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【ゆっくり解説】 旧約聖書の名シーンをコメディにしてみた~『出エジプト記』より「十の災い」~

霊夢と魔理沙のゆっくり動画編集ソフトを使って、旧約聖書『出エジプト記』より「十の災い」を抜粋、ブラックコメディにしてみました。

序盤はゆっくり解説風ですが、中盤からコメディ寄りの解釈強めです。
本作の裏テーマとして、解説者が作品に取り込まれていく不気味さについて考察したつもりです。


以下はテキストによる台本です。内容は動画版と同じです。
動画を作っておいてこんなこと言うのもヘンですが、私は動画よりテキスト派なので(動画だと頭に入ってこない)、検索できるデータベースのつもりでテキスト版をこちらに保存しておきます。
合計12000文字、動画にして25分なので、結構な長文記事となりました。


●資料:十の厄災
①蛇(ワニ)
②ナイルの腐敗
③カエル
④ぶよ・あぶ
⑤家畜の疫病
⑥ヒト・家畜の皮膚病
⑦雹
⑧イナゴ
⑨闇
⑩エジプトの子殺し


●本文
「こんにちは。霊夢です」
「魔理沙です。今回は、旧約聖書より「出エジプト記」を紹介してみようと思います」

※説明画像①旧約聖書
・描かれた年代…前15世紀~前4世紀頃?
・成立年代………前6世紀~前4世紀頃?それ以前は旧約聖書の内容は口承により伝えられていたか。
・諸文書…………「創世記」「出エジプト記」ほか、全39巻。

「旧約聖書!ユダヤ教、キリスト教の正典であり、世界最大のベストセラーと言われている書物ですね」
「そうですね。旧約聖書は全39巻から成り、私たち一般人にはとっつきづらいですが、
そのうち最初の2巻である「創世記」「出エジプト記」は岩波文庫から出版されており、
天地創造、アダムとエバ、楽園追放、ノアの洪水、イスラエル人のエジプト脱出、モーセの海割り、十戒(10のタブー)など、
有名なエピソードが多数収録されていますね。
ちなみに、新約聖書はキリスト教の正典であり、イエス・キリストの生涯や、その弟子たちの手紙が収録されているそうです。
「今回は、旧約聖書のうち「出エジプト記」、とくにモーセという人物を採り上げようというのですね」
「はい。「出エジプト記」は、歴史書であり、信仰の書である同時に、エンタメ作品としても楽しめる内容となっています」
「それではさっそく行ってみましょう!」

※リピート1回目
※説明画像②旧約聖書
・「創世記」の内容
神による天地創造、アダムとエバの楽園追放、ノアの洪水、etc...
・「出エジプト記」の内容
イスラエル人のエジプト脱出、モーセの海割り、十戒(10のタブー)、etc...
各シーンを通じて、モーセという人物が活躍する。

「こんにちは。魔理沙です。今回は、旧約聖書より「出エジプト記」を紹介してみようと思います」
(霊夢、無言で魔理沙を見る)「……。霊夢です…。」
「旧約聖書は全39巻から成り、長すぎて全部読むのは大変ですが、
そのうち第2巻目である「出エジプト記」は岩波文庫から出版されており、
イスラエル人のエジプト脱出、モーセの海割り、十戒(10のタブー)など、
有名なエピソードがたくさん収録されていますね。
イスラエル民族を代表するモーセと、帝国を統べるファラオとの手に汗にぎる交渉など、
劇的なシーンも多く、エンタメ作品としても楽しめる内容となっています」
「それではさっそく行ってみましょう!」


※説明画像③モーセ
・イスラエル(ユダヤ)民族のリーダー。
・ 旧約聖書「出エジプト記」の中心的人物である。
・実在したとすれば、紀元前13世紀頃に活躍したと推測されている。

