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宛先のない報告書

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政治・宗教・歴史にまつわる説を中心に、様々な説を考察します。全体を貫くキーワードを強いて挙げれば「お金」です。どうでもいい話も時々しています。
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記事一覧

前衛音楽は能書きに頼りがち、戦後ラーメン史とジャンクなもの、中原昌也とKlagen Fisherman

高校生の頃、近所のツタヤで借りてきた暴力温泉芸者こと中原昌也のCD『OTIS』。「デス渋谷系」と称されたそのアルバムには、さぞかし耳をつんざく凶悪な音が閉じ込められているのだろうと、念のため音量を下げて再生、ところがスピーカーから聴こえてきたのは「ミラーマン」のテーマ曲を歌う男性の声。カラオケで友人が歌っているような雰囲気で「戦え僕らのミラーマン♪」という間の抜けた声に当時の私はズッコけたものである。 また、同じアルバムに収録されていたのであったか、記憶は定かでないが、中原

Klagen Fisherman氏の曲で打線組んでみた

今回はフィールドレコーディングの技法を駆使しつつ、特異な音風景を創り出す現代ピアノ奏者・Klagen Fisherman氏の楽曲で打線組んでみました。 1番(遊)permanent vacation 駅ピアノと構内「ぴーんぽーん」音の即興的掛け合い。 通行人の足音、咳払い、構内アナウンス……街頭録音において忌避されがちな要素を採り入れ、静謐なノイズ音楽として成立させている。傑作。 2番(中)evacuation ピアノ+ストリングス+ノイズ。「ぴーんぽーん」をはじめとする

映画『RRR』感想――超横長画面のメリット・デメリット

映画を観るときに画面アスペクト比など今まで細かく気にしたことがなかったが、『RRR』はシネスコ、つまり縦横比が1:2.35の超ワイド画面である。シネスコはここ数十年、大迫力スペクタクルを楽しむ系のハリウッド映画で多用されており、近年では新エヴァなど、日本の劇場アニメでも使用され始めているらしい。異様に横長の画面。そんな中、『RRR』は超ワイド画面の長所と短所がすべて網羅されているというか、「メジャーで勝負するなら超横長にしなきゃ」という所から逆算して製作されているような印象を

【ポエム】フローって何?

フローって何だろう。この疑問に取り組むことは、水の流れを静止画で説明するのと同じくらい、あるいはサッカーのルールを静止画で説明するのと同じくらい難しい。 AKB商法とは、アイドルが育つ様子を商品化したものである。「あの子もデビュー当時は初々しくてダンスもたどたどしかったけど、今ではセンターを張るまでに成長したんだよな…」という具合に、初心者からプロへと成長する様子をビジネス化することである。完成品だけではなく、フローも商品になるらしい。 このAKB商法を批判していた中原昌

『伊藤高志映画作品集』感想

短いフレーズを何度も繰り返しつつ、徐々に変化させるミニマルミュージックのような作風の映像集。コンセプトの妙と、それを実現するに要したであろう膨大な労力を想像して味わうのが正しい鑑賞法であると感じた。なので正直なところ、まばたきする暇を惜しんで画面を凝視しないほうが良いと思われる。格好いいからといってあまり真剣に映像を瞳に流しこんでいると、悪酔いや失神のおそれがある。これは決して冗談ではなく、伊藤高志の出世作『SPACY』(1981)に見られる赤と青の光を高速で切り替える演出は

マルセル・カミュ『黒いオルフェ』感想

東京スカイツリーはスマホの縦長画面で撮ったほうが収まりが良いのと同じで、ブラジルの高台に伸び広がるスラム街は、縦3:横4のスタンダードサイズがしっくりくる。なぜなら高台は可住地が狭く、住民が一歩でも足を滑らせると崖下の海に転落しそうな高低差を一つの画面に収められるので。 そんな足場の悪い高台で、地元民はずっと踊っている。海辺の市街地に降りても、やはり踊っている。メイン俳優たちも踊っているが、その後ろにいるエキストラ地元民はもう少し手前に出てくるとストーリーが壊れそうな勢いで

『シン・仮面ライダー』感想

今回の仮面ライダーは、やたらヘルメットを脱いだり被ったりする。海辺でヘルメットを外しては涙を流し、被っては敵と戦い、一段落すると再び脱いで…。こいつ何回ヘルメット脱ぐねんと思った。またヘルメット被ってるときは変身後のはずだが、なぜか首筋の地肌とロン毛が見えている。エヴァの中身(赤い繊維質)が見えて血が吹き出したとき、「エヴァってロボットではなくて、巨大な生き物に鎧みたいな拘束具をつけてたのか」と驚いたのを思い出した。ヒーローに変身後にもかかわらず、変身前の生身の部分をチラ見せ

