記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

映画『望み』息子は被害者か?加害者か?:ほぼネタバレ感想―シネマクラッシュ/2024年10月14日

 久しぶりの『シネマクラッシュ』です。

 8~9月と忙しくて全然更新できてなくてすみませんでした。

 前半では美穂さんのオープニングアクトについて、後半では映画『望み』について語ります。

 映画ラスト直前までネタバレがあります。結末は書いていませんが未見の方はご注意ください。

 また随時加筆・修正も行いますのであらかじめご容赦ください。




オープニングアクト

今回は美穂が怒っています

美穂:「ねえ、勝手に人の部屋入ってきて、友達に帰れなんて言うのひどくない?」
父:「お前が悪い。怪しいことをしてるから」
美穂:「はあ、怪しいことって……、そりゃあ暗い部屋に男の子と二人きりでいたら怪しく見えるかもしれないけど……あれはテストをしていただけなの」
父:「どうして部屋が暗いんだ」
美穂「それは……私のこと信じてくれないんだね……、それじゃ今夜の『望み』のお父さんと一緒じゃん」
美穂:「きっと息子を守りたくて切り出しナイフを預かったのかもしれないけど、あの時の息子の気持ち、今ならよくわかる」 
手に持っていたものをテーブルに投げ出して 「もういいよ!」と部屋を出ていく美穂
袋からはみ出たものは父への手紙とキャンドル
父:「テストってこれの…」
中身は父へのねぎらいの言葉
父「俺のことを想って…美穂!」
戸口に帰ってくる美穂「なに?」
父:「映画…一緒に観よ」
美穂、悲しげな顔から……
少し泣きそうな顔になって……「いいけど」
「ふふ」顔をほころばせる美穂



美穂さんの感情の推移の表現力

 今更ながら美穂さんの演技力には脱帽です。

 娘が本当に怒っているみたいで、父親に感情移入してドギマギしてしまいますよね。

 信用されなかった時の苛立ちと怒りの表情と声の冷たさ、そして最後の悲しそうな顔からの笑顔への微妙な変化。

 怒り→悲しみ→喜びと変化していく演技、階段状にデジタルに演じるのはあまり難しくないと思うんですよ、でも今回の終盤の美穂さんは感情の境目がわからない、継ぎ目がない、極めてなだらかでアナログな感情の推移を見事に表現していて非常に感服しました。



映画『望み』につながる親子の相互理解の欠如

 オープニングアクトでも頭ごなしに怒るのではなく、きちんと娘の事情を聞くべきでしたし、映画『望み』でも一方的に親の論理を振りかざすのではなく、息子の立場まで降りていって感情的にならずじっくり話を聞いていれば不幸な結果にはならなかったかもしれません。

 事情がわからないのに目の前の事象だけで物事を判断するのは良くない!

と、映画『望み』を観る前にしっかり予習させてくれた素晴らしいオープニングアクトでした。


手紙やイラストは美穂の直筆!

 BSテレ東のダークボ(@darkbo)さん情報では、オープニングアクトに使われたプレゼントの手紙やイラストは美穂さんの直筆だそうです!

ってことは以前のこちらの放送で出てきたノートもやっぱり美穂さんの直筆ってことだったんですね!?

 もうこれから美穂さんの関わる映画やドラマの小道具は美穂さん自筆でいきましょう!



オープニングアクトまとめ

 今回は我々視聴者は父親というシチュエーション、おじさんファンはみんな心つかまれたのではないでしょうか?

 でも暗い部屋で男の子と二人こもっていたら父親としたら心配するのもわかって!美穂さん~!

 こんなに短い時間で満足度の高いドラマ、今回も見ごたえありました。

 来週も楽しみにしています!



映画本編『望み』

あらすじ・解説

高校生の息子が消えたその日、同級生が殺された。息子は共犯者なのか、被害者なのか―。父、母、妹―それぞれの望みが交錯する。

Story ストーリー
一級建築士の石川一登かずと(堤真一)とフリー校正者の妻・貴代美(石田ゆり子)は、一登かずとがデザインした邸宅で、高一の息子・規士ただし(水上恒司)と中三の娘・みやび(清原果耶)と共に幸せに暮らしていた。規士ただしは怪我でサッカー部を辞めて以来遊び仲間が増え、無断外泊が多くなっていた。高校受験を控えたみやびは、一流校合格を目指し、毎日塾通いに励んでいた。冬休みのある日、規士ただしは家を出たきり帰らず、連絡すら途絶えてしまう。翌日、一登かずとと貴代美が警察に通報すべきか心配していると、同級生が殺害されたというニュースが。警察の調べによると、規士ただしが事件に関与している可能性が高いという。行方不明者は3人。そのうち犯人とみられる逃走中の少年は2人。息子の無実を望む一登かずとと犯人であっても生きていて欲しいと望む貴代美。果たして規士ただしは犯人なのか…!?