「さて、今回採り上げるモーセという人物について、簡単にまとめてみます。
モーセとはユダヤ民族のリーダーであり、旧約聖書「出エジプト記」に登場する伝説上の人物です。実在したとすれば、紀元前13世紀頃に活躍したと推測されています。当時は政治と宗教が不可分であったので、モーセはユダヤ民族を取りまとめる政治的リーダーであると同時に、神様の声を聞く宗教的カリスマでもあったといえそうです。」
「神様の声を聞いて、みんなに教える人。いわゆる預言者ですね。」
「そうですね。ところで、モーセという人物についてですが、簡単に紹介してみようと思います。
モーセはユダヤ民族の指導者であり、「出エジプト記」に登場する神話上の人物です。実在したとすれば紀元前13世紀頃に活躍したと推測されています。当時は政治と宗教が不可分であったため、モーセはユダヤ民族を取りまとめる政治的リーダーであると同時に、神様の声を聞く宗教的カリスマでもあったといえそうです。」
(霊夢、2度目リピートの魔理沙を無言で見る)
「……。」

「モーセは古代エジプトの地で誕生したとされています。
モーセは生まれた直後、古代エジプトの王であるファラオの命令によって殺されかけましたが、運よく一命を取りとめたそうです。赤ちゃん時代のモーセは、パピルスという植物で作った籠に入れられて、ナイル川に流されました。すると運良く、エジプト王家の関係者に拾われたそうです。」
「この辺りのストーリーは、日本の桃太郎に似ていますね。おばあさんが川で洗濯をしていると、どんぶらこ、どんぶらこ…と、大きな桃に入った男の子が流れてきた。やがてその男の子は成長し、民族を救う英雄となったっていう。」

(1回目、2回目の重複はスルー。3回目で霊夢がツッコむ)
「そうですね。「高貴な人物が川に捨てられるが、運よく助かり修行してパワーアップ、そして故郷に帰って大活躍……」という物語パターンは、貴種流離譚と呼ばれ、洋の東西を問わず各地で見られますね。
さて、今回採り上げるモーセという人物についてですが、モーセは古代エジプトの地で誕生したとされています。
当時、エジプト帝国内で増えすぎたイスラエル民族の人口増加を抑制するため、古代エジプトの王であるファラオは、イスラエル民族に対して、新たに生まれた子供をナイル川に流すようにと命じました。
イスラエル人の子供として生まれたモーセは、パピルスという植物で作った籠に入れられ、ナイル川に流されたのですが、運良く、エジプト王家の関係者に拾われ、一命を取りとめたそうです。このような物語パターンは、貴種流離譚と呼ばれ……」
「あの~、ちょっといいですか?」
「なんですか?」
「私のカン違いだったら申し訳ないんだけど…。さっきから、同じパートを2回繰り返している気がするんですけど……」
「気のせいじゃないですよ。さっきから同じパートを2回繰り返していますよ。」
「いったい何のために……」
「現存する旧約聖書は、J資料、P資料など複数の文書をひとつにまとめたものだと考えられています。そのため、重複する部分が発生するんですよね。
たとえば「創世記」の第1章で神は天地を造ったあと、第2章で神は再び天地を造っています。これは神様が記憶喪失でうっかり世界を2度造ってしまったわけではなくて、P資料に伝わる天地創造と、J資料に伝わる天地創造、2つのエピソードを並べて配置した結果、重複が生じたと考えられているのですね。このような記述の重複は、旧約聖書の至るところに見られます。」
「なるほど、そういうことだったのですね。旧約聖書に則って、私たちの会話も一部重複していたのですね。この動画もJ資料、P資料など複数の資料を突き合わせることによって……って、リアルさを追求する方向が間違っていませんか?私たちが同じやり取りを何度も繰り返していると、視聴者に編集ミスだと思われるでしょうが。」
「または尺稼ぎだと思われるかもしれませんね。」
「うるさい。自覚してるならやめなさい。」


