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【読書感想】情報を正しく選択するための認知バイアス事典/情報文化研究所
「情報を正しく選択するための認知バイアス事典」こちらの本、読みました。
認知バイアスに関する本は「サクッとわかる ビジネス教養 認知バイアス」「イラストでサクッとわかる! 認知バイアス」に続いて3冊目です。
本の内容
まずはAmazonから本の内容を抜粋します。
■認知バイアスに分類される用語は数百以上存在しますが、
意味や用法が曖昧であったり、重複しているものも多いものです。
そこで論理学・認知科学・社会心理学3つの専門分野それぞれで必要不可欠な20項目を厳選し、
合計60項目にまとめ、図版やイラストを交えて解説しています。
こんな感じの本です。
1つのバイアスに対して4ページ使って解説されています。
「4ページ × 60バイアス」なので、なかなかのボリュームでした。
少し堅い文章にも感じましたが、自分としては認知バイアスの本は3冊目なので割とすんなり読めました。
また、1冊目2冊目が入門的な本だったので、3冊目の本書はそれより読み応えがあって良かったです。
著者情報
本書の著者情報はちょっと独特です。
Amazonに載っている著者情報が分かりやすかったため、そちらを引用します。
著者 情報文化研究所(山﨑紗紀子/宮代こずゑ/菊池由希子)
「情報文化論および関連諸領域に関する研究の推進と交流」を目的として1996年に発足した情報文化研究会を基盤に2018年に設立。
新進気鋭の研究者や多彩な分野で活躍している社会人も幅広く所属し、活発な議論や提言を行っている。
所長は、高橋昌一郎。
本書を執筆した情報文化研究所所属の研究者3人の現職と研究テーマは、次のとおりである。
山﨑紗紀子(第I部執筆)
東京医療保健大学非常勤講師。
専門は哲学、論理学。
人間が普段行っている何気ない推論の形式化や、形式体系そのものの仕組みに関心がある。
宮代こずゑ(第II部執筆)
宇都宮大学共同教育学部助教。
専門は認知科学、認知心理学。
音声や文字など、言語を表現するための物理的な媒体が持つ感性情報の処理や、
またそれらと言語情報処理とのかかわりに関心がある。
菊池由希子(第III部執筆)
長野県林業大学校非常勤講師。
専門は社会心理学。
職場などの日常的な場面において、本人や周囲の人々のストレスを最小限に抑える対処方法(ストレスコーピング)や、
方法ごとの効果の差を検討することを研究テーマとしている。
監修者 高橋昌一郎
1959年生まれ。國學院大學教授。
専門は、論理学・科学哲学。
主要著書に『理性の限界』『知性の限界』『感性の限界』『フォン・ノイマンの哲学』『ゲーデルの哲学』(以上、講談社現代新書)、
『20世紀論争史』『自己分析論』『反オカルト論』(以上、光文社新書)、『愛の論理学』(角川新書)、『東大生の論理』(ちくま新書)、
『小林秀雄の哲学』( 朝日新書)、『哲学ディベート』( N H Kブックス)、
『ノイマン・ゲーデル・チューリング』( 筑摩選書)、『科学哲学のすすめ』(丸善)などがある。
情報文化研究所所長、Japan Sk eptics副会長。
第I部、第II部、第III部をそれぞれ別の人が執筆しています。
そして全体をまとめているのが監修者の高橋昌一郎さん、という感じのようです。
いくつか引用と感想
希望的観測と絶望的観測
希望的観測が存在することを踏まえると、絶望的観測(好ましくない結果が起きることを想像して、過度に絶望してしまうこと)も同様に存在すると考えられるだろう。
希望的観測から物事を始められる人というのは、仮に失敗してしまっても、「また新たに挑戦しよう!」と気持ちを切り替えやすいものだ。しかし、絶望的観測の傾向が強い人は、失敗しない代わりに挑戦もしない。
ビジネスシーンで考えた場合、どちらの傾向の人と仕事をしたいと感じるだろう。たとえ「根拠のない自信」であっても、それを持っている人と持っていない人とでは、印象はガラリと変わるはずだ。
本書では「希望的観測」の詳しい説明があったうえでの「絶望的観測」です。
ただ、全てを引用すると長くなりすぎてしまうので「希望的観測」の部分は割愛しました。
個人的にピックアップしたかった「絶望的観測」のみを引用しています。
「希望的観測」を割愛する代わりに、補足となるような参考サイトをリンクしておきます。
今回引用した内容を読んだ時に、どちらかといえば希望的観測の傾向が強い人と仕事をしたいなと思いました。
あくまで”傾向”が強い人なので、希望的観測ばかりの人だと心配になったりもしそうです。
そして絶望的観測ばかりの人だと士気が下がる気もします。
結局はどちらも持ち合わせつつ、基本は希望的観測で動ける人が良いかなと思いました。
なんだかポジティブ・ネガティブと言い換えても問題なさそうな気もしましたが、"絶望的観測"というワードは初めて聞いた気がしたので引用してみました。
疑似相関
アイスクリームと溺水事故
「アイスクリームの売上が上がると、プールでの溺水事故件数も増える」というデータがあったとしよう。これをどのように解釈すべきだろうか?
