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がん治療と家計――治療費の実例と支援制度を知って未来を守る

夫が大腸がんステージⅣと診断されたとき、
私たち家族は大きな不安に包まれました。

「病気とどう向き合うか」だけでなく
「治療費をどう乗り越えるか」という課題にも直面したのです。

この記事では、私たちが経験した治療費の実例や
利用した支援制度、自治体独自のサポートなどを具体的にご紹介します。

これから治療を始める方やそのご家族が、
家計のシミュレーションを立てやすくなるようお役立てください。


治療費の内訳と家計への影響

1. 抗がん剤治療(BEACON療法)開始後の支出例(月間)

  • 病院での外来治療費:8万円

  • 薬局での内服薬費用:8万円

  • 合計16万円/月

外来治療では限度額適用認定証を利用しても、
新しい治療薬を使う場合はこれだけの費用がかかります。

夫の場合、この治療が1年間続き、
年間で約200万円の支払いが必要となりました。


2. 現在の訪問診療の費用例(月間)

  • 訪問看護と訪問診療:1万2,000円

  • 2週間に1度の内服薬費用:1万2,000円

  • 合計3万6,000円/月


家計シミュレーション:1年間の治療費イメージ

抗がん剤治療(外来治療)

  • 16万円/月 × 12カ月=約192万円

  • 年末調整や医療費控除での還付:50万円前後(世帯収入による)

  • 実質負担額:約140万円

訪問診療(終末期在宅療養)

  • 3万6,000円/月 × 12カ月=約43万2,000円

治療方法や段階によって家計への影響がこれほど異なります。
早い段階で治療計画を立てることが大切です。


若年者向けターミナル支援事業

現在、一部の自治体では、
18~40歳未満の末期がん患者を対象とした
ターミナルケア支援事業を実施しています。

この制度は、自宅療養を支えるために
訪問介護や在宅医療の費用を助成するものです。

以下にいくつかの事例をご紹介します:

1. 姫路市(兵庫県)

  • 支援内容:訪問介護や福祉用具貸与の利用料を月額上限6万円まで助成。利用者は1割負担。

2. 神戸市(兵庫県)

  • 支援内容:訪問介護や福祉用具貸与、在宅医療機器購入費などを9割助成。月額上限10万円。

3. 西宮市(兵庫県)

  • 支援内容:訪問介護や福祉用具貸与に対し、月額上限6万円まで助成。1割自己負担。

4. 大阪市(大阪府)

  • 支援内容:訪問介護や福祉用具貸与の利用料を9割助成。月額上限6万円。

これらの支援を利用することで、
家計の負担を軽減し、自宅で穏やかに
過ごすための環境を整えることができます。


傷病手当金の申請とタイムラグ

治療中に仕事を休む場合、傷病手当金は重要な支援制度です。
ただし、申請から受給までには1~2か月程度のタイムラグがあります。

医師の証明や勤務先の書類作成が必要なため、
以下の点に注意しましょう

  • 早めの手続きが大切:申請書類の記入や提出に時間がかかる場合があります。保険組合によって記入方法が違うため、事前に確認しておくといいです。

  • タイムラグに備える家計計画:緊急予備資金や家族との相談を通じて、生活費をカバーできる準備を。


公的支援制度と保険の活用

治療費を抑えるために活用した制度や保険をご紹介します:

1. 限度額適用認定証

治療費の上限が所得に応じて設定される制度。
例えば、年収370~770万円の場合の限度額は
**80,100円+(総医療費-267,000円)×1%**です。

2. 高額療養費制度

年間の医療費が一定額を超えた場合、超過分が払い戻されます。

3. 医療費控除

確定申告で通院交通費や薬局での支払いを申請することで、
所得税の還付を受けられます。

4. 任意保険

夫は加入していた保険で「がん診断一時金」として
500万円を受け取りました。

また、入院時には1日5,000円の給付もありました。

ただし、訪問看護や外来化学療法には適応していなかったため、
その部分は残念でした。


AYA世代が抱える課題

AYA世代(15~39歳)は、子育てや住宅ローンや奨学金返済など、
生活費の負担が大きい一方で、社会保障が十分ではありません。

一部自治体の支援策はモデルケースとして注目されていますが、
まだ全国に広がるには課題が多いのが現状です。

私が病院勤務時代に見た夫婦の中には、
経済的負担を分散するために離婚を選び、
内縁関係を結ぶ方もいました。

今回の経験を通じて、家計を守る選択肢について深く考えさせられました。


これから治療を始める方へのアドバイス

1. 公的支援制度を活用する

限度額適用認定証や高額療養費制度を利用し、負担を軽減しましょう。

2. 保険内容を見直す

がん診断一時金や入院給付金が含まれる保険を確認し、
不足があれば追加加入を検討。

3. 相談窓口を利用する

病院や市区町村の福祉窓口で、利用可能な支援制度を確認しましょう。


まとめと未来への備え

がん治療は、本人だけでなく家族全体にとって試練です。
治療費や家計の不安に向き合う中で、
支援制度や保険を活用することが大きな助けとなります。

この記事が、同じような状況にある方々の一助となり、
前向きな一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。

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