※画像:ヤフべえ(妖夢)を画面中央に大きく表示させよう
「そんなわけで、モーセは預言者なので、神様の声を聞くことができます。画面中央に見えますのが、万物の創造主、ヤフべえです。」
「創造主の名前が間違っているような気がするんですけど。」
「一般的には神様の名前はヤハウェと呼ばれていますね。
旧約聖書は主に古代ヘブライ語で記されており、神様の固有名は「YHWH」という4文字で表記されていますが、
神様の名前を軽々しく口に唱えるのは不敬なので、
正式名称を唱えるのを避け、「アドナイ(わが主)」などと言い換えた結果、
本来の呼び方が失われてしまったそうです。」
「古代ヘブライ語は子音のみで表記され、母音は読者が慣習に従って適宜補って読んでいましたが、古代ヘブライ語が死語となり、話せる人がいなくなった結果、旧約聖書を記した古代ヘブライ語の話者たちが、当時、「YHWH」という4子音にどのような母音を補って読んでいたのか、分からなくなったということですね。
そして現代の研究では、おそらく「ヤハウェ」、
またはそれに近い呼び方をしていたのだろうと
推測されているのですね。」
「ちなみに「エホバ」という神名も、この「YHWH」に由来するらしいです。」
「そうすると、この動画では政治的配慮のつもりで、
神の名前を「ヤフべえ」に変えてみたけど、
もしかするとホントに「ヤフべえ」と呼んでいたかもしれませんね。」
「(食い気味に)それはないと思う。」
「…まあ、冷静に考えると、3000年以上も昔のエピソードが
現代に伝わっているというのは、メチャクチャすごいですけどね。」

(ヤフべえ登場、または画面中央に表示された妖夢の大きめ図解から会話に入ってくる)
「僕の名前はヤフべえ。よろしくね。」
「うわあああ。いきなり会話に入って来たのでビックリしたああ。」
「モーセ君、お困りのようだね。相談に乗るよ。」
「……。」
「モーセ君、強制労働させられて困っているようだね。僕で良かったら相談に乗るよ。ねえ、モーセ君。」
「え、私がモーセなの?」
「あなたがモーセ君って呼ばれてるんだから、あなたがモーセ君なんだよ。」
「小泉進次郎みたいな話し方しやがって……。」
「モーセ君。たしかに残業不払い、有給未消化、これは大問題だね。働き方改革などわが社には関係ありませんって、ふざけるなって話だよね。
ときには休息も必要だよ。」
「魔理沙、こいつをなんとかしろ。」
「…(スルー)…」
「どうせ有給休暇取得の理由を上司に問いつめられて困ってるんだろう?
有給取得の理由など「私用のため」で押し通せばいいんだ。
それで無理なら労基に駆け込みますよ、っておどす。これでOKだね!」
「あのー。時代が色々混ざってますけど。」
「どう違うんだい?」
「「出エジプト記」によれば、モーセはエジプトで強制労働させられていた仲間たちを率いて、
エジプト脱出を成功させた英雄とされています。」
「そうか。君たち奴隷一族も大変なんだね。
でも僕が来たからには安心だよ。あ!思い出した。」
「何ですか急に?」

※回想シーン用画像、妖夢は宗教書から回想画像に移動

「はるか昔のことである……」
「なんか回想シーン始まった。」
「昔、昔のその昔、ヤフべえはこの世界を造った。
そのあと何か色々あって、君のご先祖様と契約したんだ。
君たち一族を約束の地に連れて行ってあげるってね。
「助けて、ヤフべえ」という君の嘆きの声を聞いて、
僕ははっきりと思い出した。今、思い出した。」
「「助けて、ヤフべえ」なんて、一言も言ってませんけど。」
「こんなところでグズグズしている暇はない。
君の仲間たちを率いて、今すぐエジプトを
脱出しようではないか。ねえ、モーセ君。」

「そうだ。いいものがある。魔法の杖!」
「魔法の杖?」
「この杖を使うとね…チンカラホイ!」
「あ、杖がヘビになった。」
「これでファラオとの交渉もバッチリだね。
ファラオをビビらせてやれ!」
「こんなので上手く行くのか…?」
「さあ、何をやってるんだ。
早くファラオのところに行くんだ。」
「「早くファラオのところに行くんだ」って言われても。
ファラオは一体どこに……。」
(霊夢と妖夢、魔理沙を見る)
「ねえ、そこのファラオさん。お話があるんですけど……。」
「え、私がファラオを演じるの?」
「実は私たち奴隷一族はですね……。」
「分かったよやりますよ。私がファラオ役をやりますよ。」

