仮説思考はコンサル独壇場にあらず!まだまだある'推論的'仮説思考 法
イントロダクション 内田和成『仮説思考』
検索すればヒットするド定番の書籍です。
この『仮説思考』、正直言って実践にはあまり役立たない、かも。仮説思考を求めて、本書を購入するのであれば、そもそもの地頭が欠落した人なのかもしれません。
内田和成さんはボストン・コンサルティング・グループ(BCG)に所属し、本書はコンサルティング業務を通じて得た知見を集約して書かれています。
つまり、ビジネスコンサルの言葉で構成されています。
本書で取り上げられる仮説の構築、検証と分析、結果および改善のプロセスは、ビジネスコンサルの事例を通して説明されています。
エッセンスだけを抽出すれば良いのですが、事例が営業戦略立案、新規事業開拓、M&Aなどであり、それらに興味のないわたしにとっては、読み通すのが苦行。回り道をしているかのような、霧の中の迷宮にいるような、「この話いつ終わりますか?」を感じます。
同じ著者による『論点思考』(東洋経済新報社,2010)も、ビジネスコンサル業務を前提に書かれており、同様の感触を受けます。
それでも、この本には優れた点があります。
本書の構成は、ビジネスコンサルの文章術であるロジックツリーがベースになっています。
目次だけは非常に読みやすい。目次を眺めるだけでも多くのヒントが得らます。ロジックツリーの手本とも言える、この『仮説思考』は、目次(アウトライン)を元に、ビジネスコンサルが文章・事例を埋めていったといえます。もっとも述べられる事例に興味を感じないけれども。
ロジックツリーの慣習にしたがい、立ち読み時に、目次を眺めるだけで『仮説思考』への目的が果たされます。買わなくてもいい!と、すぐに判断できます。
※ バーバラ・ミント『考える技術・書く技術』ダイヤモンド社,1999
本書を読み進めていて一番気にかかるのは、ビジネスパーソンとしてコンサルタントが至上であるという権威主義や偏向主義です。
そもそも仮説思考はあらゆる業種、境遇で行います。
野菜を売るにしても、牛を世話するにしても、仮説的に思考できなければ、成果が上がるどころか、下がる一方です。
仮説思考のプロセスは本来汎用的で、さまざまなシーンで応用できる思考法です。特定の分野に限定せず、幅広く習得することが可能です。
以上の理由から『仮説思考』は偏りすぎています。この本を初めてのステップで、仮説思考に入門するのをお勧めしません。
仮説といえば名著 アンリ・ポアンカレ『科学と仮説』
アンリ・ポアンカレ『科学と仮説』,訳 南條郁子,ちくま学芸文庫,2022
岩波文庫では長らく旧字体(1959出版)版で正直敬遠していましたが、新訳『科学と仮説』(訳 伊藤邦武,2021)が出てくれました。新訳とまではいかずとも、現行の字体にしていただくだけでいいのですが。。。岩波書店さん『科学と方法』の新版もお願いします。
仮説と名がつく科学論の代表的書籍として長く親しまれています。
著者であるアンリ・ポアンカレは数学者であり、物理学者、そして哲学者。
https://ja.wikipedia.org/wiki/アンリ・ポアンカレ
ポアンカレが見出した方法によって、歴史上最大級の難問とされてきた数学問題"ポアンカレ予想"も解かれてしまいました。問題発案もポアンカレです。
ポアンカレさん、超天才です。人類史の中でも超ド級の知性を持ちます。
『科学と仮説』は、彼が数学、物理を学び、研究していく上で得た見解を集め、体系化したものです。 扱われている題材は、大学上級生から大学院生レベルです。数学や物理に造詣がないのであれば、お勧めしません。
仮説思考 最強2冊
内田和成『仮説思考』を読んでも、どこか視界が晴れません。
その理由は、仮説思考に至る思考プロセスが体系的に紹介されていない点にあります。仮説思考では仮説をひらめくプロセスが最も重要です。『仮説思考』での、ひらめき方法は内田和成さんの経験則に大きく頼っています。
人類は、ギリシャ文明から現代に至るまで、科学・哲学をはじめ多くの分野で仮説思考を発展させてきました。その過程で、方法論は体系化され、精緻化されてきました。
その"仮説を発起させるプロセス"を学ぶために、ビジネスの知識は必要ありません。オリジナルな思考体系を学ぶには若干の哲学的な素養が必要ですが、現在では専門的な議論を避け、わかりやすく説明されている書籍が多くあります。
『地頭力のはじめ方』
細谷功『今すぐできて、一生役立つ 地頭力のはじめ方』大和書房,2023
