はたらく女性にとって「健康の知識」があることはなぜ良いの?
こんにちは。
このnoteを運営している“mezame”は、はたらく女性の健康とキャリアをサポートするプログラムです。
健康もキャリアも、人間にとって双方大切なことですが、これを一緒に扱うことには、もしかすると違和感を感じる人がいるかもしれません。
これまでは、健康については医師や保健師のような専門家が、キャリアについては人事や社会保険の知識や資格を持つ人が、それぞれにその重要性をお伝えすることがほとんどでしたから。
しかし、体調が悪ければ仕事で十分な成果を上げることはできませんし、適切なタイミングで医療機関を受診しなければ、症状が悪化して働き続けることをあきらめなければいけなくなるかもしれません。
逆に、常に調子の良い状態で高いパフォーマンスを発揮し続けることができれば、仕事での評価が上がり、今よりも仕事へのモチベーションや収入が上がる可能性もあるでしょう。
つまり、この連載コラムのタイトルにもあるように、“カラダとキャリア”はつながっているのです。
私たちは普段、仕事は仕事。健康は健康とわけて考えがちですが、これらが“つながっている”と意識することで、日々の暮らしも変わって来ます。
それを裏付けるような、興味深い調査があります。
日本医療政策機構が2018年におこなった「働く女性の健康増進に関する調査」。今回は、この調査結果から見えてくるものを紐解いていきましょう。
■「働く女性の健康増進に関する調査」調査概要
【調査主体】特定非営利活動法人 日本医療政策機構
【調査手法】インターネット調査
【調査エリア】全国
【調査時期】2018年2月
【調査対象】全国18~49歳のフルタイムの正規/契約/派遣社員・職員女性2,000名
健康知識を持っている女性は生理中や更年期でもパフォーマンスが高い
まず注目してほしいのが、月経中とそれ以外の日の仕事のパフォーマンスの変化を比較したところ、PMS(月経前症候群)や月経随伴症状(月経にともなう痛みや不快感など)によって、月経中のパフォーマンスが普段の半分以下になると答えた人が約5割でした。
また、更年期症状や更年期障害でも同じように比較したところ、やはり半分以下になると答えた人が約5割でした。
思春期から閉経前まで、女性なら誰にでも訪れる月経。
その期間中、実に半数の女性が仕事のパフォーマンスに影響があると感じているとあっては、「痛くても当然」「みんながまんしている」といったこれまでのとらえ方は改めなければいけません。
以前の回でもお伝えしたように、PMSには子宮内膜症などの病気が隠れている可能性も高く、そのままにしてほしくはないですし、なにより、薬や低用量ピルなどの処方を受けることによって、痛みが緩和されるわけですから、がまんし続けることは得策ではありませんよね。
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「もっと早く知っていれば…」そんな後悔をしないために
ただこの調査によると、月経随伴症状や更年期症状を感じている場合でも、ヘルスリテラシー(健康知識)が高い女性、とくに女性のカラダに関する知識を持っている女性は、パフォーマンスが下がる割合が低いのです。
それは恐らく、健康知識をきちんと持っている女性は、痛みや異常を感じたときに医療機関を受診したり、適切なタイミングで服薬する等の行動を取れる確率が高いからではないでしょうか。
他にも、ヘルスリテラシーが高いことによって、望んだ時期に妊娠できていたり(リテラシーが低い女性の1.9倍)、妊娠できない場合でも不妊治療に進むことができたなど、望んでいた人生を実現できる可能性が、リテラシーの低い女性よりも全体的に高いといえるようです。
「不妊治療が必要な人はまれだと思っていた」
「何歳から妊娠しにくくなるのか知らなかった」
「不妊治療にこれほど費用がかかると思っていなかった」
「不妊治療を開始すべき時期がわからなかった」
上記は、不妊治療をする前に知っておきたかったこととして、調査に寄せられた女性たちの声です。
「もし、もっと早く知っていたら…」
そんな後悔が伝わってくるような内容です。
なお、不妊治療については別途記事を掲載していく予定です。
望んだ人生へと舵が取れるのは、それを実現するための知識を持っているから
こうした積み重ねがあるせいか、ヘルスリテラシーが高い女性のパフォーマンスは、働いている全期間を通して、月経や更年期症状の有無に関わらず、ヘルスリテラシーの低い女性より高いこともわかりました。
そして、全体を通して職務満足度のみならず、生活への満足度、さらにはQOL(生活の質)さえも高いのです。
「健康知識なんてとくに持ってないけれど、病気になったら病院に行けばいいし、今の世の中で必ず必要な情報じゃないのでは?」
そう思っている人は少なくないかもしれませんが、その実際はこの調査結果が物語っています。
健康知識を持っていること、ヘルスリテラシーが高いことは、仕事やキャリア、そして人生そのものをより良いものにしてくれるのです。
ヘルスリテラシーを高めるために知っておくこととは?