※ファラオとモーセは宮廷背景に移動する。

①蛇
「名を申せ。」
「名はモーセ。」
「名を申せ。」
「だから、私の名前がモーセなの。」
「何の用かな、奴隷代表のモーセ君。」
「えーとですね。エジプトの王・ファラオ様。
私たち奴隷一族は困っているのです。」
「それで?用件を言いなさい。」
「私たちの神・ヤフべえをまつる儀式を執り行いたいので、
3日間だけお休みを頂きたいのです。」
「お休みが欲しいだって?うまいこと言って……
神をまつる儀式を行いたいというのは建前上の理由であり、
どうせ仕事をさぼるためにでっちあげた口実なのでは?
そして隙を見て逃亡するつもりなのでは?」
「いえ、そんなつもりでは……」
「エジプト帝国には多数の民族が住んでいる。
もし君たち一族にのみ特例として領土外での儀礼を認可すると、
他の民族は不満を抱くだろう。
なぜモーセ一族だけ特別扱いするのだ、と。そうすると、他の民族の要求をも認めなければならなくなってしまう。ひいては帝国の秩序を維持できなくなってしまう。
というわけで、君の要求を却下する。」
「そこをなんとか」
「ダメ。ごちゃごちゃ言ってると、君たち奴隷一族の労働量を2倍に増やすよ。」
「ファラオ様。たとえ奴隷だからと言って、
私たち一族をあんまり舐めてもらっては困りますね。」
「ほう、えらく強気だね。」
「これを見ても同じことが言えますか?」
(杖を取り出す)
「何をはじめようというのだ?」
「チンカラホイ!」
(杖がヘビに代わる)
「どうだ!」
「どうだって言われても…。
面白い手品だね、としか…。
じゃあ、明日から労働量2倍ね。」
「そんな……」
「手品の練習するヒマがあったら、もっと働けるでしょ。」

(大臣の人、登場)
「心中お察しします。あなた方の提案は逆効果でしたね。」
(大臣の人、退場)

(ファラオは画面外に退場。モーセはヤフべえのいる背景に移動)

「ヤフべえ。断られたよ。
魔法の杖作戦、まったく通用しなかったよ。」
「そうか。じゃあ、僕にいい考えがある。この杖を使うとね…。チンカラホイ!」
「あ、杖がヘビになった。」
「これでファラオとの交渉もバッチリだね。」
「それ、さっきやったから。」
(魔理沙ファラオ、画面にスライドして登場)
「旧約聖書はP資料、J資料が重複しており……」
「ファラオはこっちに入ってこないで!」
ヤフべえ「名付けて、魔法の杖を蛇に変えてファラオをビビらせちゃえ作戦だ!
この作戦を、君のお兄さんであるアロンに実行させるんだ。」
「誰がやっても一緒だから!
そんな子供だましみたいな……。」
「じゃあ、ファラオの奴にこう言ってやれ。
「この杖でナイル河の水を打ち、水を血に変え、
臭くして、魚の住めない河にしてやるぜ」ってね。」
「赤潮的なやつ?めっちゃ迷惑行為。」
「さあ、早く行くんだ。」

②ナイル
(モーセ、隣の宮廷背景に移動。ファラオとモーセの交渉)

「なんだ、また来たのか。」
「ファラオ様、お願いがあります。
私たちの神ヤフべえをまつる儀礼を執り行うため、
3日間のお休みを頂きたいのです。」
「だからダメだって言ってるじゃないの。
君たち奴隷一族には労働の義務が課せられている。
わがエジプトの生産性向上に貢献してもらわなくては……。」
「私たちの願いを聞き入れてくれなければ、
ナイル川がとんでもないことになっても知りませんよ。」
「何をはじめるつもりだ。」
「チンカラホイ!」
(モーセ、杖を振る)
(大臣の人、登場)
「ファラオ様、大変です。ナイルが赤く染まり、臭くなり、魚の住めない河になっています。」
「まさか、モーセの仕業なのか?」
「どうでしょう。エジプト国内では、
「ナイルの異変を引き起こしたのは私だ」という自称・超能力者や、
「ついに世界の終わりが訪れたのだ」などという
自称・預言者が続出しているようですが……。」

