映画『望み』息子は被害者か?加害者か?:ほぼネタバレ感想―シネマクラッシュ/2024年10月14日
久しぶりの『シネマクラッシュ』です。
8~9月と忙しくて全然更新できてなくてすみませんでした。
前半では美穂さんのオープニングアクトについて、後半では映画『望み』について語ります。
映画ラスト直前までネタバレがあります。結末は書いていませんが未見の方はご注意ください。
また随時加筆・修正も行いますのであらかじめご容赦ください。
オープニングアクト
今回は美穂が怒っています
美穂さんの感情の推移の表現力
今更ながら美穂さんの演技力には脱帽です。
娘が本当に怒っているみたいで、父親に感情移入してドギマギしてしまいますよね。
信用されなかった時の苛立ちと怒りの表情と声の冷たさ、そして最後の悲しそうな顔からの笑顔への微妙な変化。
怒り→悲しみ→喜びと変化していく演技、階段状にデジタルに演じるのはあまり難しくないと思うんですよ、でも今回の終盤の美穂さんは感情の境目がわからない、継ぎ目がない、極めてなだらかでアナログな感情の推移を見事に表現していて非常に感服しました。
映画『望み』につながる親子の相互理解の欠如
オープニングアクトでも頭ごなしに怒るのではなく、きちんと娘の事情を聞くべきでしたし、映画『望み』でも一方的に親の論理を振りかざすのではなく、息子の立場まで降りていって感情的にならずじっくり話を聞いていれば不幸な結果にはならなかったかもしれません。
事情がわからないのに目の前の事象だけで物事を判断するのは良くない!
と、映画『望み』を観る前にしっかり予習させてくれた素晴らしいオープニングアクトでした。
手紙やイラストは美穂の直筆!
BSテレ東のダークボ(@darkbo)さん情報では、オープニングアクトに使われたプレゼントの手紙やイラストは美穂さんの直筆だそうです!
ってことは以前のこちらの放送で出てきたノートもやっぱり美穂さんの直筆ってことだったんですね!?
もうこれから美穂さんの関わる映画やドラマの小道具は美穂さん自筆でいきましょう!
オープニングアクトまとめ
今回は我々視聴者は父親というシチュエーション、おじさんファンはみんな心つかまれたのではないでしょうか?
でも暗い部屋で男の子と二人こもっていたら父親としたら心配するのもわかって!美穂さん~!
こんなに短い時間で満足度の高いドラマ、今回も見ごたえありました。
来週も楽しみにしています!
映画本編『望み』
あらすじ・解説
感想
終盤まで本当につらくてつらくて本当にしんどい映画でした。
でもこのつらさにいつもは目を背けているからこそ無自覚に生きてこれたのであって、犯罪被害者・犯罪加害者の家族の苦悩は現実に存在していますし、自分がいつこのような立場になるかもわかりません。
息子が姿を消し、その後起こった殺人事件の加害者なのか被害者なのかもわからないことも苦しさに拍車をかけます。
そして輪をかけて苦しいのは、常にマスコミに追い回され、近所の人間にスマホを向けられ、嫌がらせをされ、知人が去り、仕事もなくなるというメディアスクラムと風評被害のコンボ。
その中でも一番心に刺さったのが、一級建築士である石川の仕事相手である建設会社社長の高山が、懇意にしている職人の孫が殺された少年であると話し、石川の息子の規士が殺された少年を連れまわしていた―つまり加害者側ではないかと決めつけるシーン。
「みんなそう言ってる」という言葉、日常でも何気なく使っている言葉ですが、今の石川には心臓に突きたてられたナイフのようです。
そうやって苦しむ石川一家、夫婦と妹の気持ちもすれ違っていきます。
犯罪者でも息子に生きていてほしいと望む母親。
犯罪を犯していないことを望む、つまり息子の死を受け入れる父親。
父親と母親の意見の食い違いに悩み、兄の無実を信じる妹。
そんな中、家に訪れ、情報を得たい母親につけこみ、その後も電話取材を続けるジャーナリスト内藤が登場します。
息子が加害者か被害者かどちらでもはっきりしたのちに母親としての心境をインタビューすることを条件に、警察からも得られない情報を母親に伝えます。
息子が加害者か被害者か、その時の母親の心境の触れ幅に興味がある内藤はさながらメフィストフェレスのようです。
もし加害者である場合、10年~15年の実刑で、損害賠償が億単位になると聞かされても、それでも生きていてほしいと話す母親。
これって正直自分がこの立場になったら父親の立場と母親の立場、どちらを取るかわかりません。
加害者であっても最後まで寄り添ってあげるのが親かもしれませんが、これからの人生、息子とともに後ろ指さされながら苦しみつつ生きるのは並大抵なことではありません。
そんな中、ついに主犯格の少年が捕まります。
はたして息子の規士は加害者なのか被害者なのか?
彼の生死は?
そして石川家のその後は?
結末は?
ラストをぼやかしてすみません。
結末は4通り考えられます。
息子は被害者で死んでいる(父親の望み)
息子は加害者で生きている(母親の望み)
息子は被害者だが生きている息子は加害者だが死んでいる
3か4の可能性も当然考えられるのですが、映画内では1を父親、2を母親という二項対立で描き、3と4の可能性には触れられていません。
それはおそらく、犯罪者でも生きている方と、犯罪を犯していないが殺されている方のどちらを選ぶかという視聴者に究極の二択を突きつけ、自分ならどちらを望むかという命題に直面させるという思考実験ではないかと考えます。
社会的立場、親の愛、周囲の環境、様々な要素が絡み合い、おそらく答えはないでしょう。
ただこの映画を観なければ、自分の家族が犯罪に関わった時、どのように感じるかを切実に考えなかっただろうし、真実を報道するという大義名分を持って襲い来るメディアと噂によって安易に人を判断する周囲の人間の醜悪さを直視することもなかったかもしれません。
結末は是非ご自身の目でお確かめください。
最後に
いつも楽しく拝見しているシネマクラッシュで社会問題について考えさせられる映画を鑑賞できて本当にありがたかったです。
このような機会がなければ未見のままだったかもしれません。
BSテレ東と渡邉美穂さんのおかげですね。
これからも素晴らしい映画と出会えるきっかけとしてシネマクラッシュ、応援しています!
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