アイスクリームを食べると水に溺れやすくなる? それとも、溺れて救助された人はその後アイスクリームが食べたくなる?
これは、2つの事象(①アイスクリームの売上増加、②プールでの漏水事故件数増加)の間に因果関係があるように解釈した例である。しかし①と②が同時に起きているからといって、必ずしも因果関係があるわけではない。
潜伏変数を見つけ出そう
上記の例は、目に見えている2つの事象以外に目を向けなければならない。①と②それぞれに影響を与えている、隠された要因として「気温」が挙げられる。気温が高くなると、アイスクリームがよく売れる。気温が高くなると、プールに出かける人が増える(その結果として漏水事故件数も普段より増加する)。
気がついてしまえば単純な話だが、アイスクリームの売上と漏水事故件数だけに目を奪われていると、2つの間に直接の関係性(相関)があるように見えてしまう。これを指して、擬似相関と呼ぶ。
したがって、2つの事象間の関連について考えるときは、常に「気温」のような3つ目の変数が存在していないかに留意しなければならない。このような変数を、潜伏変数(あるいは第3の変数、交絡変数)と呼ぶ。
「アイスクリームと溺水事故」の件は、疑似相関の話でよく見かける事例です。
この事例は分かりやすいので、疑似相関であることに気付きやすく、潜伏変数も見つけ出しやすいはず。
ただ、疑似相関の色々な事例を見ていくと、意外と潜伏変数を簡単に見つけられなかったりします。
せっかくなので、疑似相関の事例を扱いつつ解説しているページをいくつかリンクしておきます。
潜伏変数を簡単に見つけ出せる事例もあれば、意外と見つけ出せない事例もあったりするかなと思います。
また、疑似相関の引用を読んだ後なので気付きやすくなっている可能性もありそうです。
時間が経って疑似相関の記憶が薄れた頃にデータを見て、「疑似相関かもしれない」といった疑問を向けることができるかがポイントになってくるかなと思います。
「疑似相関」に関して、もう1つ引用してみます。
数字とうまくつきあう
私たちはよく、数字に振り回され、惑わされる。
さまざまなメディア、本、広告の中に、「統計によれば・・・」という文言が散見されるが、私たちはそれがどのようなデータに基づいていて、どのように解釈されたものかに注意を払う必要がある。ここで見てきたとおり、同一のデータからまったく異なる解釈を導き出すことも可能なのだから。
1つ前の引用が「疑似相関」の具体的な説明で、今回の引用が「疑似相関」とどう向き合うか的な内容です。
疑似相関を見抜くには、注意を払うしかないのかもしれません。
ただそもそも、疑似相関を見抜く必要がある状況が自分の日常ではそんなにない気もします。
仕事でデータを扱う時に、注意を払うくらいでしょうか。
また、データを基にした説明を受けた時に疑似相関のようなトリックに騙されないように注意するくらいでしょうか。
そもそもそこまで込み入ったデータでやり取りすること自体、自分は少ない気もします。
ただ、データを真に受けて疑うこともしないスタンスだと少し危なっかしい感じもします。
データの解釈を疑ってみたり、違和を感じ取ったりするスタンスを持つことが大切なのかなと思いました。
気分一致効果
気分一致効果からは逃れられないのか
もしも人が皆、落ち込みのループを避けられないのだとしたら、人生はとてもつらいものとなるだろう。しかし、そうしたネガティブな気分を和らげる現象として、気分不一致効果というものも知られている。
これは、ネガティブな気分になったとき、過去の楽しい経験について思い出すことを指す。
このことから、人は嫌なことがあっても、どうにか不快な気分を緩和し、積極的に気分を切り替えることで、日々を過ごしているということが示される。これを裏づけるように、ネガティブ方向への気分一致効果は、ポジティブ方向よりも比較的生じにくいということも諸研究から明らかになっている。
ただし、自分が落ち込んでいる自覚があれば、より意識的に「気分の切り替え」を行うためにも、友人に電話したり、家族に自分の失敗を笑い話として話したり、あるいは自分の好きなことをして静かに過ごしたりといった気分転換を早めに行い、落ち込みループを未然に防ぎたい。
気分一致効果に関しては以前の記事でも引用しています。
【読書感想】イラストでサクッとわかる! 認知バイアス - 気分一致効果:へこんだときはイヤなことを思い出す
気分一致効果の詳しい説明は上記リンクの引用にお任せして、本書で個人的にピックアップしたかった「気分不一致効果」の部分のみを引用してみました。
これまで認知バイアスの本を何冊か読んだのですが、バイアスの説明のみに終始していることが割とありました。
なのでちょっと物足りなさを感じていました。
今回引用した内容は説明のみに終始せず、一歩踏み込んだ感じがあります。
気分一致効果を説明したうえで、「どう向き合うか」といったところまで踏み込んでいる感じです。
本書は全体的にその傾向があり、読後感が良かったのはそのためかなと思います。
上記リンクの引用の感想では、「なるべく明るい気分をキープするように意識する」といった内容を書きました。
書いておいてなんですが、元がネガティブなこともあって、それってなかなか難しいんですよね。
落ち込みを早めに察知し、今回の引用にあるように気分転換を早めに行う方がリアリティのある対策に感じました。
モラル信任効果
あんな立派な人がなぜ?