③カエル
(モーセ、ヤフべえのいる背景に移動。
ヤフべえ、1度目の巨大化)
「ホントにナイル河に異変が生じているみたいだけど、
こんなことして大丈夫なのかな……
って、でかくね?」
「モーセ君、僕にいい考えがある。
ファラオの奴にこう言ってやるんだ。
「この杖でナイル河の水を打ち、水を血に変え、臭くして、
魚の住めない河にしてやるぜ」ってね。」
「それ、さっきやったから。」
(魔理沙ファラオ、画面にスライドして登場)
「旧約聖書はP資料、J資料が重複しており……。」
「ファラオはこっちに入ってこないで!」
ヤフべえ「名付けて、魔法の杖でナイル河を腐らせて
ファラオをビビらせちゃえ作戦だ!
この作戦を、君のお兄さんであるアロンに実行させるんだ。」
「ていうか、私は兄弟がいる設定なの?」
「弟モーセは超能力者。兄アロンは口達者。
君たち兄弟の見事なコンビネーションで、ファラオと交渉するんだ。」
「兄がいなくてもストーリーは成立するので、
できれば今回は兄弟なしでお願いしたいんですけど。」
「構わないよ。今回は兄弟なしバージョンで行ってみよう。
モーセ君、きみ一人の力でファラオに立ち向かうんだ。」
「どうやって立ち向かえばいいの?」
「ファラオの奴にこう言ってやれ。
「もし儀礼を許可しなければ、この杖でカエルを大量発生させてやる」ってね。」

(モーセ、ファラオとの交渉背景に移動)
「君もしつこいね。何度来ても一緒だよ。」
「ファラオ様、お願いがあります。
私たちの神ヤフべえをまつるための儀礼を執り行うため、お休みをください。
もし認めてくれなければ、この国にカエルが大量発生します。」
「そんなこけおどし、私には通用しないよ。」
「チンカラホイ!」
(大臣の人、登場)
「ファラオ様、大変です。エジプト中にカエルが大量発生しています。」
「まさか、ナイルの腐敗、カエルの大量発生…
すべてはモーセの仕業なのか?
分かった、儀礼を許可するから、はやく何とかしてえ。」
「いいでしょう。
ナイルの腐敗とカエルの大量発生よ、元に戻れえ!」
ファラオ「あ、戻すときは呪文じゃないのね。」
大臣の人「ファラオ様、ナイルの水がきれいになり、カエルが消滅しました。」
モーセ「さあ、約束通り、儀礼の許可を。」
ファラオ「儀礼?さて、何のことかな~?」
モーセ「約束が違うじゃないですか!」

④ぶよとあぶ
(モーセ、ヤフべえのところに移動)
「ヤフべえ、またファラオに断られちゃったよ~」
「じゃあ明日、ファラオにこう言ってやれ。
僕をまつる儀礼を許可しなければ……
カエルを大量発生させてやるぜ、てね。」
「カエルはさっきやったから!なんで毎回、記憶がリセットされてるの?この神様の会話力、一昔前のAIレベルなんですけど。」
「じゃあ明日、ファラオにこう言ってやれ。
僕をまつる儀礼を許可しなければ、
ぶよとあぶを大量発生させてやるぜ、てね。」
「害虫の種類が変わっただけの気もするけど、まあいいや。」

(モーセ、モーセ、ファラオとの交渉背景に移動)
「ファラオ様、お願いがあります。
私たちの神ヤフべえをまつるための儀礼を執り行うため……」
「ダメ。」
「もし認めて頂かなければ、ぶよとあぶが大量発生します。」
「口から出まかせ言いやがって。モーセの癖に生意気だぞ。」
「チンカラホイ!」
(大臣の人、登場)
「ファラオ様、大変です。
ぶよとあぶが大量発生しています。」
「まさか…モーセの仕業なのか?
分かった、儀礼を許可するから、はやく何とかしてえ。」
「いいでしょう。元に戻れえ!」
ファラオ「あ、そこは呪文じゃないのね。」
大臣の人「ファラオ様、ぶよとあぶが消滅しました。」
モーセ「さあ、約束通り、祭りの許可を。」
ファラオ「祭り?何のことかな?むっつりなら知ってるけど。」
モーセ「話が違うじゃないですか!」
※ダジャレ1回目

