言い方と聞き方
一般に、誰かと話す時、「言い方」というのは重要視される。
何かを伝えるとき、相手に聞き入れてもらいやすい表現を選ぶことが大切だ、という意味である。
素直に聞いてもらえる表現をしましょう、とも言える。
例えば、自分の仕事を代わりにやってくれた人から、
「君にはできないだろうからやっておいたよ。」と言われるのと
「君が忙しそうだからやっておいたよ。」と言われるのでは、同じ行為であっても相手に持つ印象は異なるだろう。
また、「言っていることは間違っていないけれど、言い方がちょっと…」という理由で聞き入れてもらえなければ、悪い印象を与えるだけの結果となるし、時間の無駄である。
これに対して「聞き方」を指摘される場合は極めて少ない。
相手が話しやすいと感じる態度を保ちましょう、ということだ。
僕はこちらのほうが「言い方」よりも大切だと考えている。あくまで自分の利益のみにスポットをあてた場合だが。
基本的に他者からの意見や指摘というのは、自分以外の考え方や視野に触れる機会を与えてくれるものである。
だから、まずは自分の中に受け入れて内容を吟味することが重要である。
それに、相手を完全にコントロールすることはできないのに、いちいち自分にとって心地よい「言い方」を求めていては、肝心の内容に触れる時間が減ってしまう。
気持ちよく話させることができれば、その後の人間関係が広がるかもしれないし、本題から脱線したところから新たな知識を得ることもあるかもしれない。
まずは素直に聞きましょう、ということである。
内容についての賛否はそのあとで判断すればよい。
言い方を咎めて内容に触れないのは、プレゼントの包装にケチをつけて箱を開けないようなものである。
代表的な例として国会中継が挙げられる。
そこでのやりとりのほとんどは、言い方を論って本題の議論を先延ばしにしているだけである。
学校の授業で生徒に見せるのもいいかもしれない。
あくまで、反面教師としてだが。
いかがでしょうか。