はたらく女性が知っておきたい「更年期」②
脳からの「女性ホルモンを出して」という指令に卵巣が応じられず、自律神経が乱れることによっておこる症状。
それが「更年期症状」であることを前回はお伝えしました。
更年期症状の特徴は?
更年期は、閉経をはさんで前後5年ずつ計10年の期間を指しますが、この時期、実に90%以上の女性が何らかの不調を感じているといわれています。
“更年期症状”として女性が感じやすい不定愁訴は、イラストにもあるように実に多岐にわたります。
「肩こり」や「疲れやすさ」は、とくに日本人女性に多く見られる更年期症状だといわれています。
それも含め、一見、婦人科に関連しているとは思えない症状もあって、更年期だと気づかず、婦人科以外の受診をして症状が改善せずに苦しむ人も。いわゆる、ドクターズショッピング現象がおこりやすいのも更年期症状の特徴です。
また、いろいろな症状が入れ替わりあらわれる人もいれば、複数の症状が同時期にあらわれる人もいるなど、更年期症状は本当にひとそれぞれで、その強弱や発症時期、期間も異なります。
全体の2割程度ですが、更年期症状がまったく現れない女性もいます。
その一方で、逆に症状が強く出てしまい、日常生活や仕事に支障をきたしている女性もいます。
これが、「更年期障害」と言われる状態です
更年期障害で治療が必要な女性は、全体の20~30%といわれています。
身体的要因だけではない更年期症状の悪化
月経以上に、人によって症状の違いが激しい“更年期”。
その理由は、身体的因子、心理的因子、社会的因子が複合的に関与しているからだといわれています
「母親の更年期がひどかったから、きっと私も…」といった会話をときどき耳にしますが、遺伝的な要因以上に、更年期症状には、その人がおかれた家庭環境、職場環境、人間関係に起因したストレスが強く影響します。物ごとのとらえ方や性格などによってストレスを抱え込みやすいタイプの方も、症状が出やすいといった報告もあります。
ご自身の気質を思い返してみてください、生真面目、責任感が強い、頼まれると断れないといった性格で、更年期以前からストレスをため込みやすい傾向はありませんでしたか?
自覚のある方は、物ごとを正面から受け止めるばかりではなく、上手に受け流す方法を試みたり、なるべくポジティブな側面を見るようにするなど、マインドセットを意識的に変えてみるといいかもしれません。
もともとの性格を変えることは難しいですが、自分にあった気分転換の方法が見つかるといいですね。
また、睡眠時間を削ってでも仕事も家事もしっかりとこなすことが信条、タフな交渉ごともばりばりとこなし、いわゆる“オトコ並みにはたらく”タイプの方も、この時期はムリをしないように気をつけましょう。
若い頃からPMSがツラかった、情緒不安定になりやすかった、出産時に産後うつを疑うような症状があったなど、“ホルモンの変動”に弱かったという自覚がある方も、40代に入って体調がしんどいと感じたら、早めに医師に相談をしてほしいと思います。
更年期かな?と感じたらまずは婦人科へ
では、更年期症状(障害)で婦人科を訪れた場合、どのように治療が進むのかを見てみましょう。
《問診》
問診では、現在の症状や生活習慣等について質問された後、症状評価(※)や血液検査が行われます。
これらの結果を総合し、症状や程度に応じて以下のような治療が行われます
《症状評価※》
簡易更年期指数(SMI)などの評価表を使って、更年期障害の程度を把握します。
SMIは臨床の場で多く使われている指標ですが、検索するとネットでも手にれられます。症状が気になり始めたら早めに自分の状態をチェックして、診察のタイミングを逃さないようにしましょう。
期間限定の症状ですが何もしないのはNG
一般的な更年期症状は、女性ホルモンが分泌されなくなった状態に脳やからだが慣れるまでの限定的な期間あらわれ、多くの女性は3~5年で症状は落ち着いてきます。
ですが、「だから我慢していればそのうち治る」とばかりに放置しておくことは賢明ではありません。一見、更年期と思われがちな症状の中に、違う病気が隠れている可能性もあります。
また、はたらいている女性の場合、症状がおさまるまでの間は確実に生産性がさがってしまいます。仕事人生の集大成期でもあるこの時期に、健康課題でパフォーマンスを低下させ続けることは、キャリア形成、自己実現の観点でも適切ではありません。
仕事や日常生活に支障が出るほどの症状がある方は、適切な治療を行うことで、多くの場合は軽減しますので、「この時期までかかりつけ婦人科医を持っていなかった」という人も、迷わず診察を受けてほしいと思います。
(構成/阿部 志穂)
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