⑤家畜の疫病
(ヤフべえ、2度目の巨大化)
「ヤフべえ、またファラオに
……でかっ!」
「しょうがないなあ。じゃあ明日、ファラオにこう言ってやれ。
儀礼を許可しなければ、馬・ロバ・ラクダ・牛・羊など、
あらゆる家畜に疫病を流行らせ、絶滅させてやる、とね。」
「え?…(絶句)…」
「大丈夫。君たち一族が所有する家畜は助けてあげるからさ。
その代わり、僕の言うことをちゃんと信じるんだよ。さあ、早く行くんだ。」

「ファラオ様、お願いがあります。」
「ダメ」
「チンカラホイ!」
(大臣の人、登場)
「ファラオ様、大変です。馬・ロバ・ラクダ・牛・羊など、
あらゆる家畜に疫病が流行っています。が、
モーセ一族の所有する家畜のみ被害を免れています。」
「まさか…モーセの仕業なのか?」
「どうでしょう。エジプト国内では、
「私はずっと前から警鐘を鳴らしていた。
こうなることは私には分かっていた。
人々の不信心が今回の悲劇をもたらしたのである」という自称・預言者や、
「家畜の疫病を引き起こしたのは私だ」
などという自称・超能力者が続出しているようですが……。」
「なんだそれ。モーセ、君も超能力者なら、何とかしてよ。」
「じゃあ、ヤフべえ祭の開催を認めて頂けるのですね。」
「認めるから、はやく何とかしてえ。」
「いいでしょう。元に戻れえ!」
大臣の人「ファラオ様、家畜の疫病が完全に終息しました。」
モーセ「さあ、約束通り、お祭りの許可を。」
ファラオ「お祭り?何のことかな?お股割りなら知ってるけど。」
モーセ「話が違うじゃないですか!」
※ダジャレ2回目

⑥ヒト・家畜の皮膚病
「ヤフべえ~」
「モーセ君、またファラオに断られたのかい?」
「なんだか、君がドラえもんにしか見えなくなってきたんですけど。」
「え?今、何て言った?」
「だから、君の姿がドラえもんにしか
見えなくなってきた。」
「第二戒、偶像崇拝の禁止。
汝、神であるヤフべえの姿を描いてはならないし、見てはならない。
キャラ化するなんてもってのほかである。」
「どうして君の姿を描いてはいけないの?」
「僕は神様なんだよ。
神様はめっちゃすごいんだよ。
超能力とか持ってるし。
そんな神様を安易に見える化してしまうと、
神様のありがたみが薄れてしまうだろう?」
「わかったよ。なんかめんどくさそうだから、
この件に関しては深掘りしないでおくよ。」
「分かればいいんだ。」
「僕は君の姿が見えていないし、
君のキャラクターをグッズ展開して
一儲けしようなんて思っていない。」
「僕の声も聞こえていないよね?」
「うん。君の声も聞こえていないよ
(じゃあ、私は一体誰と話してるんだ?)」

「う~ん。なにかおかしいぞ。」
「どうしたの、ヤフべえ?}
「僕の超能力の効き目がおかしい。
何者かに干渉されているようだ。」
「そういえば、エジプト側にも自称・超能力者がいて、
「家畜の疫病を引き起こしたのは私だ」とか言ってたみたいだよ。
その反対に、家畜の疫病を食い止める超能力者もいるかもしれないね。
白魔術師と黒魔術師みたいな。」
「それだ。そいつらエセ魔術師どもが、
僕たちの邪魔をしているんだよ。
ナイルの異変も、家畜の疫病も、僕たちが引き起こしたのに。
そんな便乗商法みたいな真似をして…。許せない。
よし、明日、ファラオにこう言ってやれ。
僕をまつる儀礼を許可しなければ、炉のすすを天に撒き散らし、
すすが人・家畜の肌に付着して炎症を起こし、腫れものを生じさせてやる、てね。
本物の超能力者は僕たちだけであることを証明するんだ。」

