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ネーミングは引っかかりが大切(前編)

今日はネーミングについて語ってみたいと思います。

ブランドのポテンシャルが決まる

ブランドの始まりはネーミングからと言うように、ネーミングはブランドのポテンシャルを決めるとても重要な要素です。

一旦ブランドが創られたら、そこからお客様とのコミュニケーションや広告・販促が始まりますが、ネーミング(&ロゴ)は、やり取りの経緯や想い、評判などがストックされていく器となります。その器がしっかりしていないと、ザルから水が漏れるように評判もザザ漏れになってしまうのです。

最初に、よくないネーミングの例を挙げていきましょう。

良くないネーミングの例

一般名称すぎる

一般名称とは、世間で普通名詞として使われているワードのことです。例えば「アルミニウム」とか「山脈」とか「安全」とか。そもそも商標も登録できないので、避けた方が無難です。(組み合わせれば登録可能に)

ただ、問題なのは商標以上に人々の記憶に残らないと言うことなのです。

  東京アートアカデミー(架空名称)
  バンタンデザイン研究所

例えばですが、「東京アートアカデミー」は全て一般名称のため、えーぇっと、あそこ何だっけ?と後から成りがちですが、「バンタンデザイン研究所」は最初の「バンタン」がオリジナルでインパクトがあるため、愛称としても「バンタン」で流通していきやすいのです。

弱かったり、長かったり

また、音の弱さも気になります。フラットな音だと「すぅ〜っ」と脳から消え去ってしまい、覚えにくい名前となってしまいます。

さらに、長い場合も覚えられません。理想的には4から5文字、または韻を踏んでその5文字を2回繰り返すくらいのイメージがマックスではないでしょうか。例えば、「サグラダ・ファミリア」って何のことか知らない人でも、この名前は「あぁー、何となく知ってる」と言う方も多いのではないでしょうか。「何とかかんとか大聖堂」は知らないけど、「サグラダ・ファミリア」は音で記憶に残っている人が世界中にいるとなると、これはやっぱりネーミングの力が強いなと思ってしまいます。

略語(アブリビエーション)

英語の頭文字を羅列したような略語も良くないと言われています。例えばSNSとかIBMのようなものがありますが、これらは物凄い量の露出があって初めて人々の記憶に刻まれるのですが、同じくらい露出をする覚悟や機会がありますか?と言うことです。

愛称としても流通しづらいので、お勧めしません。あまり実名を出すのは良くないのですが、最近とても残念に思った例を挙げておきますと。

親族が東北に住んでいるため、この年末年始を東北で過ごしました。そしてあちらに多いホームセンター「Homac(ホーマック)」に日参するほど通わせてもらったのですが、名前が「DCM(ディーシーエム)」に変わるそうです。「あぁ、なんて勿体無い!」と思いました。「Homac」っていい名前です。ホームセンターをダイレクトに連想させるし、破裂音(後述)も入っているし、長さも字面もいいのに。こうして資本の論理で良い名前が消えていくことも、多々ありますね。。

乱立している

日本の製造メーカーさんにありがちなのですが、製品ができたらその都度、各部署だったり担当者がネーミングして商標登録、その結果いろんなタイプのネーミングが社内に乱立…。これで今頭を悩ましているメーカーさん多いのではないでしょうか。実際に、広報部門などが音頭をとって再整備に乗り出されている会社もあるようです。

海外では「Nomenclature System(ノーメンクレーチャーシステム:命名法システム)」などとしてルール化をしている企業も多いです。

良くないネーミングの弊害

それでは、良くないネーミングを使用する場合の弊害とは何でしょうか。いくつか挙げてみたいと思います。

広告宣伝費がムダにかかる

ブランドがあればあるだけ、それぞれにかかるコミュニケーションコストも嵩張ってきます。以前挙げた外車(BMWやメルセデスなど)などは、一括でイメージをブランディングして、個別は記号で各ターゲットにコミュニケーションすることで、全体コストは上手く配分され、さらにブランド全体のイメージアップにも成功しているのではないでしょうか。

反対に、トヨタや日産のように全ての車種が違うブランドだと、それぞれにかかるコミュニケーションコストも相当で、さらに車種ブランドの栄枯盛衰によってかけ損の費用も出てくるのではないでしょうか。

しかし、ユーザー目線で言えば雑誌のようにその車の世界観を多様に楽しめるので、決して悪い訳ではないとも言えますね。(私は日本車ユーザーです)あくまでもブランド構築コストの効率性で考えた場合のことです。

記憶に残らない

ブランディングとはある意味刷り込みですから、人の記憶のメカニズムに沿っていくことが大事です。ツァイガルニク効果と言うようですが、「達成できていない事柄・中断している事柄の方が記憶に残る」ことで、つまり「うん?」「え?何だこれ」と引っかかった要素の方が記憶に残りやすいと言うことです。

そのため、フラットな音や一般名称などは引っかかりがなく、良くないと言うことも理解できますね。反対に、タイトルにもあるように、良いネーミングは引っかかりが大切となります。

愛称として流通しない

ネーミングが生まれた時、まずは社内で頻繁に引用されたり、語られたり、流通して行かないようだと外に出ても中々定着していきません。自然と人々の口端にのぼっていくような、愛着が持たれるネーミングが良いでしょう。

私が昔所属していた会社は、最初「Price Waterhouse」と言う会計事務所系コンサルだったのですが、所属中に「Coopers & Lybrand」と言う同業者と合併しました。その時、それぞれの会社が愛称として「Price Waterhouse」「Coopers」と呼ばれることが多かったので、新社名が「PriceWaterhouseCoopers」になったと聞いています。その後、いろんな変遷を経て現在は「PwC」になっていますが、前述の良くない略語ネーミングであるところを、アルファベットの大文字小文字を組み合わせることで、ビジュアル的に記憶に残す工夫をしているようですね。

合併の途中で一度、「Monday」と言う名前になりそうになったのですが、新聞に「Mondayと言う名前がTuesdayに発表された」と揶揄されたり、評判が散々だったので変わったようです。「Monday」って一体どこから。。

さらに余談ですが、イーロン・マスクさんの子供の名前は「X Æ A-12 Musk」だそうです。さすが後世に残る偉人、想像の斜め上をやってきます。読み方は…調べてみてください、笑

長くなりましたので、今回はここら辺で。次回は良いネーミングの条件について語ってみたいと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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