ところで、この調査でいう「ヘルスリテラシーの高い女性」とは、どのような女性のことを指すのでしょう?
この調査では、次の4つの項目に着目しています。
【1】女性の健康情報の選択と実践
・自分のカラダについて心配がある時は、医師、保健師、看護師等の医療従事者に相談することができる。
・インターネットや雑誌に紹介されている女性の健康についての情報が正しいかどうか検討することができる。
・自分の体調を維持するためにおこなっていることがある。 など
【2】月経セルフケア
・自分の月経周期を把握している
・体調の変化から月経を予測することができる
・月経の辛い症状があるときは積極的に対処法をおこなっている など
【3】女性のカラダに関する知識
・月経の仕組みについて知識がある
・妊娠の仕組みについて知識がある
・子宮や卵巣の病気について知識がある など
【4】パートナーとの関係
・パートナーと避妊について話し合うことができる
・パートナーと性感染症の予防について話し合うことができる
月経随伴症状や更年期症状を感じていても、パフォーマンスを落とさずに働くことができる女性たちは、とくに【3】の知識が高い傾向にあったようです。
また、望んだ時期に妊娠ができた女性や不妊治療を実施できた女性たちは、【4】について優位性がありました。
【1】〜【4】をご覧いただいて、「自分にはこれが足りない」と思いあたるものがあれば、まずはそれを身につける、学ぶといったことからはじめてみてはいかがでしょう?
男性も職場の人たちも関心が持てる環境へ
もちろん、女性の健康知識については、女性だけが知っていれば良いというものではありません。
必要なヘルスリテラシー項目に【4】パートナーとの関係があるように、望んだ形やタイミングでの妊娠・出産には、パートナーと相談しやすい関係性が欠かせませんし、制度の柔軟性や利用のしやすさといった職場環境も重要です。
周期的な体調の変化がない男性にとっては、女性特有の体調の変化に「どう対応すれば…」と悩ましく思うのが現実かもしれません。
けれど大切なのは、「このような変化が女性にはあるのだ」と理解すること。そして、パートナーとなる男性だけではなく、職場の上司、同僚、部下、あるいは友人など、女性を取り巻くすべての人が理解しようとすることです。
女性はもともと共感性の高い性でもあります。
何かを「してあげる」ことは難しくても、「わかってあげる」ことができるだけで、お互いの関係は良好に保てるのではないでしょうか。
月経や更年期症状がある中でも、女性がパフォーマンスを落とさずに働ける社会になれば、職場全体のモチベーション維持、生産性アップにもつながります。プライベートにおいては互いのパートナーシップが強まり、生活の質や満足度も向上することでしょう。
近頃ネットを中心に、日本の性教育の在り方が議論されることが増えてきていますが、女性の健康知識も含めた包括的な性の健康教育は、国際基準より大きく遅れているのが現状です。
教育機関での性教育環境が整っていない分、大人になってからでも女性の健康知識を養う機会はとても大切です。啓発活動をおこなう団体も増えてきていますが、企業にもぜひ、こうした活動に目を向けてほしいですね。
■ 文/西岡 笑子(にしおか・えみこ)
防衛医科大学校 医学教育部 看護学科母性看護学講座教授。順天堂大学医学部非常勤講師。順天堂大学医学部助教、神戸大学保健学研究科准教授を経て現職。母性看護学・助産学とウィメンズヘルスが専門分野。2児の母でもある。mezame女性研修の監修を行う。
(構成/阿部志穂)
“mezame”ははたらく女性の健康とキャリアをサポートするプログラムです
女性特有の体調の周期的な変化、年齢やライフステージごとに変わって行く役割、体調、かかりやすい病気…。ウィメンズヘルスをふまえて“はたらく”を考えれば、女性従業員のパフォーマンスは今以上に向上し、女性自身もなりたい自分、叶えたい人生に近づくことができます。
さんぎょうい株式会社が提供する“mezame”は、専任の産業保健師とキャリアコンサルタント(国家資格)がタッグを組み、健康知識とキャリアプランニングの基礎研修に加え、個別のキャリア面談によるモチベーションアップ、ライフステージ別・職級別の健康とキャリアを考えるセミナー等をおこなうプログラムです。
労働損失が5000億円にも迫ると算出されている月経随伴症状。職場全体がヘルスリテラシーを高め、女性の健康に配慮することで労働生産性もあがり、相互理解が促進されることで離職率の低い職場風土を醸成できます。
女性活躍推進施策、健康経営施策の第一歩としても最適です。経営者のみなさん、人事・HRご担当のみなさん、ぜひ一度、ご相談ください!
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