「ファラオ様、お願いがあります。」
「ダメ。」
(杖なし)
「じゃあ私にも考えがあります。」
「ちょっと、君、やめてよ。
部屋にある炉のすすを屋外にまき散らさないでよ。」
「ファラオ様、大変です。天から降ってきたすすが、
人・家畜の肌に付着して炎症を起こしています。
また今回は、エジプト国内の自称・超能力者たちも
皮膚病を患っています。が、モーセ一族のみ被害を免れています。」
ファラオ「もはや魔法の杖は関係なくなってる……。」
「私が何とかしましょう。その代わり、
ヤフべえ祭の開催を認めてくださいね。」
「認めるから、はやく何とかしてえ。」
「いいでしょう。元に戻れえ!」
大臣の人「ファラオ様、全員の皮膚病が完治しました。」
モーセ「さあ、約束通り、祭りのお許しを。」
ファラオ「お許し?何のことかな?お漏らしなら知ってるけど。」
モーセ「話が違うじゃないですか。」
※ダジャレ3回目

⑦雹
「ヤフべえ、またファラオに断られちゃったよ。」
「明日、ファラオにこう言ってやれ、
「モーセ一族の神・ヤフべえは、その気になれば今すぐにでも、
君たちエジプト人をこの地から滅ぼすことだってできるのだ。
明日、激しい雹を降らせよう。
人・家畜への被害を恐れる気もちが少しでも君たちにあるなら、
人・家畜を安全な場所に避難させておけ」とね。」。

「ファラオ様。」
「ダメ。」
(大臣の人、登場)
「ファラオ様、大変です。
エジプト全土に雷・雨・雹が降り、
モーセ一族の居住地のみ被害を免れています。」
「もうたくさんだ。私が悪かった。行ってよし。
ヤフべえ祭でも何でもやってくれ。」
「元に戻れえ。さあ約束通り、祭りの許可を……」
「許可?何のことかな?巨根なら知ってるけど。」
※ダジャレ4回目

⑧イナゴ
(ヤフべえ、ラスト3度目の巨大化)
「ヤフべえ、またファラオに…
ていうか成長しすぎだよ。」
「じゃあ次はイナゴを大量発生させてやろう。
すると僕がファラオの心を頑なにするので……」
「どうしてヤフべえがファラオの心を操作できるのさ?」
「だって全部、僕が仕組んだんだよ。
僕たちの神威を奴らエジプト人どもに知らしめるため、
僕がファラオの心を頑なにして……」
「何言ってるの?君はあくまで私たち民族の神様であって、
いわばローカルな神様でしょう?
いくら君がすごい神様であっても、
エジプト帝国の指導者であるファラオの心を
コントロールすることはできないはずでしょう?」
「何を言ってるんだ。
僕は世界を造った造物主だぞ。
僕はすごいんだぞ。」
「いや、それは後づけ的なヤツで……」

(モーセ、ファラオの宮殿に移動。杖を振らない)
モーセ「……。」
ファラオ「……このくだり、あと何回残ってるの?」
(大臣の人、登場)
「ファラオ様、大変です。イナゴが大量発生しています。
モーセ一族を立ち去らせましょう。
そして彼らの神・ヤフべえへの儀礼を許可しましょう。
このままだと、我がエジプトは滅びてしまいます。」
ファラオ「……」
大臣の人「大地がイナゴに覆われて黒くなっています!
はやく儀礼の許可を!」
ファラオ「まあ……儀礼くらい別にいいけど。」
大臣の人「良かった~。ではモーセさん、
はやくイナゴの大群を駆除してください。」
モーセ「元に戻れえ。」
大臣の人「ファラオ様、イナゴの大群が消滅しました。では約束通り」
ファラオ「イナゴ?オナゴなら私の好物だが……」
※ダジャレ5回目(ラスト)

⑨闇、⑩エジプトの子殺し
(画面が真っ暗に。ファラオの叫び声のみ聞こえる}
「ぎやああああ」
「なんかヤバそうな悲鳴が聞こえるんですけど。」
「さあモーセ君、早くファラオと交渉するんだ。」
「この暗闇も君たちの仕業なのか?」
「はい。たぶん……」
「もう分かったから。君たちはすごい。行ってよし。
ただし、君たちの家畜(羊と牛)は質として置いていってね。」
「どういうことですか?」
「君たち一族が一時的にエジプトから離れて儀礼を行うからには、
必ずエジプトに戻ってくるという証拠を残しておいてもらわなければならない。その証拠として、いわば担保として、家畜をエジプトに預け入れることを私は要求する。」
「それは……
(モーセ、ヤフべえのいる方を振り返る)
でも、家畜がいないと儀礼を行えないのです……」
「う~ん……。じゃあ、こうしよう。
君たちは儀礼のために数頭の家畜を引き連れていき、
残りの家畜をエジプトに残しておけばいいじゃない。」