何か大きな事件が起きたとき、容疑者をよく知る人物がインタビューに答えることがある。その中で「まさかあんなに立派な人が」とか「奉仕活動に積極的な人なのに」などとコメントされているのを聞いたことがあるのではないだろうか?
福祉活動に熱心だったり、社会貢献に注力している企業の役員だったり、社会の役に立つような活動で有名だったり・・・そのような人が犯罪や、倫理的に良くないことをしてしまうのは珍しくない。その要因の1つとして、「当事者による思い込み」から生じるバイアスが挙げられる。
このバイアスでは、まるで免罪符を持っているかのように錯覚してしまう。つまり、自らが立派であること、社会の役に立っていることを認識しているがゆえに、「これだけ素晴らしいのだから、多少倫理に反するようなことを行ったとしても許されるだろう」と無意識のうちに考える。これをモラル信任効果という(Monin and Miller, 2001)。
「あんな立派な人がなぜ?」と思ったことは、身近な人であったりニュースであったりで感じたことがある人も多いのではないでしょうか。
良いことを1つしたのだから、それと同じくらいの悪いことを1つしても大丈夫と思ってしまう。
これはなんだか変な論理展開ではあるものの、陥ってしまいやすいロジックな気もします。
悪いことなんてしなきゃいいのに、なぜか良いことと悪いことの天秤があって、「このくらいなら…」と思ってしまう。
自分はさすがに倫理に反することをしていないはずですが、この「モラル信任効果」が生じてしまうことには不思議と納得感があります。
「モラル信任効果」に関して、もう1つ引用してみます。
謙虚でいることが一番の対策
モラル信任効果は、特別に選ばれた人だけではなく、普通の人、日常の生活の中でも生じる可能性があることは先述したとおりだ。
自分はボランティアをして社会の役に立っているので短時間の路上駐車をしても許されるなど、自分が社会的な貢献をしていることを理由に、関係のないところでのささいな不正が許されると錯覚するのである。
犯罪や自分以外の誰かを傷つける可能性があるモラルに反した行いが頭によぎったとき、「このくらいなら許されるだろう」という自分の甘えに気づき、自らを律することができるかどうかが重要といえる。
また、そのような振る舞いを諌めてくれる人が存在したとき、ありがたいと思えるか、思えないかで、その人の生き方も大きく変わってくるだろう。
1つ前の引用が「モラル信任効果」の説明で、今回の引用が「モラル信任効果」の対策となるような内容です。
モラル信任効果が生じないようにするにはどうすればいいか、何か良い対策があるのか気になりながら読んでいたのですが、「謙虚でいること」が一番の対策とのこと。
なんともシンプルな対策ですが、これしかない感じもします。
そして意外と難しいことでもあるのかなと。
おわりに
ということで「情報を正しく選択するための認知バイアス事典」に関してアレコレ書いてみました。
今回の記事で引用したのは、
希望的観測と絶望的観測
疑似相関
気分一致効果
モラル信任効果
の4つでした。
本書が面白かったので関連書籍で何かないか探してみたところ、同じシリーズでもう1冊出ているようでした。
今回の本
「論理学」「認知科学」「社会心理学」3つの専門分野からのアプローチ以下の本
「行動経済学」「統計学」「情報学」3つの専門分野からのアプローチ
のようです。
上記の本も面白そうなので、いずれ読んでみようと思います。
著者は異なるようですが、監修者は同じようなので面白さは期待できそうだなと。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
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