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ぼよよん行進曲が泣ける理由

どんなたいへんなことがおきたって
きみのあしのそのしたには
とてもとてもじょうぶな
「ばね」がついてるんだぜ


♪ぼよよん行進曲より


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子供向けの絵本を読んで親が夢中になったり、こども向けの歌を聞いて親が楽しんだり、そんなことはよくあることで。

私の母も、『よなかのころわん』や『こんとあき』なんていう絵柄がとってもあたたかい絵本を大事に持っていたし、『おはようクレヨン』という歌が好きなんだ~と歌っていたりした。

私にも娘が生まれて、これからそんな出会いがあるんだろうなあ、と楽しみに思っていたら、早速出会ったのがこの曲。

ぼよよん行進曲

正確には、娘が生まれる前からこの曲の存在は知っていた。実家に遊びに来た甥っ子が、「ぼよよよーん!」ととっても楽しそうに聞いているのを見ていたからだ。

なんやこれいい曲やなあ、メロディーがいいねえ、と思って作曲者を調べたら、Choo Choo TRAINの作曲者の中西圭三さんで、「あ、なーる」となった。その時はそれで終わっていた。

それがどうだ。

先日「まだあかりには早いかねえ」なんて一人言に近い感じで娘に話しかけながら、おかあさんといっしょ!にチャンネルを合わせたら、この曲が流れ出した。

お、ぼよよん行進曲やん。
あかりと一緒にぼよよんしよっと、と一度座らせた娘をもう一度だっこする。

するとどうだ、歌が始まって数秒で私はぼろぼろ泣いてしまった。

「メロディーがいいねえ」だあ?ハア?
違う、違う違う、違う違う違う。

これはメロディーだけやない、
とんでもない曲、親殺しの曲やないか。

歌詞がたまらんやないのこれ。
親になった瞬間こんなに変わるんか。
なんだそれ人生楽しいな。

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 どんなたいへんなことがおきたって
 きみのあしのそのしたには
 とてもとてもじょうぶな
 「ばね」がついてるんだぜ
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親は、子に幸せでいてほしいと願う。
出来るだけ我が子には辛いことが起きてほしくないな、と思う。憂鬱な状況になってほしくないな、と思う。

でも、残念ながらそれは無理だ。
どんなに頑張っても、どんなに勉強しても、どんなに準備をしても、そんな状況は絶対に、くる。

私たちの今までの人生がそうだったように。

その現実を、私は最初のフレーズで思い出す。

“どんなたいへんなことがおきたって”

そうか、今私の腕の中で安心しきってきゃっきゃと笑っているこの子も、いずれ一人で歩き出し、私が守りきれないところまで進んでいくのか。

そしてぶち当たるんだ、“たいへんなこと”に。

そうか、この子にもたいへんなことがおきるんだ。
その事実が苦しくて、私は胸がぎゅっとなる。

毎日授乳、離乳食、おむつがえ、お風呂、寝かしつけに追われ、1日1日をバタバタ過ごしていて、この子がすぐに安全な私の腕の中から離れていくということを、はっきり意識できていなかった。

そんな“私に”、この歌は語りかける。

こんなに小さいこの子だけど、この子の足にはバネがついてるんだと。しかも、とてもとても丈夫な。

「知ってた?」

え、そうなの。
小さい体の、小さい小さいかわいいあんよをじっと見る。

あなたの足に、そんな立派なものがついているの。
こーんなに、ちいちゃいのに?

だから大丈夫だよ、ママ、信じて。
そう言われたような気がする。

この歌から。
そして、この子から。

この曲は行進曲。マーチだ。
ずんずんずん、と腕をふって歩いていく姿が浮かぶ。

小さい体で、たいへんな世の中に向かって、ずんずんずん、と歩いていく姿が見える。

その姿はなんだかいじらしい。

がんばれ、がんばれ、がんばれ。

あるけ、あるけ、あるけ。
すすめ、すすめ、すすめ。

足の下のとてもとても丈夫なバネを忘れないで。
どんなたいへんなことも、
ぼよよ~んとたかく、とびこえてみよう。

ママが必ず見守っててあげるから、大丈夫だから、
がんばれ、がんばれ、がんばれ。

でも、まだちいさいあなたは、いま私の腕の中にいる。
その間は、全力でママが守ってあげる。
どんなたいへんなことからも、ママが守ってあげるから。

この時間はきっと、私が思うより一瞬だ。
あっという間にあなたはひとりで歩き出す。

あなたが私の腕の中にいる時間、
とてもとてもだいじないま、を私は生きている。


──そんなことを思い、今日も私はぼよよん行進曲を聞いて、ぼろぼろ泣きながら、娘を大事に抱き締める。

そしてサビでは無理矢理笑いながら、ぼよよよ~ん!!!と言いながら高い高いをする。娘はキャハハッ!!と大笑いする。

そうしながら、落ちないように私の腕をぎゅっと掴む。


この小さな手がいずれは私から離れてしまうことを思い、
私はまた、泣く。

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