病気と治療。医者と患者。そして「死にたい」。
(『神田橋條治 医学部講義』神田橋條治著、黒木俊秀・かしまえりこ編、創元社:pp.203-204、p.264、p.283より抜粋引用)
病気になるときは、あんまり徐々にならん、割に急速に病気になる。そしてそこから自然治癒で戻っていくわけです。どこに戻っていくかと言うと、その人の命の本来の流れに戻る。戻るまでが病です。治療はせずにな。本来の流れの終点は死だから終点に近いところに戻ったり、とうとう戻れなかったりすると死んでしまう。
風邪を引いたとか、お腹をこわしたとか、ほとんどのものはこれで戻っていく。そしてこの経過は自然経過です。すべての病気はそれぞれに特有の自然経過があって、その自然経過を把握して、それを少しでも応援するのが、本当の治療です。
病を消すとか、病の状態を持ち上げるとかいうのではなくて、自分でなんとかして持ち上げていこうとする生体の営みに対して、少しでもよさそうなことをしてみようというのが治療なんです。それが、本当に中心となる治療です。
「あなたが『死にたい』と言っていたのは、本当は『安らぎたい』ということの言葉の使い方の問題だったんでしょうね」と、「ともかく、安らかになりたい。安らかになることの究極は死ぬことだというので、『死にたい』と感じていたのよね」と、そこから安らぐ方法について考える、安らぐ方法を工夫するというふうに行くわけです。
困っている人を悩む人にするのが精神療法なの。
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