食のSDGs(持続可能な開発目標)達成のために何ができるのか・・・
SDGsは、Sustainable Development Goals (持続可能な開発目標)の略です。2015年ニューヨーク国連本部においてサミットが開かれ、未来に向けて持続可能な開発目標がつくられました。全ての国連加盟国が2030年までに達成を目指し、貧困や環境等1~17の分野にわたる目標と169のターゲットが盛り込まれています。
これに関心がある私は、昨日2月15日に、食とSDGsについて考える「食でつくる持続可能な社会」と題しての講演会に参加してきました。
そもそも国連が提唱しているSDGs「持続可能な社会」とは
一言でいうと
将来の世代のニーズを満たしつつ、現在の世代のニーズも満足させるような開発 《出典》講演資料抜粋
その意味は、今の自分達のことだけを考えるのではなく、将来を考えて目標を設定し、課題を解決をしていくことにあると言うのです。
国連がつくったSDGs「持続可能な開発目標」の和訳
17項目の目標に対しわかりやすく各々「ロゴ」で示されています。
〔17の目標:項目のみ、各々のターゲットは省略〕
①貧困をなくそう ②飢餓をゼロに ③すべての人に健康と福祉を ④質の高い教育をみんなに ⑤ジェンダー平等を実現しよう ⑥安全な水とトイレを世界中に ⑦エネルギーをみんなにそしてクリーンに ⑧働きがいも経済成長も ⑨産業と技術革新の基盤を作ろう ⑩人や国の不平等をなくそう ⑪住み続けられるまちづくりを ⑫つくる責任使う責任 ⑬気候変動に具体的な対策を ⑭海の豊かさを守ろう ⑮陸の豊かさも守ろう ⑯平和と公正をすべての人に ⑰パートナーシップで目標を達成しよう
日本はこれらの目標が単なる修正ではなく、変革しなくてはならない目標として、この17の目標が互いに関連していることを強調しています。
毎年、加盟国は進展状況を国連の場で自主的に報告することになっており、日本も国連総会の前に開催される「国連ハイレベル政治フォーラム」において報告をしています。
日本のSDGsの達成度は162ケ国の内15位だそうです。
世界の国々のSDGsの達成度については(2019のレポート結果では)、思わしくないのは目標13の気候変動、14の海洋生態系、15の陸上生態系の3つ。海洋生態系では162ケ国で最高評価を獲得できた国はひとつもなかったとのことです。
海に流れ出ているプラスチックごみ問題は、海洋系生態を破壊するとして解決策が急がれます。
壮大かつ達成困難な目標に対し、今、私たちは何ならできるのでしょうか?
食の専門家として食とSDGsを考えてみた
「食物はすべてのSDGsに結びついている」と環境学者ヨハン・ロックストームさんや環境経済学者のバヴァン・スクデフさんがその見解を3年前に発表し、考え方を世界には発信しています。
食物はすべてのSDGsに結びついている。そして、直接的又は間接的に持続可能で健康的な食物に関連している、と言うのです。
例えば、SDG1の貧困をなくそうと、SDG2の飢餓をゼロにの目標には、SDG5ジェンダー平等、SDG8の働きがいも経済成長も、SDG10の人や国の不平等をなくそう等がつながることで解決につながっていくと言われています。
ここで、食物と栄養そして環境の持続可能性について「オーストラリア食事ガイドラインの和約から」重要なメッセージが示され、我々の日々の行動に参考になるので示します。
1過剰消費は持続不可能
①過剰消費を避けなさい
②健康と持続可能性のために食物を選択しなさい
③食事を計画して買い物をしなさい
④水とエネルギーを節約しなさい
2食物の廃棄と食品安全
①適切に食物を貯蔵しなさい
②食品廃棄物を適切に処分しなさい
③食品を安全に保ちなさい
出典:講演資料 オーストラリア食事ガイドライン2013年2月
以上の内容は、かつて昭和の時代に学んできた内容と一致すると思うのは、私だけでしょうか。
食についての一生を考えるとわかりやすい
1食材の生産→2食材の輸送・流通→3食品の表示→4調理方法→5食品の廃棄又は有効活用等々、生産者、流通企業、消費する人等異なった分野で活動する人々が、目標を達成するために努力し、最終的には一つになって目標を達成することが必要です。
例えば身近な野菜で言うと
季節による野菜には栄養成分の違いがあります。夏野菜を冬に栽培すると栽培のためのエネルギーが余分にかかります。そもそも夏野菜は夏に美味しく栄養があります。エネルギーと経費をかけないためにも「地産地消」が大切ですが、都会はなかなか難しい。せめて、旬には旬のものを食べる「旬産旬消」という使い方も大切なことと思います。
規格外食品の引き取りに関してフードバンク事業が日本では2000年頃から始まっています。また、食品の廃棄について生ごみ資源化に参加して「野菜クーポン券」を発行する地域もあるなど、身近なところから積極的に活動が行われています。
講演のまとめから
私たちの食生活のあり方が、国内のみならず地球規模の自然環境や社会・経済環境に影響を与え、そしてそれは自分自身の負担するコストにも反映され、新しい法律の制定や新しいNPOの活動等の変化を及ぼしていることがわかる。
つまり、自分自身の食生活を見直すことによって社会の仕組みを変えていくこともできる。
食の専門家として、地球の自然と生態系によって「食」が支えられていることを再認識し、食のシステムのすべてにおける環境影響とSDGsを意識して行動する必要がある
出典:女子栄養大学教授 井元りえ
SDGsは、地球規模さらには宇宙規模の壮大な目標です。しかし、私たち一人ひとりが日常生活でできることはたくさんあります。
例えば、近年報道されているようなプラスチックのごみ処理問題では、レジ袋やプラスチックストロー、ペットボトルの削減により海に流出するマイクロプラスチックの減少につなげることができます。
また、買い物の際にエコバックを使用したり、マイボトルを持参したり、食品を無駄なく使いきること、食品を購入しすぎないこと、調理上の燃料の使い方等の身近な努力を積み重ねることで、環境汚染の改善のひとつになるのです。
そしてこれらが、未来の人々にも自分にも跳ね返えってくるのだと考えると、すぐにでも行動しなくてはと思います。
できることはいっぱいあります。