983[全訳注]
・中西進『万葉集事典』、講談社、1985[事典]
・中西進『古代史で楽しむ万葉集』、角川学芸出版、2010[古代史]
[古語辞典]
・大野・佐竹・前田『岩波古語辞典 補訂版』、岩波書店、1990[岩波古語]
・秋山・渡辺『詳説古語辞典』、三省堂、2000 [詳説古語]
・中村幸弘『ベネッセ 全訳古語辞典 改訂版』、ベネッセコーポレーション、2007 [ベネッセ]
・大野晋『古典基礎語辞典』、角川学芸出版、2011[基礎語]
・宮腰・石井・小田 『旺文社 全訳古語辞典 第四版』、旺文社、2011 [旺文社]
[万葉関連書等]
・坂本太郎・家永三郎・井上光貞・大野 晋校注『日本古典文学大系新装版日本書紀 下』(岩波書店、1994)
・島津忠夫『新版 百人一首』、角川書店、1999 [新版百人一首]
・リービ英雄『英語で読む万葉集』、岩波新書、2004[英語万葉集]
・万葉神事語辞典 、國學院大學、2009
・ピーター・J. マクミラン『英語で読む百人一首』、文藝春秋、2017
[英文著作]
・Kenneth Rexroth, 'One Hundred Poems from the Japanese', 1955
・Nippon Gakujutsu Shinkokai, 'The Manyoshu', Columbia UP, 1965
・Ian Hideo Levy, 'Hitomaro and the Birth of Japanese Lyricism', Princeton UP, 1984
・Janine Beichman, 『対訳・折々のうた』(大岡 信・著) (講談社インターナショナル、2002) [as cited at Oriori no Uta: Poems for All Seasons]
・Geoffrey Bownas, 'The Penguin Book of Japanese Verse', Penguin Classics, 2009
・Anne Commons, 'Hitomaro: Poet as God', Brill, 2009
・T. E. McAuley, 'An Anthology of Classical Japanese Poetry', www.wakapoetry.net, 2016
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