【ゆっくり解説】 旧約聖書の名シーンをコメディにしてみた~『出エジプト記』より「十の災い」~

霊夢と魔理沙のゆっくり動画編集ソフトを使って、旧約聖書『出エジプト記』より「十の災い」を抜粋、ブラックコメディにしてみました。 序盤はゆっくり解説風ですが、中盤からコメディ寄りの解釈強めです。 本作の裏テーマとして、解説者が作品に取り込まれていく不気味さについて考察したつもりです。 以下はテキストによる台本です。内容は動画版と同じです。 動画を作っておいてこんなこと言うのもヘンですが、私は動画よりテキスト派なので(動画だと頭に入ってこない)、検索できるデータベースのつもり

もしフロイトがエロ漫談家だったら――「糞=金」という黄金の方程式

※この記事は、フロイト『精神分析入門』から一部抜粋し、エロ漫談風にアレンジしたものです。 「糞=金」という黄金の方程式はあまりに有名ですが、これを展開すると「糞=金=ギフト=子供=一物」となるのはご存じでしょうか。 まず「糞=金」のように、無価値なものが最上の価値を帯びるという図式は理解しやすいですよね。 ある日突然いじめられっ子がクラスの人気者になったり、社会のクズみたいな底辺層が東大合格して人生逆転!といった下克上は今も昔も人気があります。逆にマリーアントワネットみたい

【哲学漫談】女性の股間に一物がついていない理由――フロイト「フェティシズム」より

※この記事は、フロイト「フェティシズム」(『エロス論集』所収)のパラフレーズです。 世の中には様々なフェチがありますが、1番人気は何といっても女性のおパンティですよね。脱いだ後の布切れも捨てがたいですが、やはり着用中のおパンティの温もりに勝るものはありません。 なぜ世間の男たちはおパンティに惹かれるのでしょうか?その理由はもちろん、幼いころに母親がおパンティを脱ぐ瞬間を目撃したからですよね。 当時、小さい男の子だった彼は、当然、母親にも自分と同じ一物がついていると思いこ

三十三回忌と忘れられる権利、フロー型人間とストック型人間

わが国では追善供養として、葬儀が済んでからも四十九日、一周忌、三回忌を行います。地域や宗派にもよりますが、三十三回忌まで行って弔い上げとしていたところもあるようです。なぜ33年なのか?その理由として、仏教では33という数字が重視されるからだそうです。関東の有名な観音を33ヶ所まとめた坂東三十三観音や、関西の西国三十三観音など、「三」、または三を重ねた「三十三」に意味をもたせることが多い印象がありますね。 もう一つ考えられる理由として、故人が亡くなって33年も経つと、故人のこ

なぜオタクとフェミニストは仲が悪いのか、ユダヤ教徒はローマ芸術に嫉妬してた?

ちょっと前の話ですが、市役所が開催するイベントのPRキャラクターに萌えキャラが選ばれたものの、フェミニストの抗議を受けて炎上、萌えキャラは白紙撤回…なんてニュースが世間を賑わせていましたよね。どこの市役所だったか、どんなキャラだったか、私はまったく思い出せませんが、似たような炎上事件は何度も起きているはずで、もはや我々は「ああ、またいつもの奴か」などと何も感じなくなっている気がします。 なぜオタクとフェミニストは喧嘩ばかりしているのでしょうか?私の予想では、オタクはカテゴラ

AIは人間観をどう変えるか、「記録」から「生成」へ

今がAIの黎明期だとすると、20年後、私たち人間はAIとどのように共生しているでしょうか?おそらくAIの普及を通じて人間観がAI風になるはずなので、AIと人間の区別が曖昧になり、AIは人間の暮らしに自然に溶け込んでいるのでしょうね。 将来を予測するに際して、次の3段階に整理できそうですね。 ①新聞・テレビ ②インターネット掲示板・SNS ③AI まず①新聞・テレビと、②インターネット掲示板・SNSの関係について整理します。 2000年代、インターネット掲示板やSNSは普

ニコニコ動画のフェイク同期、イベント型人間とプラットフォーム型人間

ニコ動が廃れた理由は、youtubeなど競合に比べて動画読み込みが遅いからだと思っていたのだけど、別の理由として「ライブ配信が主流になって、ニコ動ならではのフェイク同期が不要となったためではないか」とふと思いました。 昔、東浩紀がニコ動のフェイク同期に着目していましたよね。たしか東浩紀は、「ニコ動では画面に視聴者のコメントが重ねて表示されるので、みんなで一緒に同じ動画を見ながらワイワイ感想を言い合っているかのような錯覚を味わえる。しかし実際は、視聴者が動画を見ている時間はバ