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備忘録『注文の多い料理小説集』

『注文の多い料理小説集』
柚木麻子、伊吹有喜、井上荒野、
坂井希久子、中村航、
深緑野分、柴田よしき:著

■p056〜いちごの手仕舞い、ヴァレニエを煮る、ブロッコリーのオリーブオイル漬け…

■p063…集まって沢になる。その過程で水が磨かれるんだ

―水が磨かれる…!
―食べ物や、自然の描写にうっとりする。いちごが登場するからというのもあるけど、『西の魔女が死んだ』梨木香歩:著、を連想した。(学校になじめない主人公、斜めのつながりの大人との交流を通じて感情が豊かに、視界が広がっていく物語。)

■p061…スマホって便利だね、とつぶやきながら…

―拓実さんの言葉。言葉とは逆に「これまで特にスマホを持つことのメリットを感じたことなかったが。」という含みがあるような感じ。

.................…短編ごとの感想………………..

📕007『エルゴと不倫鮨』
柚木麻子さんぽい作品…

母像、女性性と若さ、食べること、生物としての女性らしさ、男性らしさ。
彼らの舞台は雑誌の『東京カレンダー』の世界観のような。

📗035『夏も近づく』

伊吹有喜さんの作品は切ない。食べ物、感情の交流、自然、時間性とか全部の描写がバランスして物語を包んでいる感じが美しくて好き。

📘079『好好軒の犬』

井上荒野さん、純文学〜という感じ。昏さ。丁寧な和食とそのイメージに合う夫婦の描写は古風だけど、幼稚園や子供の描写が挿し込まれてるところを読むと、現代の家族だ、と我に返る感じ。ひやりとする。

📙101『色にいでにけり』

坂井希久子さん
和菓子の美しさと色彩の話は、和菓子作りの体験をしたとき、色合わせや形を整えるのが大変で楽しかったことを思い出した。創造することのすごさ、自分で体験してようやく気づく私。

📖149『味のわからない男』

中村航さん
昔、宮部みゆきの短編で、食べ物すべてゴミの味?がするようになった味障害の人の話を思い出した…そちらの方が怖かった。(『我らが隣人の犯罪』のうちの一編。)

📕191『福神漬』

深緑野分さん
昔の庶民の食生活は、食を楽しむ余裕はなく本当にその日を生きるための摂取なんだ、「食べること」の本来の側面の1つを改めて思う。

📗209『どっしりふわふわ』

柴田よしきさん
飲食業を生業にすること、や人間同士の交わりについて。料理人になることやお店を持つことの話も、実際にシェフをされている方の話を聞いた時のことを反芻しながら読んだ。

ヒロの想いも、主人公のヒロへの愛と思い遣りが、パン作りの想いが素敵すぎて、こんな展開ありなのー?という終わりでした。

現実ならこの2人の「物語」はこのあとも続くけど、しなやかに2人で歩んでいけると、信じたいし祈っている。

あー、素敵なものがたりたち。食べるという行為、食べるときの情景。誰とどんな状況で食べているか。何をどうたべているか。しぐさ。
いろいろな想像をすることが、たのしい。読めてよかった。

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