『ぼくを探しに』 〜いまの自分を受入れることで“人生”という旅が楽しくなる本
こんにちは。キャリアコンサルタントの松岡澄江です。
今回の“お題”にピッタリの本がないかと本棚の背表紙を見ていたら、本棚の隅に置いている絵本に目がいきました。
たくさん持っていた絵本も、子どもたちが巣立ってからはほとんど手放してしまい、今は思い出深いものだけが手元に残っています。
とくにこの著者の本は、大人が読んでも深い味わいがあるものばかりです。表紙が黄ばんでいるので年月を感じますね。購入してから、おそらく30年以上になると思います。
その中から今回はこちらをご紹介します。
『ぼくを探しに』あらすじ
主人公の「ぼく」は、完全な丸ではない自分には「なにかが足りない」と感じていて、だから「楽しくない」と思っています。
足りないかけらを探しに旅に出る「ぼく」。旅の様子や出会うかけらたちとのやりとりから、「足りないもの」や「ぼく」自身について考えていきます。シンプルな言葉と線で描かれた絵本。
いつも足りないものを探している
『ぼくを探しに』では、欠けている「ぼく」が楽しくないと思っているところからスタートします。あるはずのものがないという不足感や違和感は、足りないから楽しくないという気持ちにつながっていきます。
絵本を読んでいる私たちも
「もっとお金があったら楽しいはず」
「もっと時間があればうまくいくのに」
「資格があればいい仕事につけるのに」
と、幸せではない原因が「足りないこと」だと結論付けてしまうこと、ありますよね。
私たちは、満たされている時はそのことに気づきにくく、自分に足りないものは見えやすい、そんな性質があるのかもしれません。
不満とは、その字の通り満たされていない状態のことです。
満たされていないし完全ではない自分や他者に対して「あれもできない」「これも足りない」「もっとこうしてくれたらいいのに」といった感情が生まれ、人生を悩ましくしていると思います。
とくに日本人は、自分に自信がない人が多いという調査結果があります。
令和元年「子供・若者白書」(内閣府)では、日本の若者は、諸外国の若者と比べて、自分自身に満足していたり、自分に長所があると感じていたりする者の割合が最も低い結果となっています。
自己肯定感が低く、自信が持てず、できることよりも足りないことに目がいきがちな国民性が表れています。
キャリアを考えるうえで自己分析・自己理解がとても大切ですが、ご自分の短所や弱みはたくさんあげられるけれど、長所や強みが思い浮かばないという方は、キャリア面談をしているなかでも多いです。
それだけ私たちはいつも「なにかが足りない」状態なのかもしれませんね
「いま」を受入れてみると視点が変わる
絵本の中の「ぼく」は、欠けているのでうまく転がることができません。
でも、そのおかげでミミズと話したり、花の香りをかいだり、カブトムシと競争したり、それなりに楽しく進んできます。
足りていない状態ながらも前に進んでいくことで、私たちもいろいろな経験をし、そこから学びながら成長しています。
この本は「足りていなくても楽しい時はある」と思い出させてくれます。
実はこの絵本を最初に読んだ時に、最後のシーンで「え?」と裏切られたような感じになりました。
主人公の「ぼく」は、この後いくつかのかけらと出会います。私は、「ぴったりはまるかけらと出会ってハッピーエンドになるのかな?」と思いながら読み進めていました。
ところが「ぼく」は、ついにぴったりはまるかけらを見つけ一緒に進むのですが、なんと楽しくないというのです!
どこも欠けていない丸になったから、転がる時にスピードが出てしまい、ミミズとも話せない。
人生を楽しめないことを、欠けているもののせいにしてきたけど、手に入れた途端これではなかったことを知り、前の方が良かったと思うのです。
「ぼく」は、欠けているから楽しかったんだと理解します。その気づきに触れた時、私はなんだか少しうれしくなりました。欠けていてもいいんだと言ってもらっているようでした。
「いま、ここ」の自分は、過去の積み重ねでできています。
足りないものもあるけど、これが自分なんだと受け入れたところから、未来の自分を考え始めることができます。未来は今の自分が積み重ねて創っていくものだからです。
「ぼく」は欠けている自分が自分らしいのだと受入れたことで、また楽しく旅を始めることができるようになりました。
私たちも、足りないものばかり見るのではなく、いま、ここにいる自分をいったん受け入れていくことで、次の自分がスタートできる。
欲しい自分は自分の外にあるのではなく、自分の中にある。
ーーそんなことを教えてくれる本です。
絵本だと侮るなかれ。ぜひ手に取ってみてくださいね。
■ 文/松岡澄江(まつおか・すみえ)
国家資格キャリアコンサルタント、研修講師
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