男らしさの呪いも、消えてなくなればいいと思う。
自分のご機嫌を良くしようじゃないかと『女の機嫌の直し方』という本を読み返してみて、それより男の人って大変だよねと思った話。
『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』も話題になったので、ご存じの方も多いと思う。
人工知能研究者だった著者が、男性脳と女性脳の情報処理パターンの違いから、その現象を、身近なイメージしやすい場面をあげてひもとく大変面白い本である。
男性が選択しがちなパターンと、女性が選択しがちなパターンは異なるので、すれ違いがちだが、どちらも合理性があるわけだ。
どちらかの正当性にこだわるより、そういうものだと理解した方が建設的だと私も思う。その上で、お互いご機嫌ならば、尚良いではないですか。
そう思って読み終わって、まだ読んでない『妻のトリセツ』のレビューを見に行って、びっくりしてしまった。「女の機嫌をとれってことなのか!」といったような、かなり怒りがちなご意見も目に入ったのだ。(全体からしたらほんの少しと思うけど)
わざわざ『妻のトリセツ』というタイトルの本を手にとって、怒りのレビュー???
というのに、興味をひかれ、なんだかその方々のことを、嫌だなと思いつつ、心配になってしまったのだ。
それで今度は海原純子先生の『男はなぜこんなに苦しいのか』を思い出してみた。
心療内科医のもとに訪れる不調を抱えた男性達の、激しい「限界感」に危機感を覚えた著者による、ストレス性疾患についての本。数々の男性の相談事例を紹介しつつ、語り口や優しいながらも論理的に解説されていて、とても分かりやすい。「限界」の男性が少しでも救われると良いと思う。
そう、大変勝手ながら、『妻のトリセツ』に憤ってしまう男性を、「男らしさ」の呪いに縛られながら誰にも機嫌などとってもらえない苦しみ抱えた人と妄想してしまったのだ。ただえさえ「男らしさ」の呪いが辛いのに、「妻のトリセツ」まで盛られたら、たまったもんじゃないよね。
誰もあなたにそうしろって、呪ってるわけではないんだけど。
そう思うと、本当に気の毒だ。例えば、西野カナ「トリセツ」は、女の私だって「めんどくさっ」って思ったよ。めんどくさいって、感じていいと思いますよ。
その一方で、それをめんどくさがると、残念ながら、女性が選択しがちな情報処理パターンとは、かみ合わなくなりがちですよ、とも率直に思うけどそれはそれ。
それでいいなら、それでいいんですよ。例えば『男はなぜこんなに苦しいのか』の本に、独身一人暮らし男性の死亡リスクは高いけど、有意に根拠があるのは「果物をとっているか」と「気楽に話せる人がいるか」とかだったとか(記憶が曖昧)。だから、妻と暮らしていようがいまいが、果物とって、適度に気楽に話せる人がいたらいいと思う。そんな怒らないで。床屋さんとか、歯医者さんとかと、気楽に話せたら月に2回はクリアできる。あと、果物は食べたほうがいい。季節も感じられるし。
さらに、男性学の田中俊之先生を検索していて、気になる相談を見つけてしまった。”稼ぎの少ない夫が家事を放棄する「深い理由」”というタイトルの相談である。
妻より稼ぎが少なく、正規職員の立場になく、仕事で「男らしさ」の評価を得ることが不足しているため、不足している「男らしさ」を「家事をしない」ことで補てんしようとしているという、恐ろしい論理。
新型コロナ感染拡大の影響で、DVや虐待が増えていることの背景に、そういったこともあるかも・・・?家にいることで「男らしさ」の評価を得ることが不足していると感じる呪いがあったとしたら・・・?
魔法のように問題ある現象を解決することは難しいけれど、少しでも呪いを消すチャンスに一票入れたいと思う。少なくとも、男性が平日昼間っから私服でウロウロしていると警戒される、という呪いはこのまま消えたらいいんじゃないだろうか。
普通はこうということが通用しない今だから、いらないものは捨てて、自分や大切な人にとって大事なことを確認しあえるかもしれない。
もしそんなお片付けができたら、なかなかの成果になるかもね。
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