習慣の科学~習慣の根本概念から徹底解説~後編
さて、前回の続きです。前回は、習慣の基本的な原理の部分について解説してきました。もし「全然覚えていない!」と感じたら、前回の記事で復習しておくといいでしょう。
簡単に説明しておくと、習慣化には事前の計画と、その計画を達成することの2つのステップが必要であるということ。
行動を繰り返し行い、事前に立てたその目標が達成されるかどうかが習慣化のベースになる考え方でした。
しかしながら、これをベースに新しい習慣を形成しようとしてもうまくいかない方がほとんどだと思います。自分が立てた計画通りに毎日、着実に達成することができれば、習慣は形成されますが、その立てた目標通りに行動することが最も難しいことだからです。
めんどくささが勝ってしまいサボってしまったり、誘惑に負けてしまったり、逆に調子が良すぎて、事前に計画していた予定とは違った行動をとってしまったり。
様々な要因が重なり、計画通りに行動することは極めて困難です。そこで後編では、その計画通りに行動し、習慣を形成していくための精度を高めていく方法、そしてやってはいけないと思っているのに、ついやってしまう悪い習慣を変えていく方法をお伝えしていきます。
1つめにご紹介するのは、2019年、Oxford research encyclopediaで掲載された論文(1)になります。この論文は習慣を形成するためにはどんな方法を用いればよいのかについてまとめられたものになります。
このレビューによると、15種類の実験で合計32種類の行動変容のテクニックが特定されました。このうち効果が高く使いやすいものを抜粋して7つご紹介します。
①Use prompt and cues
これは手掛かりになるものと、行動を促すものを使うという手法です。いわゆるIf then planning の手法にかなり近いものだと考えれます。やはり習慣化の帝王と言われるだけのことはありますね。If then planningは以前も扱いましたね。「もし~したら~する」に当てはめるものです。If then planningについてはこちらの本でも詳しく書かれているので参考にしてはいかがでしょうか。
②action planning
これは一言でいえば行動計画です。「事前に行動を決めておくこと」というのはここでも出てきましたね。
③Provide instruction on how to perform the beheavier
直訳すると、「行動を実行する方法について指示を与える」です。おそらく実験での手法のためこのような記述がされているのかもしれませんが、これ以外の解釈として、「こんな手法があるよ」という習慣形成についての知識や認知的側面のことを言及していることも考えられます。つまりここでは、習慣化についての知識を得ること。と言い換えることができると思います。
前回もお話しましたが、習慣は技術です。知った上で実行するかで形成されるかどうかが決まります。感覚的にともとできるようになるものではないということです。
④set behavioral goals
行動目標の設定です。
・なぜその行動をするのか
・何を達成したいのか
・達成したらどうなるのか
など、行動の目標を立てることです。②でも計画することが述べられていましたが、ここではその目標です。ダイエットであれば「お菓子を食べずに食制限を行い年内に5kg痩せて健康的な食生活に変える」、でも良いですし、筋トレであれば「朝起きてご飯を食べる前に、30秒3セットずつ体幹トレーニングをする」といったものです。
この論文ではこれしか言及していませんが、厳密にいえばもっと小さな目標の方が習慣形成しやすいでしょう。例えば、毎日論文を読むことを習慣にしたいのであれば、一日最低でも5本は論文を読み、1本はマインドマップにまとめる。のような、自分のできる最低限の目標と行動を決めることです。
※夏までに痩せる!のような抽象的な目標では達成基準が明確でないため、行動変容が起きにくく、習慣も形成できませんのでご注意ください。
⑤self-monitoring Behabior
「行動をセルフモニタリングする」です。普段から瞑想などをやっている人は得意かもしれませんが、自分の行動をモニタリングすることは習慣化を行いやすくする上で必要なポイントです。なぜなら、習慣というのは無意識的・衝動的なプロセスによって制御されているので、自分がどんな行動をとっているのかがただでさえ認識するのが難しい領域の問題なのです。
前回の授業で自分の行動をモニタリングしてもらいましたが、実際にノートに書いてみないと、普段どんな行動をしているのか、わからないものです。まずはモニタリングから始めてみましょう。
とはいえ、どんな風にモニタリングすればわからない人もいると思いますのでここではシンプルに2つお伝えしておきます。まずは朝起きてから、夜寝るまでの行動を詳細に記述してください。ここでは、いつスマホを触る傾向があるか、どんなものを朝ごはんに食べているかなど、具体的に書くことをおすすめします。
モニタリングが終わったら、自分の理想の一日を計画して下さい。しかしながら「無理のない範囲」です。例えば、いつも9時に起きている人が、いきなり6時に起きることはできません。また、無理な目標を立てると挫折し、そのことで自己効力感が低下。「自分は何をやっても変えられないんだ」という認知ができてしまうと習慣が変えにくくなってしまうので、無理のない範囲で少しずつでよいのです。まずはこのモニタリングと計画を立てて見てください。
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