(モーセではなく、ヤフべえの声)
「申し訳ありませんが、ファラオ様、お断りさせて頂きます。
どの家畜を生贄として選んでヤフべえに捧げるべきか、儀礼がはじまるまで、私たちにも分らないのです。なので、すべての家畜を連れていく必要があります。
もし「家畜を担保としてエジプトに残しておいてほしい」というファラオ様の要求を認めると、儀礼において家畜を使用できなくなってしまいます。
正しいやり方で儀礼を開催できなくなってしまいます。
私たち一族にとって、エジプトの領土外にある聖地で儀礼を行うためには、
すべての家畜の使用が不可欠なのです。
なので私モーセは、ファラオ様の質入れ要求を受け入れることはできません。」
「……失せろ。「ヤフべえ」だなどと、二度と口にするな。
モーセよ、私の前に二度と姿を見せるな。
もし私の前に姿を見せたら、あんたを死刑に処す。」
(ヤフべえの声)
「交渉決裂だね。
さあ、いよいよお待ちかね、10個目の災い、エジプト長子皆殺し事件だね。
最後はパーッと景気よく行きましょう。」
「ヤフべえ、もういいよ。」
「大丈夫、僕を信じて。モーセ君の一族は守ってあげるから。
エジプトの闇夜に生じた長子連続死亡事件の混乱に乗じて、この国を脱出するんだ。」

「もう、やめてよ。」
「どうして?」
「今更だけど、エジプト帝国内には
他の民族も暮らしているってファラオも言ってるし。」
「そんなのダメだよ。やられる前にやらなきゃ。
第一、モーセ君も赤ん坊のときに殺されかけたんだよ。
報復措置として、奴らを絶滅させようね。」

「ヤフべえ、もうやめようよ。誇大妄想が甚だしいよ。」
「モーセの奴、いったい誰と話してるんだ?」

「何を言ってるんだ。今さら引き返せないよ。
この後、エジプト側から追手がやってくる。そして君は海を割るんだよ。
君たち一族がエジプト軍によって
崖っぷちに追いつめられたとき、
君が魔法の杖を一振り。
すると海が真っ二つに割れるという奇跡が起き、
君たち一族は海の底を安全に歩いて向こう岸に到達、
追手のエジプト軍は海に飲まれて全滅するんだよ。
プログラム上、このように定まってるんだよ。
定めを変えることはできないんだよ。

「いや、私たちの味方してくれるのはうれしいんだけど。」
「僕は君たちに約束の地を取り戻すことを誓った。
この先、様々な苦難が待ち構えていることだろう。
2000年後かもしれないし、3000年後かもしれない。
でも、たとえどんなことがあっても、約束は必ず守るから、安心してね。
僕の名前はヤフべえ。僕は君の味方だよ……。」


●エンディングにクレジット表記
§配役
モーセ  霊夢
ファラオ 魔理沙
ヤフべえ 妖夢
大臣の人 さくや

※霊夢・魔理沙・妖夢は黒子さん・ころボンさんゆっくり
さくやはきつねさんゆっくり
配布元/nicotalk&キャラ素材配布所

§参考文献
・旧約聖書 出エジプト記
関根正雄 訳、岩波文庫
・山我哲雄/聖書時代史 旧約篇
岩波現代文庫

§音楽
・ヘンデル/調子の良い鍛冶屋
音源製作・配布元/クラシック名曲サウンドライブラリー

・スカルラッティ/ソナタ集より
 Kk.132 Kk.193    演奏/クララ・ハスキル(1950年録音)
 Kk.259 Kk.1 Kk.64  演奏/アルド・チッコリーニ(1962年録音)
配布元/クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~

                         ※表記は再生順です

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