似たタイトルの『地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」』はフェルミ推定しか扱っていません。
タイトルが少し軽く感じるかもしれません。内田和成『仮説思考』と比べると圧倒的に使いやすく、汎用的な方法が述べられており、一生のあらゆるシーンで実践可能です。
細谷さんは論理的思考に関する書籍を多数執筆しており、どれを選べばよいか迷うこともあります。
細谷さんが提唱する「地頭力」は、
仮説思考力
フレームワーク思考力
抽象化思考力
そしてフェルミ推定
が含まれます。この本は、それらの方法論を最も整理され、端的にわかりやすく解説しています。増補新装版として再登場し、再考と洗練が加えられた本書は、実践的な内容がさらに充実しています。最新の知見と経験を反映し、使いやすさが一層向上しています。思考力を確実に高める一冊で、具体的なアプローチと明確な解説が特徴です。あらゆるシーンで役立つ、信頼性の高い内容が提供されています。巻末にまとめがあり、振り返りの際に頼りになる「思考のナビゲーター」としても活用できます。
『才能をひらく編集工学』
人類が長い歴史の中で研鑽を重ねてきた究極的な「仮説をひらめくプロセス」は「推論」です。代表的な推論法(※それぞれの用語のリンク先はWikipedia)は、
この中で仮説思考に最重要な推論法はアブダクションです。
ここでの<H>がアブダクションに相当します。哲学者チャールズ・サンダース・パースによる定式化を素直に表現するとこのようになります。
うーんわかりにくい。
安藤昭子『才能をひらく編集工学』では、この定義から一歩すすんで、仮説思考を普段使いできるよう、馴染みやすい表現で記述されています。
わたしが知る上で、アブダクションについて最もわかりやすく解説されている本です。名付けて「あてずっぽうのすすめ」。アブダクションはゆきづまりを突破する思考法であり、仮説思考においてブレークスルーをもたらしてくれます。このような「創造的なあてずっぽう」をうまく活用する方法が詳しく述べられています。
この本では、アブダクションという推論的な発想法、いわば理系的論証法だけでなく、人類が発見したさまざまな発想法を広く取り上げています。たとえば、
フレーム・スキーマ/ユクスキュルの環世界/モード(らしさ)/非線形科学/ナラティブ/アフォーダンス/「空」の思想/アーキタイプ/寄物陳思
原典からの引用も豊富で、さらに深掘りする際の有力な手がかりが得やすいのもうれしい。
挙げられる参考文献は有名な古典ばかりですが、それら書籍のエッセンスを抽出するには、膨大な量の古典や哲学書を読破しなければなりません。
まさしく編集工学がなせる技。
編集工学の達人である安藤さんが執筆したこの本は、編集工学の発案者でもある故 松岡正剛さんの著書よりも、読みやすさが際立っています。初心者にも理解しやすく、実用的な知識が満載の一冊です。
どうしてもひらめかないときに、AIよりも頼りになる、創造の羅針盤になってくれます。
アジャイル・プロセス
SNSやスマホアプリの代表的IT企業の多くが、ソフトウェア開発にアジャイル・プロセスを活用しています。
アジャイル・プロセスとは、IT企業でよく使われる柔軟なプロジェクト管理の方法です。この方法では、変化にすぐに対応し、短い期間で開発を進めることが特徴です。また、頻繁にフィードバックを受け取りながら、製品やサービスを常に改善していきます。チーム全体で協力し、顧客とよくコミュニケーションを取ることで、より良い成果を出すことを目指します。
SNSやスマホのサービスは、開発段階で予定通りに進まないことがよくあります。顧客(ユーザ)のニーズは変動的であり、流行に左右されやすい。そのため、ほとんどの場合で未知の領域を開拓する必要があります。
正解が見えない状況では、正解から外れることがむしろ正しいプロセスとなることが多いのです。したがって、多様性を許容して、試行錯誤を重ねることで当たりを引く可能性を高めることが重要となってきます。
アジャイル・プロセスに関する書籍は多く出版されています。ほとんどがITプロダクトに特化して記述されており、一般的には使いにくく、汎用性がありません。
次に挙げる2冊は、アジャイルプロセスの現在と未来をまとめた優れた書籍です。本書で提示される仮説思考(仮説検証)は、ITプロダクトに限らず、ビジネス、業務、生産、学習といったさまざまなプロセスにも応用できます。
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