Commentary 解説
幸せに暮らしていた4人家族。そんな中、長男が怪我で部活をやめたことから、遊び仲間が増え、無断外泊も多くなっていく。ある夜、息子が家を出たきり連絡が途絶え行方不明に。そして翌朝、息子の同級生が遺体で発見され、息子が事件に関与している可能性が高まる。息子は被害者なのか、加害者なのか…。苦悩し葛藤を深めていく家族の姿を描く。人気作家・雫井脩介による同名小説を「トリック劇場版」シリーズの堤幸彦が映画化したサスペンス・エンタテインメント。出演は堤真一、石田ゆり子、水上恒司、清原果耶。


感想

 終盤まで本当につらくてつらくて本当にしんどい映画でした。

 でもこのつらさにいつもは目を背けているからこそ無自覚に生きてこれたのであって、犯罪被害者・犯罪加害者の家族の苦悩は現実に存在していますし、自分がいつこのような立場になるかもわかりません。

 息子が姿を消し、その後起こった殺人事件の加害者なのか被害者なのかもわからないことも苦しさに拍車をかけます。

 そして輪をかけて苦しいのは、常にマスコミに追い回され、近所の人間にスマホを向けられ、嫌がらせをされ、知人が去り、仕事もなくなるというメディアスクラムと風評被害のコンボ。

 その中でも一番心に刺さったのが、一級建築士である石川の仕事相手である建設会社社長の高山が、懇意にしている職人の孫が殺された少年であると話し、石川の息子の規士ただしが殺された少年を連れまわしていた―つまり加害者側ではないかと決めつけるシーン。

石川:「誰がそう言ってたんですか?」

高山:「みんなそう言ってるよ!」

 「みんなそう言ってる」という言葉、日常でも何気なく使っている言葉ですが、今の石川には心臓に突きたてられたナイフのようです。

 そうやって苦しむ石川一家、夫婦と妹の気持ちもすれ違っていきます。

 犯罪者でも息子に生きていてほしいと望む母親。

 犯罪を犯していないことを望む、つまり息子の死を受け入れる父親。

 父親と母親の意見の食い違いに悩み、兄の無実を信じる妹。

 そんな中、家に訪れ、情報を得たい母親につけこみ、その後も電話取材を続けるジャーナリスト内藤が登場します。

 息子が加害者か被害者かどちらでもはっきりしたのちに母親としての心境をインタビューすることを条件に、警察からも得られない情報を母親に伝えます。

 息子が加害者か被害者か、その時の母親の心境の触れ幅に興味がある内藤はさながらメフィストフェレスのようです。

 もし加害者である場合、10年~15年の実刑で、損害賠償が億単位になると聞かされても、それでも生きていてほしいと話す母親。

 これって正直自分がこの立場になったら父親の立場と母親の立場、どちらを取るかわかりません。

 加害者であっても最後まで寄り添ってあげるのが親かもしれませんが、これからの人生、息子とともに後ろ指さされながら苦しみつつ生きるのは並大抵なことではありません。

 そんな中、ついに主犯格の少年が捕まります。

 はたして息子の規士ただしは加害者なのか被害者なのか?

 彼の生死は?

 そして石川家のその後は?



結末は?

 ラストをぼやかしてすみません。

 結末は4通り考えられます。

  1. 息子は被害者で死んでいる(父親の望み

  2. 息子は加害者で生きている(母親の望み

  3. 息子は被害者だが生きている

  4. 息子は加害者だが死んでいる

 3か4の可能性も当然考えられるのですが、映画内では1を父親、2を母親という二項対立で描き、3と4の可能性には触れられていません。

 それはおそらく、犯罪者でも生きている方と、犯罪を犯していないが殺されている方のどちらを選ぶかという視聴者に究極の二択を突きつけ、自分ならどちらを望むかという命題に直面させるという思考実験ではないかと考えます。

 社会的立場、親の愛、周囲の環境、様々な要素が絡み合い、おそらく答えはないでしょう。

 ただこの映画を観なければ、自分の家族が犯罪に関わった時、どのように感じるかを切実に考えなかっただろうし、真実を報道するという大義名分を持って襲い来るメディアと噂によって安易に人を判断する周囲の人間の醜悪さを直視することもなかったかもしれません。

 結末は是非ご自身の目でお確かめください。



最後に

 いつも楽しく拝見しているシネマクラッシュで社会問題について考えさせられる映画を鑑賞できて本当にありがたかったです。

 このような機会がなければ未見のままだったかもしれません。

 BSテレ東と渡邉美穂さんのおかげですね。

 これからも素晴らしい映画と出会えるきっかけとしてシネマクラッシュ、応援しています!

(END)


いいなと思ったら応援しよう!

鰹節のうまみ
よろしければサポートお願いします!いただいたサポートは当noteの維持・渡邉美穂さんへの応援に使用させていただきます!